ぼっちの辛さを知った日
「まだいるのかよ……」
雪男と、白狼。
一匹ずつだが、共にこれまでのよりやや大柄だ。
後続はいない。
「総大将の登場かな」
「二人とも狼を頼むわ、上田君は私と一緒に雪男を!」
「了解!」
ザコキャラの集まりを倒した後に大ボスとは、まったく赤井の言う所の型通りの展開だ。
その型通りの展開の先に一体何があるのか、最初からオワットのように全力を出してこそじゃないだろうか。
そしてザコキャラと見た目が似ているからと言って攻撃が同じとは限らない。これまた赤井の言っていた通りであり、どこまでもお約束めいたお話だ。
「白狼め!」
市村が白狼に斬りかかる。白狼は青い舌を見せながら市村の足に食いつかんとする。
そして俺は雪男に突っ込む。
「やっぱりこんな事かよ!」
だがその突っ込む俺に向けて、雪男は吹雪を吐き出した。その上で両手を激しく振り回し、正面も横も抑えようとしている。
力任せに見えて、なかなか侮れない。だが、俺はぼっチート異能がある!
ぼっチート異能に任せて斬り込み、胸に向かって斬り上げる。
青い血が剣を染め、腕の動きが鈍った。
「大川!」
「上田君、その間に白狼を!ああ何をやっているのでありますか!」
大川がふらついた雪男に向けて突っ込むのと同時に俺は白狼を確認し、一瞬だけひるみながら右足で蹴飛ばした。
その上で改めて雪男にとどめを刺そうとして赤井の怒声に気付き、一気に血の気が引いた。
白狼が市村の足に噛みつき、赤井は市村の足に向けて回復魔法を打ちまくっている。
「チキショウ!」
俺が腹立ちを込めて雪男の血が付いた剣を白狼の背中に叩き付けてやると、白狼はあっという間に姿を消してしまった。
「真正の魔物かよ!」
「本当、牙が痛かったな、穴が開いたぞ……」
すねを覆っていた防具に穴が開いている、回復魔法がなければ肉が食いちぎられていただろう。まったく総大将と言うか真正の魔物にふさわしい攻撃力だ。
それで白狼が消えるその間にも大川は太い雪男の足をすくってなぎ倒し、そのまま担ぎ上げて投げ飛ばそうとしている。
まずい!
「赤井、回復魔法の用意を!」
俺はとっさに飛びかかり、雪男の背中を突き刺した。雪男の背中から青い血があふれ、引き抜くと同時にその姿が白狼と同じように消えて行く。
「うわわ……!」
「二人とも頼む!」
俺が魔物を消したせいでつかんでいた存在とバランスを失った大川の肉体を受け止め、何とか必死に支える。
市村と赤井の加勢でなんとか大川の肉体を直立させ、事なきを得た。
「大川すまなかった!」
「上田君……」
「口は生きている、そう考えたのでありますね」
雪男は俺たちよりやや大きい。と言う事は、それこそ大川の頭にあの雪男の口が来ると言う事だ。俺じゃあるまいし、そんな物を喰らったら普通は頭ごと凍り付いちまう。毛皮コートもどれだけ役に立つかわからない。
「いろいろすまなかったな、大川と言い市村と言い赤井と言い……」
「結果が良かったから別にいいけど」
「私が注意する事があるとすれば、オユキを忘れてたことかしらね」
「本当だよ、私を頼ってもらいたかったのにー」
オユキは氷で作った剣を構えながら、憮然とした顔をしていた。
よく見れば今にも飛び込んで行きそうな体勢をとっていて、俺が来なければ大川を守るべく雪男に突っ込もうとしていたかもしれない。
「あのさ、もともとお前を守るためだったんぞこの戦いは」
「でもねー、私はちゃんと戦えるの、守られるだけの存在じゃないの、ぞんざいに扱わないでー」
「そのギャグだけはぞんざいに扱わせてくれ……」
とりあえず守り切った存在の物言いに脱力しながら、俺は大きく頭を下げた。
市村が自らの肉体を白狼に喰わせたのも、大川が自ら雪男に当たったのも、赤井が派手に回復魔法を使ったのも、全て俺のせいだと言える。
もし俺が狼にひるんでいなかったら市村も大川もあんな戦い方をしなくて済んだ。そして赤井もあそこまで魔力を使わずに済んだ。実に無駄な犠牲を払っちまった。
「何をやっているのでありますか、この戦法は上田君と出会う前からずっと取って来た戦法なのであります!」
「肉を切らせて骨を切る、まあこの場合は服を絶たせてだけどな。いつものだ、いつもの」
「そうそう、そうやってしょい込むのってダメだよ」
俺はぼっちだったからかどうしてもやる事なす事、良くも悪くも全部自分だけに跳ね返って来る。そのせいで他人とうまく付き合えず、と言うかその経験が少なすぎる。
ましてや自分が今の仲間で一番の戦力だと言う自覚があるから、自分で何とかしようとしちまう。
「俺って弱いなまだまだ」
「大丈夫だよ、俺たちが支えるから!」
「仲間でありますからな!」
仲間、か……本当にありがたいよな。どうして俺はこんなありがたいもんに会えなかったんだろう。
元の世界ではこんなに気持ちが弱る事も、そもそも仲間なんて求める事もなかったのに……。




