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ぼっちを極めた結果、どんな攻撃からもぼっちです。  作者: ウィザード・T
第二章 冒険者デビューしてみた
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大川博美と赤井勇人

「上田君……」

「大川さんか、大丈夫だったか?」




 大柄な体型相応に顔も膨らんでいるが、それでもアスリートらしい引き締まった目つきをしていた大川博美は、宿屋のソファーを一人半分ほど占拠していた。


「相当辛い思いもしたけどね、一応大丈夫だよ。って言うかセブンスちゃんだっけ」

「はいヒロミさん、セブンスと言います」

「博美でいいよ、あなたかなり細いみたいだけどちゃんとご飯食べてるの」

「朝晩ちゃんと食べてます」

「……そう……」



 博美は残念そうにセブンスから目を逸らし、俺の方を向く。


 博美の柔道着の汚れには、土や草だけじゃなくもっと赤いもんも見える。そういやさっきヘキトがやられたさいに自分の剣で自分を傷つけたとか言ってたけど、その時の返り血なのかもしれねえな。



「ところで朝ごはん何食べたの」

「宿の食事だよ、パンひとつに肉と野菜のスープ、それから早熟茶」

「バランスが良く取れてていい料理だと思うけど、どれだけの時間かけたの」

「かなり今朝遅かったからな、時計なんぞないからよくわからないけど、冒険者ギルドの依頼って基本早いもん勝ちでさ」

「早食いは体に悪いわよ」


 早食いは冒険者の必須アビリティとか言うジョークをかました奴もいる、と言ったのは市村だ。正直今日の事でそれがジョークでない事をある程度思い知らされた以上、大川の言葉をうかつに飲み込めない。

 と言うかミルミル村にいる時でさえもセブンスは早食いで、その割には太らない。この宿屋に来た時の初めての食事の際、俺はセブンスの倍の時間がかかった。



「まったくもう、いろいろ細かい物必要でしょ?まあ私だっていきなり唐突にこんなとこ来ちゃったから人の事言えないけど、これから冒険者を続ける以上いろんなもの必要だと思うんだけど。まだお金あるから明日はいろんな物備えないと」

「そういう事なら赤井のが詳しいんじゃないか」

「あのオタクは何やってるの?まさか野垂れ死んでるとか」

「赤井は聖職者様として、パラディン様の市村とパーティ組んでるよ。本当この辺りでは最強クラスの冒険者パーティじゃないかな」


 丁重に説明されると、本当に分かりやすく博美の顔が歪んだ。

 大川は遠藤や三田川恵梨香と共に、赤井を心底から嫌がってた。遠藤は赤井を異常者を見るような眼でさげすみ、三田川は少しでも赤井が関わるとそれだけで嘔吐したそうなポーズを取る。


 一学期の中間テストで赤井が二位、三田川が一位となった時にはそれはもう思いつく限りの罵詈雑言を吐いて人格否定までし始めるような有様だった。赤井と親しい三人の女子がガン見してたけどまったく柳に風。

 その上赤井に負けた全員に喧嘩売る気かよと先生から言われたけどその返事が

「あらあら、こんな二次元から永遠に出て来られないような将来の引きニートに負けるなど、人間としての素質すら疑わしいと思いますけど?」

 だもんなあ。どこまでこいつは偉いんだ?

 そん時は俺だって三田川に一生関わりたくないと思ったぐらいだよ、ぼっちのくせに。




「あの……」

「確かに赤井は勉強はできるけどね、でもしょせん二次元は二次元じゃないの、まあ確かに女の子たちにモテてるように見えるけどね、あの三人だってこんな調子じゃいつか」

「ハヤトさんが何かしたんですか?」

「私は単に心配なだけよ、世間的に言ってああいう存在は正直歓心を持たれないからね」

「やめとけ、お前の物差しを振りかざすんじゃない。そういうのを独善って言うぞ、遠藤幸太郎みたいになりたいのか」

「どういう事!」



 ……こけた。俺を投げ飛ばそうとしたのかもしれない大川が、勝手にこけた。



「何その身のこなし……」

「大川、お前遠藤がどうなったか知らないのか?いきなり後ろから斬りかかるような男になっちまったんだぞ」

「ええ……」


 大川は床に寝そべり、明後日の方を向きながらため息を吐いた。遠藤がんな事になっちまってるなんて信じたくないんだろう、俺だって信じたくないんだから。


「私は遠藤君がこの世界でおかしくなっちゃっただなんて思いたくないけどね、私やあのオタクだってできたって言うのに」

「お前も相当悪い奴と戦って来たんだろ?まあそういう事だ」




 俺は適当にそんな事を言ったが、大川が倒してきた悪い奴がどんな連中なのかまではまだ把握していなかった。

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