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お姫様の役割

 俺たちの三日間の任務は、休む事だった。



「とは言え町もまだ荒れていますしその三日間はこちらの執政官邸か王城か、それとも南ロッド国で……」

「いや南ロッド国には明後日朝行きますから」



 その任務において俺とセブンスは、南ロッド国に行く事になっている。

 そこからフーカンの背に乗り、魔王城へ二人きりで攻撃をかけるわけだ。

 その流れ上、俺たち二人は別行動となる。


「にしてもずいぶんとおいしかったようで何よりです」

「みんなの事を思うといたたまれないだけです」


 俺は十分に熱かったはずの完熟茶を二口で飲み干し、ため息を吐いた。

 休息とか言いながら、赤井は説法を行いオユキは水を提供し市村とトロベは土木工事を手伝っている。持山はアイテムボックスで物資の運搬を行い、藤井は絵で大量の工具を作っている。

 出番がないのは俺とセブンスと倫子ぐらいで、セブンスだってまるでメイドのように動き回っているし、倫子はと言うと子どもたちのケアに当たっている。


「それはお互いお役目がありますから。って言うか困ったもんだよねって執政官様はおっしゃっておられますが」

「みんなだって俺と同じ気持ちなんでしょう。言っておきますけど俺はまだ最大の秘密をみんなに教えていませんから」

「それは」

「みんなに言うべきか否か迷っているのも事実です。俺とセブンスだけが共有している秘密を」


 文字通りの最終決戦。


 コーノハヤミを倒せば、この世界からひとまず戦乱はなくなる。

 平和が来る。

 もちろん恒久的なそれではないが、とりあえずこの世界に対する責任は果たせたと言う事になると思う。


「この世界に迷惑をかけてるのは結局俺たちです。その後始末もできなくて何ができるって言うんですか」

「責任感の強いお方ですね、執政官様がお気に入りなのもわかります。そしてお姫様がお気に入りなのも」

「それは……」


 そして、その責任を果たし終わったら俺は何をする事になるか。




「ユーイチ様ぁ」


 そんな事を考えながらベッドに座っていると、一人の女性の声が入り込んで来た。


 テリュミ姫だ。真っ白なドレスに身をまとい、声に遅れじとハイヒールを鳴らして部屋へと入って来る。


「お姫様、なぜここに」

「あれぇ、今日はおひとりですかぁ?」

「そうなんですよ、執政官様のご命令でね」

 Aランク冒険者だろうと異世界人だろうと、あの執政官様には逆らえる気がしない。それほどの迫力を持ったお人だ。

「お兄様って本当にすごいですよねぇ、どうやら今度の決戦の時もお兄様が総大将になるってぇ」


 その上にこの行動力だ。その次には兄との抗争が始まってしまいそうなほどの功績を挙げるのは心配でもあるが、同時に単純に楽しみでもある。


「しかしもしお兄様がぁ、お姉様だったらぁ、ユーイチ様をお嫁にしていたかもぉ」

「何言ってるんですか!」

 と思いきやいきなりなんなんだよ!

「いやそのぉ、正直ユーイチ様の事が好きすぎるって言うか、入れ込みすぎてるって言うかぁ」

「否定はしませんけどね」

 ……で、そんな鋭いことを言ってくるんだから厄介だ。実際、俺に対する執政官様の思い入れは異常だ。田口の事があるとは言え、あまりにもすんなりと受け入れすぎているのではないか。


「でも私ぃ、正直不安なんですぅ」

「そりゃそうだよな」

「お兄様にダメもとで頼んだらいいって言ってくれたんでぇ、今度の戦い」



 ————————————俺は完熟茶を飲んでいない自分に感謝した。


「あの、それって最終決戦に」

「そうですぅ、付いていくことになったんですぅ」

「ぶしつけですが本気ですか」

「私も驚いてるんですぅ!」


 確かに奇策を打ちそうな人ではある。だいたいAランク・Bランクとは言え二人きりで俺らを突進させるなど普通は思いつかない。とは言え妹まで使うとは……。


「私、許せなかったんですぅ……シスクレ姫ぇ、あれでも私からすればぁ、ライバルのつもりだったんですぅ」

「えっ……」

「彼女はずっと私と戦って勝つために魔法の勉強をしていた、そうでなければあんな事がユーイチ様にできるとはぁ……」

「怒ってないのですか?」

「それは怒ってはいますけどぉ、でもそれって全部国のためですよねぇ、それでそんな事までできるって私には……」


 シスクレ姫が水魔法を俺に当てられたのはなぜか、俺もわからない。もしかしたら河野の教えを受けていたのかもしれないが、それを確かめる術はどこにもない。

「私はぁ、ロッド国を滅ぼしたのはコーノハヤミだと思っていますぅ、そりゃ私たちもかなりいろいろやって来ましたしぃ、それから魔王軍じゃなく私たちに兵を向けたのもよくわからないんですけどぉ……それでも私個人としてはぁ…………」

「ずいぶんな事言われてたそうじゃないですか」

「確かにそうですぅ、でも私も大事な杖を空間魔法でやっちゃいましたからおあいこだとぉ……」

「それ取り出せますか?」


 お姫様は懐から杖を取り出した。緑色の木に青い宝玉のついた杖。


「これがあのお姫様が使っていた杖」

「はい、今となってはあの子の形見ですぅ……」

「形見か……それで戦うのですか」

「はい、と言いたいんですがやっぱりユーイチ様はぁ」

「止められないですけど、河野はおそらくお姫様をかなりの優先順位で狙ってくると思いますよ」

「シスクレ姫たちの無念を晴らしたいですぅ!」


 ……河野の願いが文字通りだとすれば、あいつは世界中の女性を殺すだろう。

 ましてやこんな風に俺に好感を抱いている女性など。


「…………命だけは守ってくださいよ」

「ありがとうございますぅ……」




 お姫様が来る時とは別人のような足音で去って行く中、俺は改めて河野速美の異常性に背筋を寒くした。

作者「本当はテリュミ姫もハーレムに加えたかったんですがちょっと尺不足でした」

テリュミ姫「ひどいですぅ!」

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