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三田川エリカの無双 その2

 エスタの町の少し東、なんとかって町とエスタの町の中間の街道。




 そこに私は降り立ち、探索魔法で私だけの地図を上空に作ってやった。

 私しか見えない、私だけの地図。




 私はこの魔力で、既にこの世界の事を把握している。


 ヒトカズ大陸と言う名の島の真ん中には大きな山脈があり、その山脈を囲むように人間の居住地があって、そこで人間たちがあの連中が大好きな生活を送っている状態。


 大きさとしては、まあまともな人間の力で歩けばだいたい四ヶ月ぐらいで一回りできるほど。もちろん中央にそびえる山を越えればもっと早く行けるけどそれは別問題。




 やれやれ、本当ちっぽけな世界ね。




(少し東に行ってみるわ、まあ西で少しばっかり遊んであげるのも悪くないけど……私のために犠牲になってもらうやつらのいそうな場所だけど、今回は目当てじゃないから。

 にしても、どんな制限がかかってるのか知らないけど微妙に不便ね!)



 東の町よりエスタの町ってのが面白そうだけど、残念ながら私のお目当てじゃないので華麗にスルー。



 私の狙いは、東の黒髪。

 もちろん「Uランク冒険者・サンタセン」として、新進気鋭の魔導士様として会いに行く。







 でも私の使うこの生命探知魔法にも、微妙な弱点がある。


 黒髪の連中がどこにいるかはわかっても、男なのか女なのかわからない。

 さっきの地図魔法との併用もできない。ああ、面倒くさいわね!


 でもまあ、それって私にもまだ分からないって事があるのよね。いずれはその枷って奴をぶっ壊してやろうじゃないの。







 まあそういう訳でいかにも魔導士様って感じの赤いローブを身にまとい、うつむき加減でよちよち歩き。


 ああついでに背丈も少し縮め、いかにも弱そうな女を装う。


 そうして私はたくさんの馬鹿どもを狩り、その力を示してやった。見た目に騙されるようなザコはそれこそ母親のおっぱいでも吸ってればいいって事。




「ちょっとお嬢ちゃん、どうしたんだい?」

「あ、ああすみません、この辺りに強い人がいるって聞いたんでちょっと」

「ああいるよ、最近来た剣士の人。でも気を付けて、かなり気が荒いからね。まあこの辺りの男はたいてい気が荒いけどね、その人は特別だよ」


 そういう訳で村へと向かっていると、おばちゃんそのものの女に声を掛けられた。

 まったく、こういう人種は本当に苦手。惜しげもなく善意をまき散らし、その上で遠慮なく心配する。そうして自分の思うがまま他人に尽くす事が絶対正義であり、受ける側の事なんか全然考えない。


「もしかして、どうしても会わせたくないと?」

「どうしてもとか言わないけどね、できれば、その……!」

「私は会いたいんですけど」

「ああ、うん……手籠めにされそうなったら遠慮なく叫ぶんだよ、いいね!」




 ああやっぱり、この女も見た目でしか人を判断できない!こんな低級な世界の、押しつけがましいだけのババアが!




「私は大丈夫ですよっ!」


 ついカッとなって、魔法を使ってやった。



 本来の背丈の等身大の炎を出し、土を焼いてやる。これで器でも作れそうなぐらいの炎の大きさに必死にとどめながら、なるべく呪詛に満ちた目でにらみつけてやる。


「ああうん、どうしても会いたいのね!わかったから、わかったから、落ち着いて!」

「だいたいあなたがゴネゴネうるさいから無駄に魔力を浪費しちゃったんですよっ!見た目でしか人を判断できないなんて恥ずかしくないんですか!」

「ああ、その……ごめんなさい……ごめんなさい……!」

「最初から素直になればいいのに……」


 

 まったく、炎の魔法を無駄に出したり引っ込めたりするためだけに無駄な力を使わせやがって、生きている事に感謝して欲しいぐらいよ!


 いっその事催眠とか洗脳とか、そういう魔法でも覚えたいわ!まあどうせたいていの事はこの力で何とでもなるんだけど、それでもこういう邪魔くさい上にぶん殴る事もできない存在って本当に嫌ね!







 まあそんな訳でこうして力を見せてようやくゴネゴネグチグチと心配ぶる事もなくなったババアに連れられて、私は村の一歩手前にある小屋までやって来た。


「ここだよ、ここ……」

「ありがとうございます。ああもう大丈夫ですから」


 言う事を聞いてくれた人間には素直に礼をしなければならない、そんな当たり前の理屈を私は行使するように銀貨五枚を渡した。



 まあそこは元々は納屋のように使われていたけど、今では黒髪の剣士が近所の村を襲っていた魔物を狩り尽くし、その報酬としてもらい受けたらしい。

 でも今では町の荒くれ者のたまり場となっており、町の治安が少しよくなっただって!




 ふん、何よ!要するにゴミ溜めじゃないの、そんな場所今すぐ叩き壊してやるわよ!




「……」

「大丈夫ですってば!」

「はい、はい頑張ってね……」


 ったくもう、で結局最後の最後までこのババアは私の事を心配してる自分超カッケーから抜け出す事ができない。


 私の方をちらちら見ながらしぶしぶ逃げ去って行く。ったく、このままじゃ起きっこないいざって事態を心配して人を連れて来るかもね、ああイライラする!!




 あんまりにもイライラするもんだから、そのいら立ちを扉にぶつけてやった。


「ちょっと!!」


 ったくボロいドアなんだから、たかだか10%の力だってのに!蝶つがいごと吹っ飛んでぶち当たって、その側にいた奴を挟んちゃったみたいだけど知った事じゃないし!




「ああ、お前、何様のつもりだ?」

「そこにいる黒髪男に会いに来たのよ、ザコはすっこんでなさい!」

「おい怪力娘、黒髪のOランク冒険者、ジュイチさんを知らねえのか?力だけで勝てると思うなよ?」


 ジュイチって名前を聞かされた私が微妙にがっかりすると、それをスキだとでも思ったのか子分らしき連中が右手を差し出して来た。


「ドア代なら出さないわよ」

「言ったな!おいジュイチさん、ちとやってやって下さい!」

「おう、お前さん俺に何の用だ?」




 予想通りの展開にある意味で内心感心していると、黒髪の男が出て来た。



 元の世界とあまり変わらない、無駄にイケメンでまるで金を使ってない事が丸わかりの頭をした男。変わったのは、むやみやたらに鋭くなった目つきだけ。




 そう、剣崎寿一。

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