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Aランク冒険者・ウエダユーイチ!

 ————————————Aランク冒険者。

 ————————————Bランク冒険者。




「今の俺たちとはケタが違うんですか」

「まったく違う。DランクやEランクなら、十年に一度はいるとされている」


 十年に一度に三ヶ月足らずで到達した俺とセブンスは十二分にイレギュラーなのだろうが、A・Bランクってのはそれ以上なんだろうか。




「今からおよそ千年前、女神と魔王は戦った。お互い全ての力を注ぎこみ、このヒトカズ大陸の覇権を巡って。

 結果として女神は勝利したが禁術を使った事により力を失い、また魔王を討ち取る事も出来ず封じ込めるのが精いっぱいだった。

 そこで女神様は我々に、二人の英雄を生み出させた」

「二人の英雄?」

「いつか魔王が蘇りし時、その封印を紐解きその力を与えよと」


 王様は女神様と魔王との戦いを語りながら、机に触れた。


「そこにもしかして」

「ああ、Aランク冒険者とBランク冒険者の任命書だ。もしこれなしでBランク以上を任命した場合、死刑にする事さえできる」

「…………」

「かつてマサヌマ王国はAランク冒険者を乱発したのは、女神様の力を示すためにですか」

「ああそうだ。それがあってからはかなり厳格になってな、Cランクの呪いもあり実質最高はDランクとまで言われるようになった」


 BとC、いや正確にはBとDの間にはそんな格差があるって事か。

 そんなとんでもない物を与えられるかと思うとと少し引いたが、セブンスはさっきからえらく冷静だ。


「セブンス……」

「私は平気です。その力、正しく使えばいいんですよね」

「まあそうだな。そうでなければわしはこの力を託さん、ジムナールに殺されるわ」


 王様は笑っている。


 確かに、あの執政官様ならば笑いながら父殺しぐらいやりそうだ。しかもきちんと大義名分を作り、誰もが納得させるやり方で。




「とにかく、Aランク冒険者・Bランク冒険者になった事までは行っても構わぬが、その力がいかなる物かは胸の中に秘めておいてもらいたい」

「わかりました、と言いたいんですが」

「ユーイチさん!」

「でも戦いの中で自動的に露見する可能性があります」

「それは構わぬ。ずいぶんと細かい事を気にするのだな。

 まあとにかく、書状を開けるぞ」




 王様の右手が机から離れ、引き出しが開く。

 やはり魔力によるセキュリティシステムかと思っていると引き出しが動き出し、二本の筒が転がっていた。




 純金製と純銀製の筒に入れられた二枚の書状。




 卒業式のあれよろしく音が鳴るのかと少し期待していたが、そんな音はしなかった。




「それでAランク冒険者の力と言うのは」

「天下を守る力だとされている。この力を得た英雄は十万の怪物を相手に一人で戦っても傷一つ受けす、七万の魔物を討ち取り三万の魔物の心を叩き折ったと言われている。

 そしてBランク冒険者は、天下を得る力だと言われている」

「天下を得る力?」

「その力により破壊から命を守り、町を守り、正義を守るとも言われている。ペルエ市はそのBランク冒険者により三昼夜守られたと言う伝説もある」




 どっちもものすごいお話だ。


 十万の魔物を一人で倒し、三昼夜すなわち七十二時間にわたり町を一人で守り抜くなど、どっちもまさに伝説の英雄だ。




「その力をなぜもっと早く使わなかったのですか?」

「これだけの力を不埒な人間に与えるわけには行かないと言う事だ」

「俺は」

「わかっておる。だがそなたらは安心だ。仲間のために戦えるのだからな」


 その英雄の力ってのは、核弾頭ミサイルにも近しい。それこそたやすく与えては自分の首を食いちぎられるようなシロモノであり、俺だったら正直焼いていたかもしれない。


「とにかくこの力を持って魔王を討ち取れば、ムーシのようになれるかもしれぬ」

「ムーシ王子様?」

「ああ、ムーシはかつてそなたらの世界へ逃げ込んだように、ウエダ殿たちも……」







 ————————————そして、あまりにもいきなりのお言葉。







「つまり逆も!」

「ああ、できるはずだ」







 元の世界に戻る見込みがあると言う事か!







「でもそれって…………!」

「ああ、だがその前に魔王をどうにかしてくれぬと困る。ましてやその魔王がそなたの仲間となると」

「わかりました。やってみせます。それで……」

「その点について話すか否かはその方に任せる」





 そのために、俺は戦って来た。

 そしてその方法に、あまりにも唐突に目途がついた。





「立つ鳥跡を濁さずと言う言葉が俺の世界にはあります」

「アカイ殿から聞いている、最後の最後まで、きっちりとやってくれると言う事か」

「この世界から魔王の脅威を取り除かなければ、みんな安心できませんからね」




 俺自身、この世界には世話になりっぱなしだった。なればこそ、最後に大恩を返さなきゃいけない。

 この神殿にある力が原因なのか、それともまた別の何かなのはともかく、巻き込まれてしまった以上は当事者なのだから。




「セブンス……」

「ああ、はい……」

「一緒に戦おう、頼むよ!」

「ええ…………」


 セブンスと手を取り合う。

 なぜか口の動きの悪くなった彼女と共に、純金と純銀の筒から取り出した書状をじっと眺める。


「この力はいかなるそれをもっても剥がす事はできぬ。ただ、世界をまたいだ場合はわからぬが……」

「ムーシ王子も」

「ムーシがそちらの世界でも力を発揮していた事は聞いている。決して邪魔になる事はないはずだ」


 このぼっチート異能とも違う、十万人を相手にして勝てる力。


 それを手に入れた俺がどうなるのか。そんなもんはわからない。


「わかりました!どうかお願いします!」




 しかし、ためらう理由もない。


 河野を止め、元の世界に帰るためならば!




 俺は深々と頭を下げ、王様からAランク冒険者の任命を受けた。




 すると俺を認めた証のように、書状は散って俺の体を覆い、まるで溶けるように消えて行った。




「美しき光……決して悪用することなかれ……」

「謹んでお受けいたします……」




 俺は改めて、魔王との戦いの決意を固めた。




 そして俺は、セブンスを包んだもう一つの光に感心し、勝利を確信した。

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