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たそがれ怪奇譚第2部 黄昏篇   作者: 狐鹿コーラ
最終章 中編 月物語
43/53

善side

神隠し……



それは人がある日忽然と消え失せ……消えた人間は二度と戻ってくることはないと言われる現象……




あれが神隠しであったのは私にはわからない。




私が十の頃、かわたれ山へ幼なじみの娘『芙蓉ふよう』と夕焼けの名残りの“赤さ”が残る時間帯である『黄昏時』を見に行った時のこと……




当時の私は病弱で一度病にかかると危篤状態にまで悪化し……いつ死んでもおかしくなく




村の医師には二十までは生きられないだろうと宣告され……




村の人達からは哀れみの目で見られ……仕舞いには『関われば呪われ早死にする』などと噂され私を人として見るものは誰もいなかった……




しかし彼女だけは違った。




死を待つだけの私に手を差しのべ……普通の人間として接し……生まれて初めて友という関係を築いてくれたのだ……



私にとって彼女は命の恩人……彼女と出会わず、病に蝕まれ……孤独感に押し潰され……十を向かえることも叶わず死んでいたかもしれない……



「ほら早くー!」



「ハァ……ハァ……ち、ちょっと休もうよ。」



ここからでも十分に空が赤いのがわかるぐらいの黄昏時だが……彼女はどうしても『かわたれ山』の頂上から見る黄昏時を私に見せたいようで



「しょーがないな~……………ほら、掴まり。」



彼女から10歩程離れた所で息を切らした私の元へ駆け寄り手を伸ばす……彼女の姿が眩しく見えた………



手をとり………体力の限界で歩くスピードが亀並みの私に合わせるように『かわたれ山』を登り………




日が徐々に落ち………赤い空も段々と暗くなっていき頂上に着いても黄昏時が終わっているかもしれない………




私の頭から『諦め』の文字が浮かぶが……口からその言葉がでることはない……




何故なら………それ以上に彼女の後ろ姿から伝わる太陽によりも温かい光を感じたから………



私は彼女と共に諦めずに歩を進めることが出来たかもしれない……





そして……




夕闇の空に遠くで力強い光りを放ちながら西の方へしずんでいく夕陽を見ながら黄昏時を彼女と眺めることが出来た……



彼女が見せたかった『かわたれ山』から見る黄昏時は言葉を失うほど美しいもので……




このままずっと………この時が続けばなと思っていた………




「ありがとう……芙蓉。こんなにも美しい光景を見せてくれて……………」









「芙蓉?」






彼女の応答がなく後ろを向くと……




そこには彼女の姿がなく……




辺り一面ススキばやしが広がり……




空が夜のように真っ黒だけど昼間のように周りが明るく………不気味な程に大きく茜色の満月が目に映っていた………




多分………普通なら慌てふためくか泣きわめいて何にも出来ないか……その場でうずくまるか………




精神的に耐えられないと思う………




でも………




私は違っていた………




現実から解離したこの別世界が現実よりも居心地がよく……




かわたれ山を体力を切らして登った筈が……体から力が溢れ……疲れなんて元から無かったように充実感に満ちていた。




私はススキばやしを無邪気に駆け回りこれまでのことを忘れるように寝転び、ススキを振り回し、時間も忘れるぐらい遊んでいた……





すると突然……





『……………』





誰かのか細い声が耳に入る




私は声のする方へと歩いていき




『おいで……………』




と声がはっきり聞こえる所まで来ると




『こっち………』



『おいで………』



『こっち………』



『おいで………』



『こっち………』



『おいで………』




四方八方から『こっち』『おいで』と言葉が飛び交い……




その場から離れようとしても声が一緒についてくる………




私は誰かわからない数多の声に対し




「だれなの?姿を見せてよ!」




数多の声にそう叫ぶと一斉に声がパタリと止み………




そして……





『後ろの少年だーれ?』




私の真後ろからそんな声が聴こえると………無意識に後ろを振り向くと………




私と同い年ぐらいの黒い着物をきた子供がそこにいた………



だけど………その子は見た目は人間ではあるが………人間には無い狐のような形をした黒い耳に……お尻の辺りに狐のような尻尾があった……




「きみは?」




その子はにっこり微笑み僕に手を伸ばした……



芙蓉と同じように………



私はゆっくりと手を伸ばし……



やがて手と手が触れた瞬間





目の前が真っ暗になり………





次に目を開けた先に待っていたのは………











芙蓉と見た時より赤い……茜色の夕陽に染まった黄昏時と



何故か唖然と立ち尽くし………やがて涙を流しながら私を離すまいと強く抱きしめる芙蓉がそこにいた……




「ごめん……ごめんね………狼月………」



「芙蓉?なんで泣いているだ………」



「今まで何処に行ってたの……凄く探したんだから!」



「ご、ごめん……気付いたら知らない場所にいて………それで………」



私は私が体験した不思議な場所での出来事を話し………



その話を聞いた芙蓉と村の人や親からは出た事実に耳を疑った



それは………芙蓉と『かわたれ山』へ黄昏時を見に行った日から……




一月が経過していたとのこと……






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