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ぼっちを極めた結果、どんな攻撃からもぼっちです。  作者: ウィザード・T
第十八章 ウエダユーイチ、世界を救う!
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この総司令官様は何者なのかと思ったら

「何も変わらないね」


 総司令官様はずいぶんと親しげに、かつどこかため息交じりに空を見上げた。



「さて一同、イチネンゴクミはもう十二分に道を切り開いた。今度は我々が格好いい所を見せる番だよ」

「ですが!」

「あのニセ女神に付き合う必要はないよ、数秒前まで魔王だったのに。クドクド言ってないでとっとと出る!」


 総司令官様が自分たちを置き去りにして馬を飛ばそうとするのを察した団長さんと副団長さんがあわてて馬を飛ばし、凍りついた魔物たちに向かって突っ込んで行く。


「Aランク冒険者こと、英雄ウエダユーイチの仲間たちのおかげで道は切り開かれそうだ。その空けた穴に突っ込んで行くのがキミらの役目だよ!」

「はい……!」

「聞こえないよ!」

「わかりました!」


 それでも腰が引けていた兵士の皆さんにはさらに檄を飛ばし、背中を強く押す。

 少しでもためらったら自分が出て行くけどとでも言わんばかりの圧に、騎士団全部が一挙に突っ込んで行く。


 当然魔物たちも迎撃しようとするがシンミ王国軍の前に押され、さらに先ほどまでの大火と暴風の打撃が収まらない間に今度は猛吹雪である。


「この、この……!」


 ジャクセーが必死に魔法を放つも力が足りないのか打ち消され、次々と亡骸が増えて行く。


「新魔王の力を見せてくれよ!」

「ああ、えっと、全軍、ボクに従え!」

 そしてフーカンも総司令官様によって再起動し、魔王軍に向けて投降を呼びかけた。


「ああ、こら!」

 すると先ほどまで初代魔王の甥に向けて牙をむいていたドラゴンナイトやガーゴイルなどの魔物たちがいっぺんに寝返り、魔王城の地上軍を攻撃し始めた。やはりジャクセーは必死に裏切り者を討伐せんとするが、成果は全く上がらない。




「ちょっと!なぜ争おうとするのですか!」

「私は人類の代表として、自分たちのために戦ってくれた存在を守ろうとしているだけ。それがそんなにお気に召さないのですか?」

「召しません。そうやってあなたのような身分も良識もあるはずの人間が戦おうとするからこそ、誰も戦いをやめようとしないのです」

「ではこの魔物たちに言ってくれないかな、今すぐ戦いをやめるようにと」

「でしたら先に私を必死にまがい物と呼ぶ彼を説き伏せてください」

「じゃあ戦いを続けるしかないですね」


 総司令官様はまったくひるむ事はなく手を振り、将兵を促す。


 オユキだけじゃなくトロベもいつの間にかいなくなり、前線にて魔物たちを相手に槍を振るっている。総司令官様の後ろでは耳も尻尾も長い爪もなくなった倫子や赤井が、どこか震え気味の兵士たちに守られている。



「あなたは昔からそうですね。私の時も」

「あなたの事など私は存じ上げません!」

「いいえご存知でしょう、王弟である白馬の王子様を。身分が低いせいで大した身分も与えられなかったけど、それでもあの戦いにくっついていた優しさだけが取り柄の白馬の王子様を」


 白馬の王子様。まったくありふれたお言葉だ。だが俺にそんなもんにでもなってもらいたいって言うんなら、それこそ十二分にお門違いだ。

 俺はどうあがいてもそこいらへんの高校一年生であり、英雄でいられるのはあともう少しの時間だけだ。まあ人間いつかは老けて白馬の王子様ならぬ白馬のおじ様になっちまうのかもしれねえけどさ、河野も相当に少女趣味だな。


「って、執政官様はコーノさんをご存知なんですか!」




 おいセブンスどういう意味……ってあー!




「執政官様……!」

「そうだよ、ウエダユーイチ殿。私もこの女神様とはいろいろあってね」

「何を言っているのですか!」

「あの時はずいぶんとあっさりしてたね。こんな人類などありふれてると思ったのかい、それともそうして望み通りの成果を与えれば満足して素直に言う事を聞いてくれると思ったのかい?」

「何を言っているのですか!」

「おうあせってるあせってる、まったく両極端だね」


 河野、いや女神様と顔見知りとしか思えない総司令官様の物言いに、俺らは改めて度肝を抜かれる。


「昔、魔王を封じた後に押し寄せて来た魔物たちを食い止めるべくあなたは私に力を与えた。それで私ひとりで魔物軍を押しのけさせ、英雄に仕立て上げた」

「何を」

「だがその英雄は人間であることを選び、全ての富貴よりもこの地の平和と来世以降の幸福を求めた。その功績によりシンミ王国が出来上がり、この大陸は人間の天下になった。そして私はある時は木を植えたミルミル村の村長、ある時はまだ健全だったマサヌマ王国の大司教、ある時はトードー国を興し生涯七千人の敵を斬った最強の戦士に生まれ変わり、今はこうして王子様に生まれ変わっている。その事にはお礼を深く申し上げるけどね、でも私は俗人でいたいんだよ」




 メガミサマの口が止まってしまった。




 もしこれを痴話ゲンカとか恋バナとか言うんなら、実に壮大であり矮小でもある。




 そしてそれこそ、このメガミサマのスケールって奴じゃないんだろうか。

作者「おととしの11月19日から20か月続いたこの作品もいよいよこの8月で終わりです…………!」

上田「百里を行く者は九十里を半ばとすと言うからな、最後の最後まで気を抜くなよ!」

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