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ぼっちを極めた結果、どんな攻撃からもぼっちです。  作者: ウィザード・T
第十八章 ウエダユーイチ、世界を救う!
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証明

 …………攻撃が当たってる!?




 俺の分身がボロボロに燃え、息も絶え絶えになっている!




「お前!」

「裕一。だから言ったじゃないの、戦いをやめてって」

「知るか!」




 それでも俺は戦うのをやめる気はない。

 一人きりで河野速美に立ち向かうべく、空を舞う。


(まったく、壁でも狙ったのかよ!)


 くどいが、ぼっチート異能の破り方は二つしかない。

 ターゲットを俺以外の存在にし、そのターゲットに攻撃を加える。あるいは全く誰にも当てようとせずただただむやみやたらに、弾幕を張るように攻撃をかけ、そのまぐれ当たりを期待する。

 だがターゲットが俺しかいない状況で後者はまずありえない以上、前者の方法でしか攻撃などできないはずだ。



「大事な大事な、優しい子どもを育てるための絵本を焼こうとするのが女神のなし様かよ!」

「私はね、ニセモノを作ってまで戦おうとする裕一を悲しくって見てられないだけ。だからニセモノには消えてもらったの」

「消せるのかよ!」

「できるのよ、私は女神だから」



 人類の限界がチート異能だと言うのなら、それを超えるのは神の仕事だって言うのか。

「神だろうとなんだろうと、この世界を壊す奴を捨て置けるかよ!」

 俺はそれでも高速で突っ込み、文字通りのぼっちになっても剣を振る。







 そして、ついに一撃を加えられた。



「裕一……!」

「これが俺の答えだ!」


 魔王のくせに赤い血を腕から流しながら、いっちょ前に泣いている。

 かすり傷そのもののくせに何のつもりだか。


「倫子も三田川も、この数万倍痛かったんだ。ちょっと痛いぐらいで泣くなよ」



 三田川は河野の呪詛により牙を生やされてしまい、倫子を含めあらゆる存在を食らい尽くす悪鬼羅刹のようになってしまった。

 その牙により倫子は喰われかかり、生やされた牙を十年間鍛え上げ依存していた三田川は牙を折られたせいで幼児退行っつーか今までの十年間を全て失った。



 俺らの一生分のそれよりもずっとずっと痛い思いをさせておいて何のつもりだ。


「なぜよ、なぜ裕一は私を傷付けようとするの!」

「お前が他人を傷つけて来たからだろ!」

「いつよ!」

「ずーっとだろ!」


 全く無自覚に他人を傷つける。そしてその責任を全く負う気がない。


 これが許されるのはせいぜい自然災害ぐらいのもんであり、まともな理性を持ったイキモノに許されるそれじゃない。自然にしても害意はなくただ勝手に起きた気象現象その他により結果的に災害となったにすぎない。

「風神雷神とかにでもなる気か、どうあがいてもただの人間の分際で」

 そりゃ日本人が昔から自然災害を神に例えて来たのは知ってるよ。でもだからと言って神だから無自覚かつ無責任に人を傷付けていいなんてオハナシがどこにあるかい。




「城が、揺れてる!?」

「俺の仲間たちが、お前を止めようとしている。その事実から目を背けるな」


 そして、こんな事をやっている間、魔王城は揺れていた。


 物理的に。


 すさまじいまでの炎が場内を焼き、魔物を焼き、石さえも溶かさんとしている。その炎から巻き上がった風が魔物の亡骸を吹き上げ、そのまま刃や火の粉を伴ってドラゴンナイトやガーゴイルを殺しにかかる。そこから逃げた所で地上を疾駆するたくさんの平林倫子の爪牙が襲い掛かり、やけどと風の刃で負った傷が癒えないまま死んで行く。奇跡的に逃げ切ったとしても赤井の魔法によって強化された人間の兵士たちによって手にかかる。

 魔王軍には人間もいたが、すでに死ぬか降伏するか戦闘能力を失っているかで戦力としてはカウントできない。


「フェムトとやらがここぞとばかりに魔物を繰り出しているようだがな、そんなもんでどうにかなる訳がないだろ、ほれ見ろ」

「……」


 幼稚園の上空で映し出されるこの光景。

 そこにさらに市村の剣が飛ぶ。エネルギーの充填が不十分なのかさっきのような派手派手な一撃にはならなかったが、それでも二けたの魔物を斬っている。

 もちろん城門などとっくのとうに消え失せ、気が付くとあの三人もすでに城内へと逃げ込んでいる。


「これが全力投球って奴だ。お前にそんな事をしてくれる仲間はいるか?」

「ねえどうして?どうしてみんなこんな真似をするの?」

「生きて元の世界に帰るためだよ」

「……本当、何にもわかってないのね。

 私はね、裕一たちが傷つくのが嫌なだけ。どうして最初から、助けてお姉ちゃんって言ってくれなかったの?」

「思いもしなかったよ」



 小学校低学年まではそうだったかもしれねえ。でも中学年になり、高学年になり、徐々にその存在は薄れ、中学に入ってからはほぼ完全に消えていた。春夏冬休みに旅行とかに行って顔を合わせたけど、それが唯一無二の接点だった。

 河野が何かを求めて来ても特に何もなく終わり、また上田裕一と言うただの中学生に戻っていた。

 高校で再会しても特段感情が湧き上がるでもなくただそうか一緒になるんだなとしか思えなかった、それが正直な気持ちだった。


「俺はこの力とセブンスたちのおかげでここまで来た。お前とは関係ない。それがすべてだ。ウソつきは嫌いだろ?」

「…………」

「カミサマならウソがわかるだろ、俺がお前に気がなかった事がわかるだろ?だから俺にこだわっても何にもいい事はない。そういう事だ」


 どこかから取り出した剣で俺の攻撃を受けながらじっと突っ立っている河野の目は完全に泳ぎ、どこを見ているのかわからない。


 まさか俺がこんな気持ちでいたと今の今まで気付かなかったのだろうか。

 それでもそれなら好都合とばかりに俺は剣を振り回し、一撃でも多く加える事に集中する。




「裕一……どうして気付かなかったの?」

「何をだよ」

「誰が、チート異能なんてあげたのかって」


 そして頭部を狙った一撃が速美の髪の毛を二本切り落とすと同時に、河野は空へと舞い上がりながら再び舌を動かせ出した。



 誰って、いったい誰の事だよ。


 そんなもん考えた事もねえよ、最初の一日しか。


「いったい何のつもり……」








 っておい!




 あれほどたくさんいた倫子が、一気に一人になった!




 そして、倫子の爪と牙が消えた!

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