敵を欺くには……
謹慎明けの数日が経過し……始めに任された仕事は……
「零二さん、ここのゴミ拾いお願いしますね。」
「それが終わったらこっちのゴミ運びよろしくー。」
地域清掃のボランティア……
毎年この時期になると町内会主催で行われるイベントだ
参加は誰でも良いが学生にとっては地域貢献し内申点がもらえることから中、高校生の参加が比較的に多い
僕は町内会員の変わりとして参加している……
「………」
「………」
先ほど約50m先の駐車場から乗用車のシルバーのクラウンに乗る二人組の男がこちらを見ている……
無実とはいえ警察側としたらまだ捜査対象なのだろう……
「零二さーんこっちもおねがいしまーす!」
「わかりました、今行きます」
職員の1人を手伝いに行くほんの30秒は捜査員の視線から外れる死角に入れる……
それだけの時間があれば十分だ。
同時刻 覆面パトカー内……
運転席の捜査員が餡パンと牛乳を頬張り
助席の捜査員が双眼鏡を覗き見張りをしていた。
「何で無罪になった奴見張らなきゃならないんスかね?」
見張りをしている捜査員が何気なくそう聞くと
「さーな………あの人の勘は恐ろしいぐらい当たるからな、俺達はそれに付き合っているだけだ。」
「神谷 狐影…二十歳で高校卒業後公務員に就職……家族構成も異常無し……本当にこいつが旧都市の情報を流したんスか?」
「らしいな…確証はないが………偽名である線も考えられたが、データベースの偽装工作もなく…職場でも名前を確認できた為に…この線は無くなった。」
「じゃーなんでまだ調べるスか!いくら課長でも今回はただの勘違いじゃ…」
「お前…………ここに配属されてまだ日が浅いようだが、このたそがれ町で発生している事件の件数………分かるか?」
「……………猟奇的、不可能的な犯罪が多いとは聞いていますが。」
「確かな数値ではないが、およそ東京都の約20倍らしい。」
双眼鏡を覗く捜査員が思わず目線を反らし驚いた様子を見せる
「は!?いやいやいくらなんでも盛り過ぎじゃないッスか!!」
「俺だって最初は冗談であって欲しかったさ……相手が人間であればの話しだがな。」
「人間であればって………人間以外誰が事件なんか起こすんスか?まさか妖怪とか幽霊とかスか?」
「そのまさかだ………5年前に流行った『ヒトクイ』とよばれる都市伝説知ってるか?」
「あれッスよね……『人肉を求めてさ迷う殺人の亡霊』……確かに中高生の間ではめちゃくちゃ流行ってましたけど」
「あれは都市伝説なんかじゃない……実在するんだよ、『ヒトクイ』がな……」
「たそがれで起きた大量猟奇殺人事件のこと言ってるッスか?あれはある日を境にパッタリ起きなくなったんスよね?んでもってそのイカれ殺人鬼は捕まってないと………」
運動席の男が餡パンを食べ終わり牛乳を飲み干すと
彼は助席の相方にこの世の闇を体感した奇妙な体験談を語るのだった……
ー6年前……12件目の猟奇殺人事件の現場の近辺を捜査していた時のこと……
ー時刻は19時……繁華街で聴き込み調査中に誰の耳にも聞こえるぐらいの男性の断末魔がこだまし……急いで向かうが…
ー断末魔が聞こえた場所へ駆けつけると男性は血塗れで地面を這いずり……虫の息で細切れになった腕を伸ばした途端……男は背後にいた何かに引っ張られ路地裏の闇へ消えていった……
ーとっさに小銃を構え……路地裏に入り……男を引きずった後に残された大量の血で出来た血痕をたよりに進んでいき
ー奥に進むにつれ何かを無作為に喰う生々しい音が近くなり……
ーもっとも音が近くで聞こえる所まで来た所で小銃のセーフティを解除し…音の正体を見ることとなる……
「何を見たんスか?」
「見た目は限りなく人間に近いが……爪が異常に鋭く、目が一つしかない化け物が……男の腸をえぐり出して喰ってたんだよ。」
「そ、それでどうなったんスか……」
「俺は震える手で威嚇射撃した後にそいつ目掛けて4発発泡したよ………だが………そいつは何事もなく喰うのを止めると今度は俺に狙いを変え襲いかかってきた………」
双眼鏡を持つ捜査員が青ざめた表情で真剣な眼差しで聞いていると
運転席の捜査員が本来の目的から脱線していたことに気づくと……ヒトクイに遭遇しどうなったことを話すことなく
「続きが気になるなら双眼鏡から目を離すなよ?」
「えー!!?凄い気になる所で終わらないで下さいよ!」
そうして助席の捜査員は再び双眼鏡を覗き始め捜査対象である『神谷 狐影』の姿を確認し
捜査に戻った。
「予定通りで助かったよ首無しさん。」
同時刻……僕は予定通り指定した場所へくるように約束していた首無しの怪異が運転する大型バイクのサイドカーに乗っていた
今頃捜査員が見ている僕は僕の影武者だ
首無しの怪異の力で廃材にあったマネキンに数滴の僕の血を混ぜ、怪異が出す黒い影のようなものでマネキンを包み
僕の姿と行動パターンを瓜二つにし完璧な偽物を立てることが出来た
首無しの怪異が素早く何かを書くとスケッチブックを僕に渡した
そこには
『首無しさんは遠慮願いたい、首はないが俺には『ライダー』っていう呼び名がある』
「悪いことしたね、ライダー……」
首無しさん改め……ライダーはスピードを上げ目的地へ急いで向かった
場所は旧都市………ドクター達が待つ『幽幻荘』へだ。




