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一人っ子差別?

「デーンさんがまた来たんですか」

「ああ、あいつは村長の息子とか言ってるけどさ、なんでか俺を目の敵にするんだよな」

「そんな口聞いていいんですか?村長さんの息子さんですよ」

「村長のカスロってのは偉いかもしれねえけどさ、そいつ何かしたの?」


 村長の息子だろうが何だろうが、投票権は1人1枚。それが俺の生きてる世界のお約束だ。選挙活動をやって、皆様お願いしますどうかやらせてくださいってみんなに頭を下げまくる。そうしてまあこいつならやらせてもいいかって思わせた奴をなんとなく俺らが選び、そんで初めて村長様になれる。


 もちろんんなルールここにはねえけど、いずれにせよ村長様が偉かろうとでねえとしても、今のデーンってのはその親父の威を借る狐でしかねえ。


 俺はこんなこの世界の事なんぞほとんど知らねえへっぽこ剣士だけど、「攻撃からぼっちになれる」ってえチート異能がある限りはそこそこやってけそうな気がする。

 でもデーンは無理だろうな。俺にチート異能があるとしても、あいつはいろいろむちゃくちゃすぎる。俺のようなど素人でもわかるぐらい乱暴で強引で、力任せな太刀筋。チート異能なんかなかったとしても、逃げるぐらいならば十分できる。それが俺の巡りの悪い頭を動かした結論だ。


「いくら俺がとんでもねえところから来た男だってな、あそこまで突っかかる必要あんのかね、それでこの茶うめえなあ」

「ああ、お茶って言うんですね、そうでしたね。こんな手間をかけてないお茶で」

「俺はこっちのが好きだけどね」


 この世界にも農家があり、畜産があり、金がある。そんで茶葉もある。むしろそれが麦よりも主力産業なのか、俺も茶畑の護衛を手伝った事もある。

 やっぱりこんな世界らしく紅茶、セブンスが言う所の完熟茶がメインらしい。お偉いさんは完熟茶を飲み、そうでない人間は「早熟茶」ってのを飲むらしい。

 でもこの早熟茶って、いわゆる緑茶じゃねえか。日本人にはこっちのが合うぜ。


「そうですか、やっぱり」

「まあな、俺はやっぱり別世界の人間なんだって思うよ。俺の世界じゃ、薪で火おこしたりなんかしねえもん、普通は……」


 河野のばあちゃんが田舎暮らししてて、河野んちにご招待されて薪と釜で飯を作ってるのを見せてくれた事がある。えらく善良そうなお人だったけど、その人でもそんな事をするのは正月盆暮れを含めてめったにないらしい。

 小学一年生だった俺にはその時の飯がいつもの電気釜とどう違うのかよくわからなかったけどな、それより見慣れない山菜の方がうまかったしな。



「しかしよ、あのデーンってのはなぜに俺に突っかかるのかね。そりゃまあ、村中の男の中で俺ぐらいしかあいつにため口でしゃべるのはいねえけどよ、やっぱそのせい?」

「それだけではないと思います、村長さんはあのエクセルって人についてのお話を」

「真面目に聞いてたけどよ、なんか苦虫を嚙み潰したような顔をしてたよな。ああそれから、なんか最近妙に太った気がしたしな」

「お肉ってやっぱり太るんですか、魚ってやせるんですか」

「どっちもたくさん喰や同じだよ」


 セブンスもまあ、年頃の娘らしく美容を気にしてる。こんなとこにはまともな化粧品もねえけど、それでもやっぱ体形は気になるわな。にしてもあのカスロ村長様、急激に太った気がするな。たかがひと月だってのに、それこそ家に引きこもりで「村長的な職務」に励んでうまいもんばっかり食ってればそうなるかもしれねえけどよ、不摂生って単語を知ってるのか?

 でこの村にも一応小川はあるが、魚は住んでない。水清ければ魚棲まずとか言うけど、飲んだり洗ったりする分にはメチャクチャいい水なんだけど、それでも限度ってもんがあるよな。ちなみにこの茶もその小川から汲んだ水で入れたもんだ。


「ってかあのさ、村長さんがなぜ俺をにらんでるかわかるか?」

「おそらく、私が目当てだと思います」

「おや?」

「私、ユーイチさんと一緒に暮らすようになっていろいろ驚いてるんですけど、ユーイチさんって一人っ子なんですか」

「まあな、っつーかもしかしてそれじゃねえだろうな」


 そう言ったらセブンスは深くうなずいた。どうやらセブンスの両親はセブンスを産んだ後も必死になって妊活したらしいけどなかなかできず、その間に亡くなっちまったらしい。墓守の仕事をした時に歴代村長様の墓のほかに、一けたの年齢で死んだ子供の墓もたくさんあったのを見た。もちろん、セブンスの両親のそれも。

 

 これもまた実に田舎らしいっつーのか、二児三児は当たり前っつー性質らしいんだよ。その上に人が死にまくるもんだから、それこそ一人っ子なんぞ希少価値って言うか、むしろバカのやる事だと。


「私は別にお父さんお母さんを恨んでいません。でも一人っ子だからと差別されない世界はうらやましいと思います」

「そうか……ってあれ?」



 俺はこの時、デーンとカスロ親子の思惑に気付いちまった気がした。あわてて茶を飲み干し、目を見開いてセブンスをにらんだ。



「ユーイチさん……?」

「なあお前、デーンのことどう思ってる?正直に言え」

「悪い人じゃないと思います、少し乱暴だけど目をつぶれる範囲内だと思いますし……」

「その意見についてはだいたい俺も同意見だよ、でもたぶん違う。あいつは自分自身のためじゃなく、村長さんのために戦おうとしてるんだよ!」


 セブンスの顔が、実に分かりやすく歪んだ。



 まあな、義父と夫じゃ全然違うもんなマジで。

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