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たそがれ怪奇譚第2部 黄昏篇   作者: 狐鹿コーラ
たそがれ編 弐 崩壊都市
16/53

迷える子羊



Pm12:00



「時間だ……」



黒の営業マンのような背広のスーツと銀のアタッシュケースを片手に淳也が勤める出版社『SATORI』に到着



自動ドアから入って右の受付口から要件を言い本人確認の為名刺を受付の女性に見せた



「午後12時にこちらの代表と会談の予定を入れていたフリージャーナリストの『神谷かみたに 狐影こよう』ですが。」



「少々お待ちを………」



別に偽名なんて使わなくても良いが……



今後の旧都市の調査で裏組織や県警に身分がバレる恐れがある為の予防策として使っている。



「お待たせしました。ただいま案内の者を向かわせていますのでもうしばらくお待ちくださいませ。」



そう言ってからまもなくして慌てた様子で随分見慣れた案内人がやってきた



さっきまで昼食をとっていたのか頬にはご飯粒がついていた



「わり~わり~待たせちまったな!」



「かまわない案内を頼む。」



僕がそう言い返すと淳也の後に続き代表の元へ向かった。





ざわざわざわ……


ざわざわざわ……


ざわざわざわ……




何か……女性の社員達に悪い意味ではないと思うが……凄く見られている……



すれ違いざまでもまじまじと僕を見ながら通って行くし……



どこか変なのだろうか?



「昔も今も変わらずモテるなお前は~」



「……僕は狐月一筋だ……淳也こそ理佳とはどうなんだ?………携帯の番号入手した所から進展はあったか?」



「残念ながらなーにも……だが俺は諦めてないぜお兄様!………まぁ、分かっちゃいるけどよ。」



後ろからだが明らかに凹んでいるのが分かると淳也は次のことを話した。



「理佳ちゃん……今専門学生だろ?なら俺より良い奴は星の数ほどいるだろうよ…………こんな厄介事しか運ばないトラブルメーカーの俺なんかさ。」



確かに……淳也は学生時代なにかと下らないことを提案してはトラブルを起こし皆に迷惑を掛けてきた。



あの時だって淳也がかわたれ山の調査に行こうと提案しなければ……僕は人間のままでいられたかもしれない………



だけど



「淳也………ちょっと。」



僕は淳也の肩をポンポンと軽く叩くと



「どうした?」



振り向くと僕の仕掛けた人差し指が淳也の頬を突き、見事にトラップに引っ掛かった。



「うわっ!ってなにすんだよ零二!やべ、狐影!!」



「過去にとらわれるなんて淳也らしくないぞ。」



「でも………俺は」



「あれは淳也のせいじゃない……誰にも予想できなかったさ。それに淳也があの時一番動いてくれたおかげで今の理佳はあるんだ………僕は今でも感謝しているし」



「この前、狐月と協力して怪異の調査をしてくれたんだろ?「あんなこと言ってすまなかった」って言ってたぞ。」



「それに理佳も『彼氏にするなら誰かさんみたいな責任感のあるトラブルメーカーが良い』って言ってたぞ。」



「お………」



「お?」



次の瞬間



「お兄様~!!」



と歓喜の声を上げて抱き付いてきた



「ちょっ?!淳也!何すんだよ!?放せって!」



「わりー!本当に情けねーわ俺!だよな、だよな!」



ちょっと嬉しいのは分かったが………



社内でこんな………



その後なんやかんやで気分と落ち着きを全盛期まで取り戻した淳也に案内され……ようやく代表が待つ応接室にたどり着いた。



「本当に色々ありがとうな狐影!」



「あぁ、淳也も頑張れよ。」



と言い無邪気に手を振る淳也はその場を去り……



代表との会談に赴いた。



前日淳也から元旧都市に住んでいたとされる代表のことについて聞いたが



とにかく嘘は絶対通用しない事と全てを見透かされるとのこと………それ故に部下からの信頼も暑く、テレビ局からしょっちゅうオファーがあって居ないことの方が多い為




こうしてアポをとって会談出来ることは奇跡らしい。




やがて、僕は丁寧に応接室の扉をノックし




「どうぞー。」




中から一人の女性の声が聞こえ、高校時代の面接練習のように慎重にドアを開け中へ入り



代表へ一礼すると互いに名刺を交換した




「今日はお忙しい中お時間を作ってくださりありがとうございます。私はフリージャーナリストの「神谷 狐影」と申します。」




「『神谷かみたに 狐影こよう』………株式会社SATORI代表取締役『幽幻ゆうげん さとり』です。今日はよろしくお願いいたします。」




互いに名刺を交換した次の瞬間………



悟さんは僕に視線を合わせると




「聞きたいことは『旧都市』のことですよね?………“四谷よつや 零二れいじ”さん。」




僕の名前と今回目的を言ってもないのに先に喋りだし………全てを察した………



彼女は人間ではなく………



相手の心を悟………覚りの怪異であることを………



「改めまして、わっちは『里中さとなか こころ』旧都市の亡霊さ。」





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