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ぼっちを極めた結果、どんな攻撃からもぼっちです。  作者: ウィザード・T
第十八章 ウエダユーイチ、世界を救う!
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光の奔流

「私は逃さない、逃したくない……裕一を、永遠に……」




 俺は言葉を出すのも惜しみながら、邪神に向けて突進する。






 永遠に?ふざけるんじゃねえ。







 あんなに憎々しかった三田川恵梨香の末路。







 それこそが答えじゃねえか。


「全世界の人間を三田川恵梨香にする気か!」

「なんであんなのを守ろうとするの!」

「守ろうとは言ってねえ、少しでも損害を抑えたいだけだ!」

「損害って、あんなのはおとなしくしていた方が世のため人のためだと思うけど」


 炎魔法が飛んで来る。

 当たる事はないが、それでも心理的な圧はある。


「裕一の底なしの優しさは嬉しいし、だからこそ私も手元に置きたい。でもね、しょせん人間の感情は有限よ」

「お前の憎悪は無限だけどな」

「そんな事はないけど、むしろ憎悪じゃなくて慈悲なんだけど」

「道のりを示さないのが慈悲かよ」

 俺に謝るまでは絶対に助けないって決めている。だがそれを語る事はない。

 その日が来るまでは何年でも置き去りにし、最悪三田川恵梨香のように行き着く所まで言っても教えない事の何が慈悲なのか。

「もし自分で見つけさせることにより成長できるとかって言うんなら、それこそ人間に覚えさせるには一億年は早い理屈だな。少なくとも幼稚園児や小学生に教えていい理屈じゃない」

「ごめんなさいの一言が言えないような人種はそれまでだと思うけど」

「お前は三田川にも平林にも全身全霊をかけて謝るべきだ」


 俺がやられたらやり返すとばかりに剣を振るが、まったく届かない。

 河野は悲しそうな顔で俺を見下ろすばかり——————本当実にメガミサマらしいこった。


「ねえ裕一、私はあなたを殺したくないの。永遠に死んでほしくないの」

「殺したくないはわかるが死んでほしくないはねえだろ」

「私はもう二千年は生きてる」

「メガミサマの寿命を持ち出すな」

「だからあなたにも同じように二千年生きてもらうから、いや永遠に!」

「そのメリットはなんなんだよ」


 人間サマの都合なんかびた一文考えてねえ、本当に自分勝手。


 当然、こんな事も言いたくなる。


 カミサマだろうがなんだろうが、メリットもなしに動けるもんか。神社仏閣の神様仏様だって、こっちがおさい銭を与えるというご恩を与えてるから利益をもたらしてくれるもんなのに何様のつもりだか。


「戦争も、貧困も、いじめもない世界」

「三田川と倫子を見てよくそんな事が言えるな」

「それはあなたがいないから。あなたがいたら私は世界にもっと優しくなれる。私を諫め続けてくれる」

「誰がそんな役目をするか」

「私の子どもを作り、この世界中を愛で満たし、さらにヒトカズ大陸のみならず全ての海と空と大地に」


 この間ずっと、俺なりの全速力で迫りながら剣を振り回すが何にも展開は変わりゃしない。

 ただ妄想以外の何でもない言葉を垂れ流し、ただ幼稚園の建物の上空を逃げ回るだけ。

 たまに何かの魔法を打ち出して来るが当たる事はない。安いパフォーマンスだ。



「外では俺の仲間たちが戦っている。それをどうする気だ」

「裕一は悲しいの?傷付いたら」

「当たり前だ。お前が俺を大事に思ってるんなら分かるよな」

「わかるわ。でもそれならやる事は同じよ」


 河野速美は幼稚園の天井に外の戦いを映す。




 見た所かなり俺たちが優勢、ジャクセー以下魔王軍はかなり追い詰められている。


 それでも魔王軍はあきらめてなるかとばかりに、地上戦力も空軍勢力も次々と突っ込んでいる。すでに城門にまで攻撃が及んでいるのに、必死の抵抗だ。

「哀れとは思っても同情はしないからな」

 悪態を付いてやると、城門を責める兵士たちに向かって数体の大きな灰色の魔物が駆け寄って来た。




 ゴーレムだ。



 クチカケ村で見たゴーレムが複数体いるだなんて!


「これもお前の魔法か」

「いいや」

「じゃ止めろ」


 力を見せつけて犠牲者を出したくないならとか抜かすのかと思ったが、魔王は首を横に振るだけ。

 あの一匹でもえらく苦労したゴーレム、確かに最強クラスの戦力かもしれねえ。



 当然ながら兵士の皆さんも180度向きを変えて撤退に走り、ここぞとばかりに魔王軍も陸・空軍とも追跡をかける。米野崎と前田らしき炎や風も来るが、まったく止まる気配もない。


「勝負をかけて来たって訳か」



 もたもたしていると犠牲が出るぞって事かよ、だがいくらなんでも——————













「うわぁ!」


 そんな状況でいきなりすさまじいまでの光の奔流が起こり、ゴーレムに向けて流れて行く。




 ゴーレムを呑み込み、魔王の門を削り、流れ弾のように魔王軍の空軍兵力をも溺れさせる。断末魔が耳に無断侵入してくるのにはほとほと参る。




「これが市村正樹の剣……いやもしかして田口の……」




 とにかく田口の力なのか市村の力なのか、数対いたゴーレムは一瞬にして塵と消え城門どころか正面の城壁まで消えてしまった。


 何と言うものすごい力だ。


 当然の如くシンミ王国軍からは歓声が上がり、魔王軍はかろうじて人間の盾ならぬ魔物の盾を作っている状態だ。




「……危険よ、危険すぎるわ」

「何がだ、まさか俺が思ったように何人かボコらせて手を止めさせる気か」

「そうだけど?とにかく裕一を含むみんなの力は危なすぎるわ」


 確かに俺以下チート異能って奴は大変素晴らしくもあり、同時に危険でもある。

 その力に溺れた奴らを、俺はこの目で嫌ってほど見て来た。








「お前よりは安全だ」




 だが俺は確信している。



 もう誰も、目の前の魔王三世を討つため以外には使わないと。



 いや、俺が使わせないと。

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