ぼっち伝説Ⅳ
唐突ですが新キャラ登場です。
ボクの名前は持山武夫。一年五組所属、「清掃委員会」の一員。
今日も放課後の校内を回っては、トングと背負いかご、それからほうきとちりとりを持って歩き回る。
街をきれいにするのは気持ちいい。学校だってきれいな方がいい。そういう「清掃委員会」のコンセプトを聞いた時、ボクは一も二もなく入部した。
校内を歩いていると、いろんなゴミが出る。そんなゴミを拾ったり、他の部活動が溜めたゴミをきちんとまとめるのがボクらのお役目。
「ったく、ずいぶんとご立派な心掛けよねー、すごいわ、本当すごいわー」
「おいおい三田川お前なあ」
「遠藤君、せっかく目の前にいるんだからぁ別にいいじゃないの、掃除してくれるんでしょー?ほらほら清掃委員会様ぁ~?」
そしてゴミを集めてると、捨てる人間の事もわかって来る。
例えば同じクラスの三田川。こいつはボクが「清掃委員会」に所属している事を知ってわざわざ目の前にごみを捨てるような奴だ。ただ困らせたいから捨ててるだけ。口で隠す事さえもしない。そして遠藤。こいつはそんな三田川に喰ってかかっている時点であまり大差ない。
そして赤井、ガリ勉オタクを地で行くような彼は決してポイ捨てをしないで消しゴムのカスさえもゴミ箱まで持って行く。でも、それ以上の事はしない。
(悪い人ではない、でもいい人とも言えない。あくまでも自己責任論って感じ?)
自己中と言うにしては女子たちを見る限り気配りはできてる気がするし、あくまでも不干渉主義なんだろうか。
かわいそうなのは二人。上田裕一と、平林倫子だ。
「ったくもう、そんなにモタモタモタモタして、あんたって明治何年生まれ?ああ間違えた、慶応何年生まれ?」
「でも、そんな事、言われても……」
「それぞれのスピードってもんがあるだろ、お前の速度を強制するんじゃねえ」
「あーあ、まーたそうやってぶりっ子女に引っかからせようとしてる……ああうらやましい、昔の女が実にうらやましいわー」
「それって三田川さんの品位をおとしめるよ」
「うわー、何それ脅迫?大学進学をハナっからあきらめるぐらい成績が悪い癖に良く言うわー」
まず三田川のほとんどなさそうなストレスのはけ口にされている平林。
彼女はボクが清掃委員会に所属している事を知るまで、何から何まで雑用を押し付けられて来た。ゴミ捨てでさえも二人分、いやそれこそ十人分のそれをやらされ、少しでも難色を示せば即この調子だった。
平林の成績は決して悪くない。ボクと同じ平均レベル。でも三田川に言わせればグズでバカだとなる。もちろん市村や前田松枝のような心ある存在は三田川をたしなめていたが、完璧に馬耳東風。ふたりはきちんとゴミを拾っては片付けてくれる、演劇部とか料理部とかの部室からもほとんどゴミはない。演劇部はともかく料理部からゴミなんて出ないはずがないのに、先生とか先輩とか以前に彼女自身がしっかりしてなければああはならないってわかる。
そんな存在をバカにするなんて、それこそ前田が優秀で、平林が三田川とは比べ物にならないぐらいいい人間だってわかる。文字通りの月とスッポンだ。
そして上田裕一だけど、こっちはあまりにも印象に残らない。いつの間にか登校して、いつの間にかゴミを捨てて、いつの間にか下校している。
成績、とりわけ体育は優秀だけどまるで印象に残らない。と言うか、わざと印象に残らないように動いている。
なぜだかわからないけど、目に入らない。まるでわざと視界から入らないように動いている。どうやったらそんな事ができるんだろうか。
陸上部の部室にお邪魔した事もあったけど、それでも上田の場所だけはきれいだった。きれいさっぱり、何の痕跡もない。汚いとか汚れてるとかじゃなく、何の努力の跡もない。汗臭さもなければ、足跡もない。
「持山くん」
「ああこれは河野さん、ボクはあくまでも清掃委員会の活動として」
「えらく寂しそうな顔をしちゃってさ、みんなのためにがんばる持山くんはどこ?」
「いやその、上田君はちゃんと練習に参加したのかと」
「してるから、もう心配性なんだから」
毎回毎回そんなだから心配になっていると、同じ陸上部の河野速美からこうやって声をかけられる。
しかし陸上部のせいだかわからないけど、河野は本当に動きが速い。
いつの間にかボクの後ろにやって来て、いつの間にか言いたい事だけを言って去って行く。見た所彼女は大雑把で、そしてその割にやるべきことをきちんと済ませてしまうようなタイプなんだろう。
とにかくそんな上田君だから、友だちはいない。声をかける女子もいない。男子はいるけど、一定の所からは全く進まない。ボクだって声をかけたいとは思うけど、不思議なほどにタイミングが合わない。まったくどうしてこうも嚙み合わないのか、実に不思議で不可解だ。
そうこうしているうちにボクはこんなヒトカズ大陸とかって世界にやって来て、今ではXランク冒険者になっている。
「武器も防具も、ちゃんとした商材になるんだからね。本当に商魂たくましいよね」
ボクは「どんな物でもいくらでもしまえる」と言う技能を持ち、それを生かして清掃作業や、あとは折れた剣や棍棒とかを回収している。
ただそれだけの力しかないボクだけど、それでもボクはこうしてこの世界を巡る。一年五組の仲間に会えるのか会えないのか、そんな事はわからない。わかるのは、ここがまったくボクらの世界と違うってことぐらい。
「こんな血まみれので大丈夫でしょうか……」
「教会に言って、神官様にお祈りを捧げれば使えるよ。その後はまた焼いて新しい剣にするんだよ、にしてもお前さんの力には感心だぜ」
「人間の死体を入れたくはないんですけどね」
墓地に渡した死体、そしてその死体からはぎ取った装備の山。確かに宝の山かもしれない。
その宝の山を前にして舌なめずりできる程度にはこの人たちは強い。ボクだって負けてはいられないってほどに威張るつもりもないけど、みんなの事が心配になる。
「おーい、金はいくらになるんだよ、早く裁定してくれよー」
「手間賃を差し引いてもこれだけの事を一人でやってのけたのを思うと金貨三枚と銀貨五十枚だね、受け取っとけ」
「ありがとうございます」
まあ、それでもボクはとりあえず無事だ。この世界を、これまでためたお金とこの力でなんとか生き残って行く。
それだけの事だ。




