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三田川と河野の差

「まったく、どこまでも暴虐なプロポーズであります」

「あれはプロポーズって言わないわよ」

「本人だけがプロポーズと思っているのであります……」




 名目的には勝利か引き分けのはずなのに、誰もそんな事を思えないまま俺たちはミワキ市へと戻った。




 ————————————五日間考える時間を与えるから、その間にどうするか選んで。




 はっきり言って、最後通牒以外の何でもない。




「五日間も時間を与えて何をする気なんだろう」

「勝てるって言う絶対的な自信だろうな」

「倫子……」

「私もわからない、勝てる方法が……」


 倫子も首を横に振る。


 三田川の時みたいに、ステータス表示を幾度か見た上で対処方法を見つける事も出来ない。




コーノハヤミ

 職業:kuyq,uiqw

 HP:mgytqpn,;ejo/bmklgnyjksewn

 MP:gvuylwq,boyg/ymuloewq.npi

 物理攻撃力:gunyksykyujm

 物理防御力:zybql,nleoe.i

 魔法防御力:enmkjwamvklj

 素早さ:hlku.wve/;ti

 使用可能魔法属性:快速魔法、nlwamlmwei;woc.380o2qu8;iwc,

 特殊魔法:ny,kjqbw;oi,cjwmaekl7ymbher,wau8,y;




 これが倫子が見たコーノのステータスだ。


 名前と快速魔法って文字以外、まったく読めない。以前と比べて強くなっているのかいないのかさえもわからない。


「いずれにしても、だ。彼女はおそらく、魔王軍など何とも思っておらん」

「トロベ!」

「でもおそらくはその通りだ。河野にとって魔王軍はただの道具に過ぎない。あのジャクセーの扱いを見ただろう」


 タグチのチート異能を借りてようやく回復した市村が足元をふらつかせながら北の方を見る。

 フーカンとフーカンに付いた魔物たちにより俺たちは空を越えてミワキ市に到着し、市村を早く寝かせようと横抱きにしながら野戦病院状態の町を歩く。


 一応復興は進んでいるが依然として執政官邸以上の建物はなく、俺たちがしょんぼりして帰って来たもんだから住民の皆さんも同じ顔をしている。申し訳なかったが、それでも現状を思うと笑う事なんかできない。


「大丈夫か」

「持山と藤井……」


 持山は資材を運び、藤井は絵から出した大工道具を配っている。チート異能によって南側から復興は進んでいるようだが、それでも俺が見ていたミワキ市の姿はまだない。


「一応復興は進んでるよ、でもあれからたった三日だぞ、チート異能込みでもできる事と出来ない事がある」

「三日…………」

「ああ三日って事も忘れちゃうほど頑張ってたんだね、赤井君たち」

「人生で最も濃い三日間であります、ただしよくない意味で……」


 デトックスって言葉を覚えたのは三ヶ月と三日前だが、今こそ俺らに必要な概念かもしれねえ。




 この三日間河野速美、いやコーノハヤミって言う話の通じねえ存在の毒気をたっぷり吸いこんじまって、正直これまでのどの時よりも気分が悪い。


(混じりけのない素直な気持ちがここまで恐ろしいって、なんで三田川や倫子と一緒にいて気付けなかったんだろうな…………)


 三田川恵梨香の行いには、邪心はなかった。あくまでも俺たちの将来を純粋に憂い、そのためにあんな行いをしたのだろう。だが手段が間違いすぎていた故に反発され、それゆえに却って使命感に燃え、ああなってしまったのかもしれない。







「幸い時間はある。しばらくは休むべきだよ」


 執政官様は実に温かく迎えてくれる。


「この度は」

「いいからいいから、って言うかイチムラ殿がかなり負傷してるじゃないか、回復魔法は」

「ボクが力を与えて赤井に回復させましたがこれがいっぱいいっぱいです」

「ならしょうがないね、早くベッドに運ばせて」


 兵士さんたちの手により市村はベッドに運ばれて行き、残った面子で慰労会と称した食事会が開始された。

「こんなにいいんですか」

「いいんだよ、とりあえず北ロッドを併合した功績は間違いないからね」


 反論できない理屈の前に、俺たちは豪華なディナーを頬張る事を余儀なくされた。


「お口に合わないのかい?」

「いえ全然、むしろかなり美味です」

「そうか。でもやはり、あの第三の魔王かい」

「ええ……」


 この場にいた全員が、等しく毒気に当てられている。三田川と濃度の違う、より純粋培養された毒気。

 もちろん本命は俺だが、それ以上にみんな苦しんでいるかもしれない。



「とにかくだ、三日ほど休め。君らに万が一の事があってはいけないからね」

「ありがとうございます……」

「って言うかさ、コーノハヤミの言ってることをどう理解しろって言うんだい」

「俺だって理解に苦しみます。しかし彼女は一度決めたら絶対に変えない女性です。おそらくは本気でしょう」

「そうか……」


 執政官様さえも顔を曇らせ、手を止めて完熟茶をすする。

 どこか遠くを見るような目でムーシの方に寄り、俺らのクラスメイト兼自分の弟を守ろうとしている。


「もちろん私はコーノハヤミなる魔王の言う事を聞く気はない。あれは本当に魔王の名を持つにふさわしい存在だからね。あれに屈したら人類に明日はないよ」

「そうですか……………」



 人類に明日はない、か。


 まったく、河野にこの執政官様の言葉を聞かせてやりたい。

 そんな馬鹿な、私はただ裕一が愛しいだけなのにって言うけど、ハニートラップで国を滅ぼした話なんて古今東西山ほどあるっつーのに。


「だが彼女の言っていたタイムリミット五日間が文字通りのそれだとすれば、特別な作戦で行くしかないね」

「それは……」

「まあ平たく言えば、私が地上から攻撃をかける軍の総大将をやるんだよ」

「えっ」


 執政官様自らが?

 確かに頼りになるだろうが、今の河野が遠慮するような存在には思えない。下手すると命を失う危険があるんじゃないか。



「にしても、地上からって事は……」


 地上から?って事はもう一つ?




「それで……」

「そして、ウエダユーイチ殿とセブンス殿、Aランク冒険者とBランク冒険者には、フーカンの手によって直接乗り込んでもらう」

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