死神と死人 弐
あのヒトクイの原始なる存在『蟹江』に対し死神が大見得をきってこの場をまかせ僕たちを先に行かせたが………
はっきり言うが死神では奴に敵わない………
あの黄昏タワー内の異空間に隠していた地下研究施設でドクター達が発見した山のように積まされていた黒い棒………
あれは全部死神の鎌の柄の部分にあたるもの………刃の部分だけが取り除かれ棒の部分は不必要と判断し一室に放棄されていたのだろう……
そしてあの地獄絵図のような死骸の山………あの中に死神達が含まれているとなると『蟹江』は莫大な量の死神の魂を捕食し………死神の天敵なる存在へとなっていることは必然であった
ドクターから渡されたこの銃と弾丸は全てあの死神の鎌の棒を加工し作られたと………
弾丸のほうは別ルートで入手した特殊な血液を用いて加工し………60発が作られ………
そしてもう1つ………ドクターに「『レン』という死神に出会ったら渡して欲しい」と頼まれ………黒い鞘に納められた小太刀を渡された
なんでも罪を犯してまで人々の命を救いドクターに住居の提供してくれた礼ということらしい……
話を戻すが………ヒトクイには完全な肉体再生器官が頭部に備わっている……これを破壊すればヒトクイは死滅することが判明した………
もちろん………『蟹江』にもその自己再生器官が存在するが……なんと2つもある……
1つが心臓………もう1つが背中の肩甲骨辺りにあることが放置された資料で判明した………
僕は狐月達に死神の加勢をしに行くと告げられたが………当然のように否定されるが
「あのヒトクイには弱点があるそれを破壊しない限り魂を抜き取ろうがなにしようが再生する………僕はそれを死神に伝えに行かなければならない。」
狐月は僕の胸ぐらをつかみ殴りかかりそうな勢いで
「だからなんだってんだ!それを言うためだけに戻るなんてことさせられるわけねーだろ!」
「零二はいつもそうだ………危険を省みず自ら飛び込んでいったり、他人の命ばっか気にして自分の命を粗末に扱うのが大嫌いだ!!大嫌いだ!!」
「もっと自分を大事にしてよ……零二が死んだら……残された者の気持ちも考えてよ………頭良いんだからさ。」
と狐月に抱きつかれ……一言
「僕は狐月が大好きだ……何があっても君を残して死ぬようなことはしないと約束しよう………だから………これが最後のわがままだと思って行かせてはくれないか?」
俺はそう狐月に告げゆっくりと引き剥がし………月影に狐月を委ね………
死神の元へ駆け出し
今に至る………
僕は死神に蟹江の弱点を簡潔に伝えると死神は刃の無い鎌をクルクルと回転させ不適な笑みを浮かべていた
「よーは背中にあるその器官を破壊すれば良いってことだな零二!」
「理解が早くて助かる…………それと死神、お前に聞きたいことが………」
「来るぞ!!」
死神が蒼白い炎を惑い臨戦態勢へ入る………
その目の前には……頭部受けた弾痕が塞がらず綺麗に風穴が空き左目が弾丸で潰れたままになっていた。
それなのに両腕に限っては綺麗に再生されている………恐らく肩甲骨の再生器官の影響であるが……
「どうしてくれんだよ!!なんだこの弾丸!?傷が、傷が塞がらないじゃないか!!!!」
僕も奴の逆鱗に触れたからにはただでは済まないだろう……
その証拠に蟹江の般若の如く怒りに満ちた表情で奴の体から黒い炎が湧き出ていた………
「まずは………貴様からだ!!!!」
黒い炎を周囲に放ちながら疾走し………奴は僕しか眼中になく
両手に持つ双鎌を振り上げ接近してくる………
「あらよっ!!」
ガン!!ガン!!
刃の無い鎌で奴の攻撃を受け止める死神
その死神も全身に蒼白い炎を纏わせ周囲を焼き尽くす勢いで燃え上がっていた。
「食材風情が!!まずは貴様からウェルダンだ!!!!」
「上等だぜ!!サイコ野郎!!!!」
黒い炎と蒼い炎が交じり合い莫大な化学反応のように大爆発が発生………
周囲を巻き込まんと爆風、衝撃、黒煙………そして炎が拡散する。
それをもろともせずお互いに一歩も引かないつばぜり合いを繰り広げていた。
そこには『技』というものは存在せず、単に単純で純粋な『力』だけがぶつかる戦いとなっていた
「ハァアアアアア!!!!」
「ウォオオオオオ!!!!」
蟹江の双鎌から繰り出される一撃一撃全てに黒い炎を纏わせた斬撃が繰り出され、攻撃を受け止めれば鎌から繰り出される黒い炎の余波で相手はその炎をくらい大抵は焼身してしまうが
死神は正面から堂々と蟹江の刃を受けとめ黒い炎の余波が死神を襲おうとしても死神は痩せ我慢にも似た笑いを蟹江にむけ
刃の無い鎌で攻撃を強引に攻撃で防ぎ自分への隙の一切を無くしていた。
そして………
ドゴンッ!!!!
「ガハッ!!」
蟹江の斜め左右の返し連撃に生じる左手に持つ鎌の繰り出されるコンマ0.1秒の隙を死神は逃さなかった
蟹江の僅かに生まれた攻撃の隙を突き、刃の無い鎌で蟹江の腹部に風穴を開け
突き刺した刃の無い鎌を更に押し込み蒼い炎で蟹江を焼き尽くした。
「燃えろ燃えろ!!骨の髄まで!!」
「アァアアアア!!!!アぁアァアアアア!!!!」
蒼い炎に火ダルマになりながら悶え苦しむ蟹江………
彼は既に2つあるうちの1つである頭にある再生器官を破壊されている……それにより元から備わっている再生速度が半減され……死神の蒼い炎による焼却の方が僅かに勝っていた。
だが……
「(ニヤッ)……」
「!!?」
ボッ!!!!
蟹江の腹部に突き刺した死神の刃の無い鎌を握り返す蟹江の黒い炎によりそれは燃え上がり……
蟹江の双鎌の攻撃を耐える死神の鎌は蒼い炎を呑み込むようにして黒い炎に包まれ焼失してしまった
更に燃え盛る蟹江の双鎌が死神の両肩を突き刺し……そこから黒い炎を流し込まれ両腕が黒い炎に包まれ焼き尽くされようとしていた……
しかし死神は歯を食い縛り……両腕が黒い炎によって呑み込まれようとも食らい付くように蟹江の懐に飛び込み……
この行動に移した死神に対して蟹江は死神を振りほどこうと踠いていた……
「は………はな………せ!!お前も黒ずみになるぞ!!!!」
「炭上等!!お前に一泡蒸かせられんなら、喜んで焼かれてやるぜ!!!!」
「この下手物ガァアアアア!!!!」
蟹江に抱き付いたまま上昇し地上から約100mまで飛び上がり
そのまま二人とも頭から急降下し更に回転を加え自滅覚悟の錐揉み投げを決めにかかる………
そして二人の蒼い炎と黒い炎が再び混ざり合い………
最初の激突時とは比べ物にならない超火力の火球となり一瞬だが……
第二の太陽が誕生日した瞬間でもあった。
やがて死神は地面への激突間際に両肩に刺さった双鎌の一本を蟹江から奪い
死神は自身の体を急速に逆回転させることで自身に掛かる回転の勢いを完全に殺しその場を離脱して地面へ着地……
蟹江はそのまま地面へと落下し………蒼い炎と黒い炎の超火力の反発で爆散した。
「ま………だ…………だ………!!」
爆発死散しようとも蟹江のもう1つの再生器官により肉体の原型をほぼ留めていないが………ゾンビのような姿になってまで起き上がり
残されたもう一本の鎌を握り死神の元へ向かおうとするが………
「お前はもうくたばれ………このゾンビ野郎………」
死神が蟹江にそう呟いた瞬間
バンッ!!!! バンッ!!!!
バンッ!!!!
3発の発泡音が轟………
蟹江の背後に立つ僕の銃弾は蟹江の肩甲骨にあたる背中に3発命中し………
その場に崩れる蟹江………
最初に僕が狙われるのを見越した上で死神には逆にヘイトを集中させ
僕に向けるヘイトを完全に無くした上での策だったが………
恐ろしいぐらい上手くいったと思う………
「死神、後は好きにしろ。」
「言われなくても……バースデーケーキの蝋燭の火を吹き消すぐらい一瞬で終わらしてやるぜ。」
やがて死神は蟹江が持っていた鎌を握り締め
その場で膝を着き戦意を喪失したみたいにぐったりとうつ向いたままピクリとも動かなかった………
そして………蟹江の元へ死神が近づき………
蟹江が使っていた鎌を振り上げ……その鎌で魂を刈り取ろうとした一瞬……
「……(ニヤッ)……」
静かに微笑む蟹江……
蟹江はヌルッと満面の笑みを浮かべ右手に炎を纒……その手を死神に伸ばす
もうトドメを指すことしか頭に無かった死神は完全に油断し……回避するまもなかった……
「死神!!!!」
バッ!!!!
僕は死神を押し退け飛び込み……
蟹江が纏う黒い炎に焼かれ……
全身が焼き尽くされ………
蟹江が持っていたもう一本の鎌で魂を抜き取られ………
その魂を菓子のように頬張った………
後に残されたのは黒炭の朽ち果てた肉体と………僅かに残された数秒の光だけだった………
「零二……そんな……零二!!!なんで死神の俺なんか庇うんだよ!!」
「い、今助けてやるからな!!お前だけは絶対に死なせない!死んじゃ駄目だ零二!!!」
ここまで来ると痛みすら感じない………
もちろん恐怖も………
あるのは………約束を破ってしまった罪悪感と………大切な死神の友人を守れたことの達成感しか無かった………
「………………………レ…………ン………」
「!?」
無意識にその名前を死神に向かって口にした……
ドクターが言っていた『罪を犯してまで人々の命を救った死神……』
『レン』という名前らしいが………
どう考えても………今この場にいる死神がドクターが言う『レン』であると確信した。
彼が『レン』である証拠は一切ないけど………言葉では言い表せないが、彼がそうであってほしかったかもしれない………
僕は崩れ行く肉体を僅かに残った力を振り絞り………
『レン』にドクターから渡された小太刀を手渡す
「………………………狐……月…………」
小太刀を『レン』に渡した瞬間、腕が砂のように崩れていき………
その光景をただ眺めることしか彼は出来ず唖然とし……
「あ、………あ、……ああ………………」
後に残されたのはただの灰だけだった………
「アァアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
レンは泣き崩れ……先ほどまで零二だった肉体の灰をかき集め涙するが……
彼は戻って来なかった……
俺は……零二を死なせてしまった……
俺が……俺が不甲斐ないばかりに……零二は………
「アアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」
言葉にならない悔しさと後悔と罪悪感に押し潰され……
零二から託された小太刀を握る手が厚くなり涙が零れ落ちる………
「絶品!!!人間でこんなに美味しい魂は初めてだよ!!」
「ハハハ、ハハハハハハハハハ!!!アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
奴は狂ったように笑い声を高らかに上げ……
零二の魂を食った奴の肉体が徐々に肥大化していき
駄々ッ広い背中からはイボのように無数の顔が生えその顔は皆恐怖に歪みきっていた………
それに加え奴が持つ鎌も柄が一段と長く無数の目玉で埋め尽くされ……刃は巨大化し血管が張り巡らされ……不気味に脈打っていた……
『次は貴様の魂を食ってやる。』
もういつまでも泣いてはられない……既に進んでしまった時計の針は戻りはしない……
俺がここで立ち止まってには零二に顔向け出来やしない……
零二が命をかけてまで託したこの刃……
有り難く使わせて貰うぜ……零二
「その前に俺が貴様の魂を刈り取る。この刃でな……」
零二から託された小太刀の柄を握った瞬間……
体から蒼い炎が燃え上がり……
同時に何らかの映像が頭の中から流れてくる。
その映像にはどれも蟹江が写し出され………無惨にも殺され、喰われていく死神達の姿があった……
そして残された死神の鎌は刃だけを何者かに取り除かれ………柄だけが放棄されていた……
この小太刀にはそんな無念で残酷に散った死神達の思いが込められていた………
やがて俺が奪い取った奴の鎌が小太刀と合わさり………
蒼い炎に包まれ………新たな太刀として誕生したのだった
鞘から抜いた太刀の刃の刀身は漆黒で刃先は切先にかけて蒼い炎のような荒い地蔵模様が施され
俺から燃え上がる蒼い炎は瞬く間に太刀に伝わり蒼い光を放っていた……
『全部呑み込んでやる!』
奴が大鎌を構え………黒い炎を上げながらこちらへ突進してくる………
「………………」
スゥー………………
奴の動きがスローモーションのように遅く見え………
太刀を流水の如く流れるようにして
奴の両腕を………
ボトッ!!!
切り落とした
『はっ?え………わ、私の腕が………いつの間に!?』
奴からして見れば切られたこと事態に気づいて居なかった様子だ……
更に……切り落とした両腕は鎌と共に蒼い炎を上げて発火し跡形もなく消滅した。
『私が負ける?そんなの認めない!食材風情に私が劣るなどあって良いわけがない!!!』
奴は自分の敗北を認めず………全身を黒い炎で完全に包み………
こちらへ飛びかかってきた
「もう………てめぇは……」
『グゥオオオ!!!!!!』
ズバッ!!!
「俺には勝てない……」
奴に向かって捨て台詞を吐き……
無造作の一撃を奴に浴びせ
切り口から蒼い炎が燃え上がり一瞬のうちに黒い炎を呑み込み……蒼い火柱が立った
俺は静かに刀を鞘に納め
剣技の構えをとる……以前に月影の元で手合わせした際に教えて貰い……俺なりに磨いた抜刀術………
刀の位置は地面に着くぐらい低く
鞘から抜くタイミングは相手の3歩の間合い……
狙うは奴の魂……
奴が起き上がった瞬間
目に求まらぬ電光石火の居合いの抜刀
「閻魔蒼炎」
刹那………下から上へ切り裂いた居合いは奴の肉体を消し炭にし魂をも半分へ真っ二つにした
「終わった………………」
刀を鞘へ戻した途端に全身の力が一気に抜けその場へ倒れこんでしまい………天に向け……
「零二………ありがとう。」
と呟いたのだった
ここで俺の意識は完全に途切れ………この後に起こる結末をしる者は1人しかいないことをしるよしもなかった……
赤く禍々しい月光を放つなか………
意識を失った「レン」へ忍び寄るものが一匹………
『ぐ………あ……………肉………死神の………………肉………』
魂を両断されてもなお不完全ながらも復活しヒトクイと大差ない姿へと落ちぶれた蟹江………
死神を捕食し再び力を得ようと手を伸ばすが………
「………………」
1人の青年のよりヒトクイは言葉を発する間もなく魂ごとこの世から存在事態を消滅され……跡形もなくった
その青年の目は赤く染まり………
朧月を眺め………
「今日で全てに決着を……」
青年は頂上を目指し前進するであった。




