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ぼっちを極めた結果、どんな攻撃からもぼっちです。  作者: ウィザード・T
第二章 冒険者デビューしてみた
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インチキ討伐者

「早熟茶でいいのか?」

「ああ、って言うかお前も案外律儀だな。払ってくれるだなんて」

「これが戦いに負けた者の作法だろう」



 俺たちはエクセルを起こし、ナナナカジノの側の宿屋へと連れ込んだ。

 こんな所で早熟茶なんぞ飲む奴はめったにいないせいか、俺らが黒髪のせいか、ずいぶんと目立っちまってる。


 そんな集団の中でセブンスは俺にくっつき、赤井と市村も並び、エクセルと大川は気まずそうに茶を飲んでいる。赤井か市村が女だったらまるっきりデートか合コンだ。




「それで、ミーサンってのはどんな女なんだよ」

「雷魔法使いだ、普段はあの仰々しい看板を光らせるのに使ってるけど、いざとなれば人殺しにだって使える」

「なるほど、とりあえず強いと言う事か。だがな、確かにその女の子の話した通り商売人同士の食い合いがあるのはわかる。でもさ、たかが同業他社を潰すためだけに生物兵器を抱え込むか?」


 大川は眉を上げるが、誰もツッコミを入れない。

 人間を骨ごとぶった切れる遠藤など、それこそとんでもない兵器だ。俺らの世界ならばまだしも銃や戦闘機なんぞ存在しないこの世界、剣こそ武器の王様であるだろう世界では魔物以上に恐ろしい存在だ。もちろん、雷魔法を含めた魔法もまたしかりだが。




「それとミーサンは二十日前、山賊狩りをしていたらしい」

「山賊狩り?」

「ギルドを通さない仕事は功績の対象にはならず、また後から申告したとしても報酬はかなり安値になる。実際、ミーサンが受け取った報酬は相場の十分の一だった」

「確かに山賊狩りは立派な仕事であります、しかし普通に予告した上で申告すれば良いはずなのなぜそれを怠ったのであります?」

「その山賊の中に、お前たち三人がこの前捕らえた奴がいたんだ」

「別人だろ……!」


 二十日前にそのミーサンが狩ったはずの山賊が、昨日俺たちに殺された!?いくらファンタジー世界でも死者蘇生だなど、そんな虫のいい事があるか!


「元Xランク冒険者のマセイ、豪剣のマセイと言う自称でそれなりに名の通ってた男だった。どうやらミーサンカジノで全財産をすっちまって山賊になり下がったらしいけどな、それから女癖も悪かったらしい」

「王城に連れ込んだので、ほどなくして刑罰が下されると思うでありますが……」


 確かに今思い返せば、マセイって奴はやけに顔が長くて目が鋭かった。


 それほどの顔ならば間違えようがない。そしてミーサンカジノで全財産をってのも何か怪しい。


「要するに、八百長だってのか?」

「ヤオチョーってなんですか?」

「あらかじめ山賊たちと示し合わせてて、討伐された振りをさせたとか」

「その可能性は低くない。ミーサンがひそかに討伐した山賊はおよそ百名とも言われているが、実際にその日シラエ城やペルエ市に投降して来た人間は一人もいない」

「百人だなんて、どうしてわかるんだか」

「俺だって旅の剣士と言う名の冒険者だ、魔力を計る事はできないがそういう力を持った知り合いはいる」


 エクセルの人脈に感謝していると、赤井は自分もできると言わんばかりに鼻を指す。その伝でマジックポイントでも見えるんならば俺らのステータスも見てもらいたいもんだ。


「彼にはおよそ百人分の山賊を狩って来たように見えたと?」

「ああ、変装はしていたがそれでもミーサンだってのはバレバレだったらしいからな、あの体型はごまかしようがないらしくてな」

「ああそう、でもミーサンってのが少ない魔力でいっぺんにとか」

「それはない」


 強く手を振るエクセルの様子からすると、どうやらこの世界の魔法はどんな奴でも同じ魔法なら同じ威力らしい。その魔力の程度を鑑みて、ちょうど百何十人分かの電撃を放って倒した事にし、その上で関係を結んでいたのか。


「しかし山賊を抱き込んで何をする気だ?」

「王家やペルエ市の物資を奪わせて自分がせしめるため……」

「そういう事だ。トランプもいわゆる盗品だろうな」


 山賊を狩ったふりをして自分に従わせ、そして自分の手足として使っているとすれば、並外れた悪党だ。一体何を企んでるのかはわからないが、もしこいつの言う通りだとすれば野放しにはできない。


「これはもはや放置はできないでありますな!」 

「市村、明日にもミーサンカジノに行くぞ!」

「了解だ、遠藤を正してやらなければならない!」



 俺らは手を前に出して合わせた。セブンスは俺ら三人に続くようにゆっくりと、大川は最後に大きな手を前に出し、エクセルはためらった挙句出さなかった。


「エクセル、ありがたいけど、これは一年五組の問題だ」

「イチネンゴクミとやらが何なのかはわからない、でもお前たちにはお前たちの問題があるんだろう、まあ俺はとりあえずついて行かせてもらおう」





 俺たちは遠藤への決意を新たにしながら、このペルエ市のそれより少し高い宿を取る事とした。


「大川……」

「私はいい、それこそ野宿にも慣れ切っているからな」


 でも大川だけは宿を出てすぐそばの草むらで横になるべく足を動かしていたが、どうにもその背中は小さかった。



 親しかったはずの遠藤の事でいろいろショックだったのかもしれないが、だとしてもあの強い大川の姿はなかった。


 そしてエクセルいわく、大川が何もしていないはずなのに出禁になったと言う噂のあるミーサンカジノの照明が、まぶしくて仕方がない。と言うかかなり客来てるし、俺らは慣れているけどセブンスはもうどうにも眠れそうにないからって飯だけ食ってとっととベッドの中に入り込んじまった。



 っつーか宿代節約のためとは言えシングルベッドに二人かよ……にしてもまあ、男二人で寝る羽目になった赤井や市村よりはましか……。


「ミルミル村ですらベッド二つあったのによ……」



 にしてもまあ、セブンスの寝顔と来たら……本当に幸せそうだぜ。

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