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たそがれ怪奇譚第2部 黄昏篇   作者: 狐鹿コーラ
最終章 中編 月物語
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月影side4



これが………孤独というものなのだろう……




一番弟子を失ってから約1ヶ月が経過し……この時点で平安京の総人口の半数が『疱瘡』によって死に……




もう郊外に死体を置くとこなんどない程に屍の山が築かれ……ついには平安京内に死体を並べるにまで悪化……




私以外の陰陽道も『疱瘡』に犯され次々と門を閉め……




現時点で『腐食の怪異』を有効的に退魔する陰陽道が減り……検非違使や中途半端に力を付けた陰陽道が連日のように『腐食の怪異』を自爆させ『疱瘡』を飛散させていた






私はというと……






検非違使や他の陰陽道から毎日毎日……朝昼晩関係無く応援要請をしに私の陰陽道の門を訪ねるが



それを私は全て拒否し……居留守を使うことも……強引に私を連れだそうという奴もいたが木刀で返り討ちに門前払いした




何故そんなことをしているかというと……




一番弟子を失い……親友の晴月が『疱瘡』に犯され彼女の陰陽道から音沙汰が無くなってから私の心に穴が空いたかのような虚無感と喪失感に苛まれ……




私の中に『救済』という言葉はみる影もなく浮かぶのは『絶望』……




「どれだけあがいても救っても皆いつか死ぬ……私がどうにかしても結局は無意味に終わる……」




そんなことを考えるようになり閉鎖された陰陽道の1室に籠っては覚めない悪夢から早く目覚めようと日々を浪費していた




もう皆………いなくなってしまったのだから………早く私も楽になりたい………




そんな悪夢は1人の来訪者の訪問によって覚めることとなる………





その人物は晴月の陰陽道の弟子を名乗り………名を………





ともえの 神鹿じんか




亡くなった一番弟子と同い年ぐらいの少年で目の色が金色に染まり綺麗な瞳をしていた………見た目とは裏腹に口調がやけに軽くまるで友人とでもはなしている感じであった………




神鹿から伝えられたことは「晴月様はお腹の子共々今は無事」だという知らせだった



その知らせを聞いた時は耳を疑ったが……晴月が存命している証拠として彼女の血から作られた化け狐の式神『遊月ゆうげつ』をその場で召還してみせた……




見た目は普通の狐と変わらない見た目をしているが……内に秘めた妖力は晴月と瓜二つである。




『遊月』は化け狐の類いの怪異で人間の姿には化けれなものの、催眠や幻覚といった強力な妖術が使えるとのこと



彼女の命は晴月と繋がっており晴月が死ねば、彼女も一緒に死ぬという……



だから……『遊月』の存在は宿主である『晴月』が生きている証明となる……



しかし……一度かかれば一週間以内に人間は死に、人に化けた怪異は『侵食の怪異』と化し人を襲い病をばら蒔く……



そんな病に晴月がかかっても尚存命しているのは何故なのかは神鹿が説明した。




どうやら晴月が今の今まで生きていたのは彼女が五行の上位互換である『陰』と『陽』の2つの仙霊力を交わらせ病を1ヶ月以上も抑えていたという……




仙霊力は主に2つに分類され1つが『陰』もう1つが『陽』



『陰』は自然界でいうところのマイナスエネルギーすなわち闇の力



『陽』は陰と対する太陽のように温かく全てを照らす光の力



この2つは陰陽道の中でも会得は難しく5行を全て極めた者だけが開花するが2つのうち1つしか会得することが出来ないことから『仙に近しい力』すなわち『仙霊力』と名称されるぐらい会得が困難とされている……




ましてや『陰』と『陽』2つの仙霊力を同時に会得した者は聞いたことがない……




「晴月様はあなた様と同じ“月の一族”ですから別に珍しいものではないかと」




晴月から私達が月の一族と呼ばれる妖狐であることを神鹿は事前に聞いていたのであろうそのことを私に聞いてきたが



確かに月の一族では仙霊力の『陰』『陽』いずれかを使うものは多くいたが



月の一族の長である“あの方”意外に2つの仙霊力を使えたものなんて存在しない………



ましてや晴月が2つの仙霊力が使えること事態初耳だった……




「それと晴月様からの伝言はもう1つ預かっておりまして」



「もう1つ?」



「なんでも疱瘡の元である“侵食の怪異”の存在とその感染源が判明したと」




“侵食の怪異”……この怪異が全ての元凶であるなら今すぐにでも絶ち切らなければ……



だが……その“侵食の怪異”が住み着いている場所というのが……問題であった




「それが奴が住み着いている場所は平安京の大門……『羅城門らせいもん』なんです……」



羅城門は平安京に入るには必ず通る巨大な門で巨木のような2つの柱で楼閣を支えており



二階の楼閣内は輸入の野菜や穀物、衣類などが備蓄されていると聞く……



それを盗もうものなら即島流しだとか……



神鹿は続けて“侵食の怪異”と“腐食の怪異”についてと感染経路について話してくれた




“侵食の怪異”は一種の冬虫夏草のように妖力すら感じ取れない微弱なカビを羅城門からバラまなき……



まずは人に化けた怪異に“侵食の怪異”が放出するカビを植え付け



疱瘡の症状から1週間で自我は死に“腐食の怪異”として疱瘡を街中にばら撒き



その後、怪異から怪異へ怪異から人へ人から人へ人から怪異へとこれにより『疱瘡』が連鎖的に広がったという……



「………全て了承いたしました………もうしばらく待ってはいただけませんか?」



「構いませんよ、ならば我からも1つあなた様を占ってもかまいませんでしょうか?」



晴月から彼女の一番弟子については聞いていたが……彼女の未来予知を真似て『占い』という術を用いて相手の未来を覗き見ることができると言っていたがまさか彼だとは思ってもいなかった



彼の『占い』は単純なもので東西南北の文字が描かれた敷物を敷き、10色の形と色が異なる石を両手に5個づつ手に持つと



始めに左手から色石を放り、数秒後に右手の色石を投げると石同士がぶつかり合い無作為に散らばった



そして神鹿は考えるそぶりを見せた10後………私にあることを告げた




「黄昏の地にて……ある人物との出会いがあなた様の今後を左右します、そして『神』に注意と……」




私にはなんのことやらさっぱりだったが



彼だけには見えていたのだろう私のこれからを………



でも1つだけわかったことがある………



それは平安京には私の居場所はないということ………



黄昏の地………そこが何処なのかは分からないが……それが私の居るべき場所とするなら今やろうとしていることも……



肩の荷がおりるものだ……




巴 神鹿に私から晴月へ1通の手紙を渡して帰らせた後……




平安京での最後の役目を果たすべく………




丑の刻……月光が夜道を照らし………屍が道脇に転がる………




大門羅城門からはただならぬ邪魔な気配が頭を締め付け………手が震える……




私は意を決し刀に手をかけたまま楼閣まで飛び上がり抜刀術で壁を切り裂いて侵入




最初に私の目に飛び込んで来たものはあまりにも異形な存在であった




そしてその周りには数多くの死体が捨てられミイラと化していた………




楼閣内の置くに直径10mの大きさの赤黒い色の繭の形状で壁中に血管にも糸にも似たものが無数に張り着き………ドクッドクッと脈を打っていた………



あの繭から感じるものは………一言で言うなら『不快』といわざるおえない………



この世に存在するどす黒い『陰』の感情をこれでもかと詰め込んだような感じだ……




「これさえ………これさえ殺せば………」




刀を再び抜いて一歩……一歩と詰め寄る……



その時だ……




「師匠?」



後ろから私を呼ぶ声が耳に入り……その声にたまらず後ろを振り向くと……




「あ、………ああ………」




そこには腐食の怪異と共に自害した一番弟子の『焔 秀喜』が立っていた



「師匠、こんなところで何やっているんですか?」



「秀喜?秀喜なのか……」



「早く帰って師匠が打った蕎麦食べたいてすよ!」



ああ………秀喜……戻れるなら……戻りたいものだ……



だけど……『生きてください、師匠』



彼は自らを犠牲に人を殺す前に命を燃やしたのだ……



私は存在しない彼を振り切り再び刀を構える



そして抜刀術の射程圏に入った途端なんの前触れもなく



「月影」



「………………」



病に倒れたはずの晴月が赤子を抱え目の前に立っていた………



「月影、私の息子とは初対面だったな」



今はどちらも助かるかどうかわからないのに………



「せっかくだから月影も名を考えてはくれぬか?まだ産まれたばかりで名付けてはないのだ。」




こんな未来………見れるものならみたかった………




「出来れば私の名の一部を付けたいのだがな………」



私はあったかもしれない未来の形に一言



「“晴明”って言うのはどうだろうか?晴れた日のように明るい世を作る意味を込めて………」



そして私は刀を振り下ろした……目の前の幻影と共に………



だが……



繭に刀を斬り込んだ瞬間




キィィイイイイ!!!!!!




猿の轟音が私を後ろへ後退させ、繭から赤黒い血管が体を包み………目の前に巨大な猿の顔が浮かび上がっていた……




あの鋭く憎しみに燃えている獣の目から私の中に流れてきたのは……




燃える森と次々と殺されていく猿達に飢餓に苦しみ死んでいく子猿………




その全て人間による業によって全てを奪われた猿が“侵食の怪異”となって復讐のために羅城門に巣を作っていたのだろう………




だから……私が……全てを失った私が終わらせなければならい……




火炎陣かえんじん・肆ノよんのかた・ヤマトタケル」




火の5行で体を絞めていた血管を楼閣ごと炎に包み辺り一面火の海と化す




そして立て続けにまゆから赤い猿の手が伸びる




2秒あれば十分だった




足を真っ直ぐ前に出し体勢を極限にまで低くした前傾姿勢で刀に手をかけ




呼吸を整え……




「業火ノごうかのじん陽炎かげろう



貯めた足しから繰り出す瞬発力は烈火の如く燃え盛り……



繭を切り裂いた業火の炎は繭の中に潜む呪いまでも燃やし尽くすが……



溢れでた胞子は楼閣内を肉の壁と変え逆に呑み込もうとするが



刀をその場に突き立て刀に私の全ての妖力を込め………しらぬまに仙霊力の1つである『陽』へと昇華していた………




炎天えんてん天陽虹てんようこう



全てを呑み込む太陽に近い炎で焼き付くし私の身も刀も何もかも焼失するほどの力をありったけ込めて繰り出し……



ついに楼閣が燃え尽き………



刀は誰も切れない程にボロボロに零れ……



突き立てた刀の先端には“侵食の怪異”と思われる猿のミイラが横たわっていた……




だが……奴は最後に………




『この恨み一生消えぬ』




と言い放ち灰となり消滅した………




その後………私は妖狐の姿で死体が捨てられた平安京郊外の森を全て焼き付くし




たった一晩中で郊外全ての死体を私の命を削って灰へと変え………全ての命を弔い………




私も死ぬ一歩手前で晴月の式である『遊月』が人の子の姿で私を担ぎ………平安京から遠ざけ




朝日が昇る頃には『遊月』から




「晴月様の命により今からあなた様が私の主となりました……命令を」




言いたいことは沢山あるがとりあえず私は疲れきり……一言『遊月』へ命令をくだした



「黄昏の地へ連れて行って」




そう言うと私はその場に倒れ……意識を失った。








これが誰も知らない平安京で起きた始まりの怪異譚………



彼と出会うまでに至った私の追憶の物語………その物語は今も続いている………



もしかしたら彼と出会うべきじゃなかったかもしれないけど……



回りだした歯車はだれにも止めることが出来ない………ならば………また私の手で………





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