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ぼっちを極めた結果、どんな攻撃からもぼっちです。  作者: ウィザード・T
第十八章 ウエダユーイチ、世界を救う!
586/631

タイミング

「大量のガーゴイル!」

「と、ドラゴンナイト!?」


 多数のガーゴイルと、ドラゴンナイト。

 空軍勢力が、一気に地上に向けてやって来たのだ。


「しかしこの数は……!」

「これが魔王軍の本気か!」



 しかもついさっきまでちらほらと言ったレベルだったのに、気が付くと数倍に膨れ上がっている。


 空ではあるが立錐の余地なしとでも言わんばかりに青天を覆い、赤と緑と少しの灰色に空を塗り固めている、


「全軍出撃かい!」

「その通り……!」


 シンミ王国軍が最終決戦と決め込んでいるからのを見切ったか、魔王軍もまたその気だと言う事を示すには十二分な数だった。


「古今東西、これほどまで大量のドラゴンナイトが出た事はありませぬ!」

「そりゃいいね、私たちは歴史の立会人って訳か」

 そんな悠長なと言う言葉を飲みこませる程度にはジムナールは真顔のままであり、ピコ団長以下の側近たちを逆に動揺させるには十分であった。


「総司令官様、私めはぶしつけながらあなたの事が時々わかりませぬ」

「そうかい」

「いつも泰然自若とし、まるで全てを見抜いておられるかのように」

「いや何、向こうが最後通牒を仕掛けて来たからね、それに応じないとなれば全力でこっちを潰しに来るのは自然な流れじゃないかなって。それこそこちとら政権の頭をすげ替えに来てるんだから」


 理屈が通っていない訳ではない。しかしそれだけにしては、あまりにも動揺と言う言葉から遠すぎる。




 幼い時からそうだった。戦争により旧王宮を失いムーシが行方不明になった時も、絶対大丈夫を繰り返して兵士たちを元気づけ、異世界に避難していた事がわかってからはすっかり安心しきったかのように元気に振るまった。

「未知と言う事は快楽が皆無かもしれぬと言う意味であり、苦難が皆無かもしれぬと言う意味である」

 その聖書の一節を幾度も聞かせ、心ざわめかせる家臣たちを元気づけた。それによりゆっくりとムーシ王子たちの無事を信じるようになり、戦争によってざわめき立っていた心も収まって行った——————それでも鎮め切れなかったのがピコ団長とタユナ副団長なのだが。

「ワフーもザベリも悠長すぎるってさんざん喚いているのを見た時は頭からお水でもかけてあげようって思ったよ」

「実際にやってましたよねぇ……」

 で、実際三ヶ月前にこの世界に帰って来たムーシ王子たちを見るや奥底にしまい込んで出そうとしなくなったのがこの二人であり、実際にそうされても頭の冷える事のなかった二人はこの場においてお望み通り護衛役をやらされている。

「この戦いは我々がかならず勝つと仰せなのですか」

「言わないよ。ただ相手の手ってのがわかるってだけでね。その作戦をむやみやたらに話しちゃうとそれこそ相手に読まれちゃうからね。幸い序盤から押してるみたいだし、こういう時は相手の方があせって手を打って来るもんだよ」

「それはいささか悠長という物では」

「悠長に構えて何が悪いんだい」

 その立場でも表情を崩さない上司を必死に焚き付けるが、上司はまったく動ずる気配がない。この人間がさらに地位を得たらどうなるのかと言う不安が膨らみ、だからこそ幾度煙たがられても声を張り上げたくなる。




「ジムナール総司令官……」



 そんな存在を、敵も放っておくわけがない。

 戦力を整えた魔王軍の重臣、ジャクセーが人間軍の総司令官に向けて声を飛ばす。


「これだけの戦力に勝てると思うか?」

「思わなきゃ逃げてるよ。

 にしてもこれだけの魔物が、コーノハヤミとか言う一人のわがままによって殺されるんだ。ひどいと思わないかい?」


 小声だが重みある声を出したジャクセーに対し、総司令官はいつものように風のごとく軽く、鋭さを持った声で返す。


「思わぬ。なぜウエダユーイチは戦いをやめようとせぬのだ?ただそれだけでいいのに」

「それがコーノハヤミとか言うとてつもない駄々っ子にへいこらしろって事と同義語だって気づいたからじゃないかな。私だってそんなのはお断りだよ」

「駄々とは無駄に戦争を起こす事ではないのか?なぜわざわざ手を血で汚そうとする?」

「じゃあ攻撃するしかないね」


 そして、その数をそろえておきながら平然と和平と言うか降伏を持ちかけてくるのがジャクセーであり、その和平交渉をゴーサインと捉えるのがジムナールだった。


「惜しいかな英雄たち」

「構う事はない。全力で頼むよ。後先を考える必要はない。頼むよイチネンゴクミの精鋭たち!この戦いは、人類の存亡をかけた最終決戦なんだから!」

「そんな」







 そんなと言う三文字を口から吐きだしたのは誰だっただろうか。




 そしてそれが、この戦いの展開を決めた瞬間であった。




「すべての力を持って!」

「やってみせる!」


 米野崎の火力が、一挙に増して行く。


 リーチも伸び、門そのものだけでなく門の上にいる兵士はおろか、上空にいたドラゴンナイトにも火の玉が飛んで行く。

 間一髪で避けた兵士には、前田の風の刃が襲い掛かる。ドラゴンの羽が傷つき、さらに風によって流された炎がドラゴンの鱗をかすめる。


「行けーっ!!」


 そこに襲い掛かる、シンミ王国軍の同盟軍ことフーカン軍。

 数の差など知った事かと言わんばかりに乱れる敵軍へと襲い掛かり、次々と致命傷を与えて行く。

 それでもとばかりに急降下してシンミ王国軍を狙うドラゴンナイトやガーゴイルもいたが、次々に風魔法や炎魔法によってこの世を去り、空がどんどん広くなって行く。

「ええい攻撃をかける!」


 タイミングを逸した事を知ったジャクセーが攻撃魔法を放ち全軍に攻撃を命じる。


 スケルトンもコークもバットコボルドも、タイガーナイトもイエティも注ぎ込んでの総動員体制でシンミ王国軍に襲い掛かる。




 剣に槍、こん棒に拳、それから吹雪。


 様々な攻撃が魔王の門の草をさいなみ、土をかすめる。



 だが、肝心の兵士たちが倒れない。

 いったん守りの態勢に入らせたところですぐ反撃が来て、その上に炎と風の二段攻撃が魔物たちを横からなぎ倒していく。


「全力で行くであります!!」


 全力なのは米野崎や前田だけではない。



 赤井の補助魔法が兵士たちに力を与え、一刀一刀の重みを増し、振りを早くする。



 魔物たちの首が飛び、青い血が流れる。


 頼みの魔導士スケルトンたちも米野崎と松野に襲われ、ジャクセーさえも押し返せなくなっている。

 利き腕を失い、傷の癒えない大魔導士の劣勢ぶりは形勢をますます傾かせた。




 そして、もう二人の精鋭が戦場に飛び出した。

作者「ずれた間の悪さも~それがキミのタイミング」

上田「四半世紀前の歌だろ……」

作者「聞きながら書くとこうなっちゃうんだよ」

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