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ぼっちを極めた結果、どんな攻撃からもぼっちです。  作者: ウィザード・T
第二章 冒険者デビューしてみた
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遠藤幸太郎との決着

「遠藤……!!」




 野球部でどんな練習をして来たのか、この世界でどんな事をして来たのかはわからない。


 だがそれでも俺のメンツにかけて必死に走り、市村を斬り殺す前には遠藤の背中を捉えてみせた。



「上田……!!」



 俺に追いつかれた遠藤はさすがに放置できないと見たか足を止めて向かい合ってくれたのはいいが、その顔はほとんど化け物のそれだった。




「せっかく、せっかくあと一歩だってのに、なぜ邪魔をする!!」

「お前がやってるのはただの人殺しだよ!」

「お前に言われる筋合いはない!」

「俺はただ、この黒服と言う名の山賊連中を斬ってるだけだよ!お前は知らないのか!」

「山賊だと言う根拠があるのか!」

「なければするかよこんな事!インチキ孤児の上に立つのはインチキ討伐者だぞ、その事をお前は知ってるのか!」


 ミーサンが山賊をひそかに抱え込み、マッチポンプで報酬をせしめていた事を俺たちはみんな知っている。せしめた金こそ小銭だったらしいがそれこそ詐欺であり、立派な悪事じゃないか。



「すると何か!お前は詐欺師の手先になっているとでも言うのか!」

「ああ、その通りだ!今からならまだ間に合う!俺らが取り成す!」

「黙れこの人殺し!」

「でもお前だって山賊を剣ごとぶった切っただろうが!」



 人殺し。



 確かにそりゃあ、とんでもない汚名だ。詐欺師か人殺し、どっちかにならなきゃいけねえんなら俺は詐欺師を選ぶ。


 それほどまでに人殺しって名前は、重たい十字架だった。



 でもこの世界に来た俺らの中で神林や木村ぐらいしか、人殺しもしないで生きていられる人間はいない。日下だって「炎の剣」で敵を斬って来たと言うが、それが魔物や野生動物だけでないのはまず間違いないだろう。



「そんな事は、そんな事は……!だが俺はだな、単純にハンドレと言う奴が許せないだけだよ!」

「許す許せないで動くのかよ!」

「じゃあお前はなんで動いている!」

「とりあえずはな、俺たち全員で集まるんだよ。その過程でいろいろ見つかるかもしれないし、その上でいろいろ結論を出せばいいじゃないか!」


 神林たちが今ペルエ市にいるのかいないのかは知らない。それでもとりあえず無事であっただけで俺は安心できた。とりあえず俺ら二十人、一年五組で集まり、その上でどうするか考えても遅くはないはずじゃないか。


「そうであります!わざわざ争う必要などどこにもないはずであります!」

「何だよこのヒキニート犯罪者予備軍、いやロリコン野郎が!」

「神林さんたちが見えていないのでありますか!」

「そうだぞ、赤井がモテてたのはみんな知ってるだろ」

「市村の大馬鹿野郎!その目はどこに付いてるんだ!」


 赤井に対しずいぶんな暴言、いや妄言を吐きながら遠藤は俺をにらみつける。それ以上にモテていた市村の言葉じゃ説得力はないが、それでも俺のようなぼっちと違って立派な友だちのいるはずの赤井がそんな風になるだろうか。


「いい加減これ以上敵を作るんじゃない、お前だっているだろ仲間ぐらい」

「そんな存在はとっくに消え失せたよ、ここに来てどれだけ経っていると思ってる!?」

「俺がひと月過ごしたから向こうでもひと月行方不明になってる?そうとは限らないだろ?」

「お前も結局は、赤井のような犯罪者予備軍の仲間だったのかよ……!わかってりゃ持久走でも何でも喧嘩を吹っ掛けて潰しておくべきだった!」




 遠藤は涙を振りまきながら、俺に突進してくる。

 俺はヘキトの使っていた剣を振らない。あえて振らないで歩み寄る。


「そうかよ、覚悟ができたのかよ!殊勝な心掛けだなぁ!」

「少し頭冷やせよ」

「お前はなんでそんなに冷静なんだよ!わかったよ、そうやって知ったかぶりしながらあの世へと旅立て!」



 俺は昔から、不思議なほど冷静だった。


 嬉しかったり楽しんだりすることはできても、泣いたり怒ったりはしなかった。ぼっちである事をさんざん言われても、すべての悪口雑言は俺の耳をすり抜けた。そのせいでかいじめられた記憶はなかったが、気味が悪いとも思われているんだろう。確かに俺がクラスメイトだったら「上田裕一」とは仲良くなれそうにない。




 俺がゆっくりと無表情で近づく中、遠藤はとんでもない力と速さで剣を振り回す。

 デーンやエクセル、コークともまったく桁の違う迫力だ。当たらなかったとしてもその剣が巻き起こす風圧だけでも人を殺せそうだ。実際にトランプカードが舞い上がり、俺の膝を撫でる。


「やっぱりものすごい剣ね、ちょっとお助けしたくなっちゃうじゃない」


 ミーサンはその風圧に乗っかるように電撃を放ち、雷と風を合わせて来やがる。確かに強力そうな攻撃だ。



「お前さ、俺を殺したいのか?」

「当たり前だろ!」

「殺すなんて大げさね、ちょっとおしおきしたいだけよ」


 憤怒の形相と薄笑い。好対照ではあるが俺に対して害意を持っている事はわかる。だからこそ、ここまでするのだろう。



「ユーイチさん……!」

「セブンスとか言ったな、お前もあんな奴の味方をするのか?なれば次はお前を斬るぞ!」

「俺だけじゃなくセブンスにまで手を出すのか?武器を持たない奴を斬ろうなぞ、それこそただの人殺しじゃねえかよ。いや、快楽殺人者だな」

「その口を閉じろと言ってるんだよ!」


 人を黙らせるために首を刎ねようとするなんて、それこそある種の敗北宣言だ。


 確かに遠藤は勉強はあまり得意じゃなくて成績はいつも下位だったけど、それでも赤点の二文字からは縁が遠かったはずだ。



 だってのに剣を派手に振り回してむやみやたらに風を起こすその有様と来たら、それこそ野蛮そのもの、言葉の通じない別世界の住民じゃねえかよ…………。




「お前は俺に何をさせたいんだよ!」

「あえて言えばミーサンって女を斬ってくれないかなって」

「彼女がいなくなればペルエ市は完全にハンドレの配下に落ちるぞ!お前それでいいのか!」

「ハンドレって人はよく知らねえよ、でも知らねえのとこんな真似するの、どっちがいいかって言われたらさ、知らねえ方を取るに決まってるだろ!」

「だからそれ以上むやみやたらに舌を動かすんじゃねえ!死ねこ…………」



「何をするの!」

 と言う二色の声がカジノの中に響き渡ると同時に、遠藤が倒れ込んだ。


 聞き慣れた方の声は切羽詰まりながらもどこか暖かく、耳慣れない方は余裕を気取りながらも焦りがにじみ出ている。




「大川……俺は」

「私はずっと信じてたの!私だってあのオタクは嫌いだけど、でも今の遠藤君は桁の違うバカよ!」

「なんだって……」



 前ばかり見ていて大川に足を払われて倒れた遠藤、背中からのしかかられている遠藤の背中がどんどん小さくなって行く。


「みんなさんざん言って来た、今の遠藤君はおかしいって。でも私は信じなかった、信じたくなかったから!だってのに、どうしてその悪い噂を越えちゃうわけ!?」


 遠藤の手から剣が離れ、そしてその背中が大川によって濡れて行く。




 決着がついた。






 大川はさぞ悔しかったんだろう。遠藤の事を信じていたはずなのに。


 もし俺が遠藤を親友だと思っていたのなら、俺だって大川みたいに泣きわめいたかもしれない。




 だが、今の俺にとってまず大事なのは、目の前の遠藤をたぶらかした女だ。




「大川、遠藤を頼むぞ。さて次はお前だ」

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