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マジカルパワー!!

「お前は、お前の世界で生きろ……俺たちの世界に来るな……」




 異世界で、異世界の住人に向かって俺ははっきりとそう言った。




「私は、どの世界の存在でも何でもいい……お前たちを正す……」


 正義って言う物体に、手足がくっつき、口を開いている。

 手足が自分を阻まんとする存在を壊し、砕き、自分にとっての楽園を作ろうとしている。

「この世界から失われた労働という概念、努力という正義、学問という甘露の水を注ぎこみ、この世界を王道楽土にする…………」

 口からは正義が正義たる理由を垂れ流し、手足で足りない分を補おうとしている。


 三つの兵器をもって、豊かな大地をわざわざ自分色に塗り替えようとしている。

 その大地の住人たちの事なんかまるで考えない。


 人間も、動物も、魔物も。



「ギャーッ……!!」



 怠惰、いや待機という名の怠惰を犯したスケルトンが数名、太い悲鳴を出しながら炭化して行く。


(魔王ってのがこの世界でもっとも凶悪な存在ってのを指すのならば、正解だよな……)


 敵も味方もない。あるのは邪魔者かそうでないかだけ。


「魔物たち、敵は我々ではない……仲間を殺したミタガワエリカと言う簒奪者だ……」

「もう、永遠に黙ってくれる!」



 ワフーさんの言葉に反応しようとしたドラゴンナイトに浴びせられる光の渦。

 あのセクシー美女気取りの一撃により貴重な戦力がまた削り取られて行く。


「そんな事してる場合じゃないってぇ!」


 そしてその間に俺は、小娘と真っ赤な女の二人のグベキに向けて突っ込む。

「あの雪女の攻撃を防げぇ!」

 小娘グベキの手によりせり上がった鉄の壁。

 真正面から少し外れた方向に出る当たり、もう俺の事は完全に把握している。


「まだまだ!」

「さっきはごめんね、こっちもオッケーよぉ」


 その壁の間から飛んでくる手裏剣と、ビームの雨。


 全く狙う気のないでたらめな攻撃の連発。



「すべては、ミタガワエリカ様の世界のため……」

「答えて見せるが世の正義!」

「セクシーなビームをお受けなさい……」


 ランダムな攻撃が、突っ込む俺の体をかすめる。


「狙ってはダメだ!撃て、撃て、撃て!」

「魔物軍!足止め!」


 俺を殺すためにみんなを足止めせんと兵力を突っ込ませる。

 ひるめば即炭化させられる事がわかっているからか突っ込んで来る、社畜とでも言うべき生き物たち。

 それとは別にこっちに向かって来た生き物、後ろから撃たれて死ぬ事もある存在。


「何と言う抵抗!」

「もうおやめなさいであります!」


 騎士と僧侶の呼びかけにも魔物たちは前進をやめない。あくまでも俺をぼっちにするようにみんなを囲んでいる。


「ウエダユーイチ……ウエダユーイチ……」



 そして、一匹のバッドコボルドが俺に抱き着いて来た。


 押し倒そうという害意が見え見えだったから手が滑ったが、その彼の背中もまた撃たれた。




「ダメなバッドコボルドはおしおきよ……」







 そう、バッドコボルドを消し飛ばすべく。







「ついに、ついにやったわ……」

「ウエダユーイチを、ついに殺したんだね!」


 やけにはしゃぐ二人。同僚同然の存在を殺していったい何がしたいんだろうか。




「うわっ!」

「ちょっと!」








 二人に斬りかかった本物の俺がいると言うのに。








「間に合いました!」




 そう、ずっと控えていたセブンスの作った幻影だ。


「ちょっと!幻影だなんてず」

「さあ行きなさい!」

 ずるいとは言わせないとばかりに次々と俺の幻影が生まれ、三人のグベキを狙う。

 回復魔法が使われまくっているから倒せないが、それでも行動を制限するだけでもかなりありがたい。


 もちろん俺へと向かって来た連中の相手をするのにも、俺とみんなを分断した部隊を攻撃させるのにも良い。



「なぜ、なぜこんな男を……」

「私はユーイチさんのために力を使うと決めてるんです!あなたは他の誰かのために力を使おうと思わないんですか!」

「私の世界には私の理念をわかる人間がいればいい……お前たちは要らない……」

「あなたには守りたい人がいないんですか!」


 セブンスの叫びが、届く事はない。


ただの正義に、口と手足はあっても耳も目もない。

 文字通り正義を垂れ流しながら、攻撃をかけるのみ。


「負け犬の遠吠えに意味はない……どうせお前たちは私を永遠に傷つけられない……」

「そうでしょうか?」


 ただの正義に、セブンスはひとり抗い続けている。


 俺らだって正直あの手しかない状態なのに、いったいどうする気なんだろう。


「セブンス」

「大丈夫ですユーイチさん、私は見ていました……!


 あなたや、コーノさんが浮く理由……!」




 空を飛ぶ魔法か、ホウキもなしにんな事ができるなんて改めて夢物語だ。


「魔力の使い方…………」

「怠惰だ。即席で使いこなそうなど怠惰だ……」

「今まで使いたくても使えなかった、見て来なかったから……!

 ですが!今なら!」




 セブンスは目を閉じ、両手の指を合わせ、親指と人差し指はそのままで残る三本の指を組んだ。




「さあ、行きますよ!!」




 俺の足が、急に軽くなった。







「わわわ……!」

「これがセブンス殿の!」

「ちょっと何それずるすぎー!」




 敵味方問わず飛ぶ、困惑の声。




 とりあえず声がする方を向くと、みんなが小さくなっていた。







 いや違う!







「ユーイチさん!これで戦えます!」






 俺の目線が、ミタガワエリカと同じ高さになっていた。







 つまり、俺の体が、宙に浮いているのだ!


「さあ勝負はこれからです!!」




 次々と浮かんでいくウエダユーイチたちが、ミタガワエリカを半包囲して行く。







 まさか青空の下で斬り合いとは。







 改めて思う。世界は広いって。

作者「マジカル頭脳パワー!!って知ってる?」

上田裕一「高校一年生に何を聞いてるんだよ」

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