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ぼっちを極めた結果、どんな攻撃からもぼっちです。  作者: ウィザード・T
第二章 冒険者デビューしてみた
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女子三人組

「おや、神林と木村と日下じゃないか」

 

 

 

三人ともえらくびっくりした顔をしてやがる。


「あ、あ、上田……!?」

「あのさ、お前らこの世界に来てまだ一日しか経ってないのか?」

「もうひと月は経ってるよ……」

「逆にすげえな」



 日下はまだ冷静だが、木村と神林は信じられねえと言わんばかりに挙動不審そのものになってやがる。まあその日下だってかなり震えてるけどな、ずいぶんと重たい鎧着込んでるって事はそういう職業なのかね。男にも女にもモテそうな顔は何にも変わってねえけど。


「っつーかさ、お前ら他の連中を探そうとしない訳?」

「そういう上田は」

「まあ俺だってひと月以上グダってたから人の事は言えねえよ。そんで神林はさっきの言葉聞く限り歌手なんだろうけど木村は何なんだよ」

「奇術師かな」


 木村は手から球を取り出し、俺の前で浮かせてみせる。魔力があるのかないのか関係があるのかないのかわからねえけど、確かに不思議な技だ。



「あーそれでだ、上田は何だ」

「俺は文字通りの剣士だよ、ただの剣士。赤井は僧侶で、市村は聖騎士様だ」

「やっぱり市村君は本当にすごいね、ねえすごいんでしょ」

「聖職者様のがかっこいいよ、聖歌隊とかもマジできれいだし」

「声が大きいぞ」


 赤井も市村もクラスの中でモテている部類に入る。アニソン好きで声優志望らしい派手派手衣装を着てる神林は赤井と仲良しで、木村は他の女子たちと同じように市村だ。



「あのさ、お前ら一体どこにいた訳?」

「私たちはこの大陸のかなり北側にいた……その辺りには仲間はおらず……」

「それで西に行こうか東に行こうか迷いに迷ったんだよねー、三日かけて討論してさー」

「月子ちゃんがコインの裏表で決めるのを渋らなきゃ良かったのにさ」

「う、うるさい!大事なことをそんな方法で決めていいのかと言っているだけだ!」

「しかし何あの途中の雪山、あれ本当月子ちゃん万歳だったよ」

「私の剣を暖房代わりに使うな!」

「しょうがないでしょ、凍え死ぬのなんて絶対ごめんこうむりますから」


 日下が必死にはしゃぎまくる二人をたしなめるが、二人ともまったく気にしている風がない。


 にしてもまたチート異能かよ、月子も月子でかなりかっこいいもんをもらってるらしいな、鎧も厚けりゃ剣もデカそうだぜ。



「まったく、本当に黒髪連中は」

「あっれー、ミーサンのカジノに来て金貨一枚すっちゃった人じゃなーい」

「本当、銀貨一〇〇枚を一七〇枚にしたところでやめれば良かったのにー」

「お前ら見てたのかよ……!って言うか覚えてたのかよ!」

「深入り、ダメ、ゼッタイ!」


 そんで三人ともヘキトにも簡単に絡んで来る。なんていうか本当、この世界を満喫してるよなー……。


「何だよお前ら、目の前のこの酒も飲めない男はよ、お前らがなんかいかがわしい事をしてるんじゃないかって思ってたんだぜ」

「やだ上田、何考えてたの!?」

「こんな状況に急に放り込まれて逆によく今まで平気だったな」

「確かにそういう思いを二人にぶつけて来たのもいたがな、まあ私の剣で裸にむいてやったら逃げ出したが」

「あれマジ傑作だったよね、高そうな服がぜーんぶ月子の炎の剣で燃えちゃってさ、体を燃やさないようにやるなんてマジ芸術的な腕前でさ、上田にも見せたかったわ!」



 別に選り好みなんぞする気はないし、そんな事ができるほど偉いつもりもない。だがどうせ救うんならばもっと弱ってるやつを救いたいと言うのは正直な所ではある。


 日下の鎧は俺よりもずっときれいだし、神林と木村に服も、あるいは舞台衣装なのかもしれないけど派手できらびやかできれいな奴だ。


「そう言えば赤井、今日はナナナカジノで警備やってるぞ」

「赤井君そんな所にいたの!?」

「目と鼻の先にいたのに気づかねえのかよ、まあんなもんかもしれねえけどさ……」

「でも赤井君ってここじゃみなみのお目当ての情報持って来られないだろうしね」

「赤井がなぜモテるのか、それは努力を怠っておらんからだ。このままだと取られるぞ?」

「あんなであります坊やがモテるだなんてさ、しかもさっきから聞いてるとあんな偉い僧侶様の力もなかったわけだろ」



 モテまくって困る男の気持ちなんて、もちろんぼっち男にはわからない。セブンスがああして俺にべったりな事でさえ個人的には不思議なぐらいであり、赤井みたいに三人の女に囲まれる心境なんてなおさらだ。


「しかしさ、お前ら本当に何も知らない訳、俺を含めて十七人の行方を」

「知らなーい」

「同じく」

「知っていれば真っ先に言うぞ」

「大川博美を俺は探してるんだが、このヘキトを倒したな」

「オオカワヒロミ?」

「ああ、たぶん俺らの仲間だ」


 俺のヤマカンに反応する事もなく、神林と木村はヘキトの顔をまるでテレビのように眺めている。確かに確信のない話だし、この世界に強くてでかい女がいないとは限らない以上スルーされるのはわからんでもないけど、正直ヘキトの顔の何が面白いのかね。


 まあ、急に眼がつり上がったから確かに面白いのかもしれねえけど。


「おい、オオカワヒロミって、あの出禁女か?」

「えー、博美何やらかしたのあのミーサンカジノでー」

「あの柔道少女がそんな物にうつつをぬかすとは思えんが……」



 出入り禁止とは相当な事をやらかさない限りあり得ねえペナルティだ。何がどうしてそうなったのかわかりゃしねえけど、どうやらよからぬことに巻き込まれてるのは間違いなさそうだな。



「まあ、どうやら大川博美捜索のめどは付いたらしいな。俺は明日にでも赤井と市村と共に合流を目指すよ」

「上田って博美好きな訳?」

「こんな世界で苦しんでるかもしれねえだろ、遠藤みたいにさ。ああ今の遠藤とうかつに会わねえほうがいいぞ」



 困っている人を助けたいという願望の一つや二つ、俺にだってある。でも不思議なことに俺がその方向に動こうとすると、なぜかその問題は解決していた。



 そんなある意味での理不尽を思いながら、俺は目の前の困っているかもしれねえ存在の救いの手になってやる事を決めた。

この三人組が活躍するかはわかりません。


ああ、大晦日も更新はあります。

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