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武闘大会?

「で、なんでこうなったんだろうな」

「一種の余興だよ」




 本物の魔王の首ってわかってから一時間後、俺たちは再びコロッセウムに集められた。




「せっかく強者が揃ったんだからさ、ちょっとばかり楽しもうじゃないの。


 武闘大会って奴で」




 武闘大会。




 文字通り戦いの腕を見せ合うイベントだ。



「ツッコミを入れなかったの」

「野暮だろ、悪いけど……」


 倫子のツッコミを小声で返した俺は、執政官邸の庭で柄にもなく素振りを始めた。


「出るのか」

「出るも出ないもないだろ、市村はまさか」

「そんな訳ないだろう、お前と違って俺らは力を見せてないんだから」


 相変わらず拙劣な俺の隣で、市村も自前の剣を振っている。

 パラディンってのが聖なる力で敵を斬るもんだって言うのはもう知ってるし、それによって大きな戦果を挙げて来た事も知っている。

 だが今までの俺らを振り返ると実際にやったのは赤井であって、俺でもセブンスでも市村でも大川でもオユキでもトロベでも倫子でも持山でもない。


 俺と赤井以外の実力を、まだみんなよくわかっていない。


「だからこそ私たちはその力を、改めてあの執政官様以下に見せつけねばならない」

「私も出るわよ」

「同じくー!」


 トロベだけでなく、オユキも大川も積極的だった。

 大川まで積極的だったのにはちょっと驚いたが、それでもよく見れば目が生き生きとしている。

 もしかしたらあの俺とピコ団長さんのを見て自分のそれも行けると思ったって事じゃないだろうか。大川の力が役に立つのかどうかはまだわからないが、それでもそんな意欲的な人間を止める道理はない。


「でも気になるんです」

「何がだセブンス」

「北ロッド国は攻めて来ないのかと……」

「そのためでもあるだろうな」


 セブンスが不安がる中、トロベは口を付けていない早熟茶のコップをセブンスに寄せた。その飲めと言う合図に応えるかのようにセブンスはコップを持ち上げ、一挙に飲み干しにかかった。


「いやまあこういう場合はウエダ殿の方がいいのだろうがな、頼む」

「俺たちがいい試合をすればするだけ、国中に俺たちの強さを見せつけられる。士気が上がる。北ロッド国にもその話は広まる。あの執政官様はそれだけの事をすべてわかってるんだよ」


 その強さを見て目を覚まし仲良くすればそれでよし、ダメだとしても敵の強さを見せられたゆえに士気は落ちるだろうし。


「でも私はちょっと疑問って言うか」

「倫子」

「この間に北ロッド国が戦争を仕掛けて来たらどうするのかって」

「このミワキ市から北ロッド国との国境は歩けば六時間、馬を飛ばしても一時間半はかかるとピコ団長さんは言っていた。ましてやその間に防護施設もあるからすぐさまここに来る事はない。と言うか西の本城から援軍だって来るぞ」


 倫子は耳を垂らしながらため息を吐く。

 実は俺だってピコ団長さんがうんたらかんたらと言うのを含め大半が当て推量なのだが、だとしても理屈で言えばそうなるはずだ。


「でも、魔王が死んだとしても、魔王の配下の魔物が死んだとは一言も」

「魔王軍は混乱状態だ、いきなり魔王が死んだんだから。でないとすれば全滅だ」


 それでも狼狽を隠そうとしない倫子を理屈でねじ伏せると、俺は残っていた早熟茶を一気に飲み干した。



「不思議だな」

「トロベ」

「アカイ殿、ウエダ殿は本当に人気がなかったのか」

「人気がないと言うか、まったく注目を集めなかったと言うか……」

「だが今の姿を見る限り、それは単に男性に不人気だっただけではないのか」


 トロベは時々こんな事をさらっという。

 トードー国にいた時だって俺が食べ歩きついでに刀を振っているとやけに熱心にその振りを見つめ、稽古だとか言って槍を合わせてくれた。

「ウエダ殿と手合わせができて楽しかったぞ」

 それで最後にはこんな風に言い出す。


「俺は男にも人気がなかったよ。悪い友達もいなかったが」

「やっぱりおかしいと思わないか」

「おかしいと言われても、遠藤や剣崎の事を思うとな……」

「冗談でしょ、あんなのが人気あったみたいに。本当遠藤(えんりょう)して欲しいよそんな冗談は」


 オユキのダジャレとそれで顔を崩したトロベはさておき、確かに俺の不人気さは正直不可解だった。

 今こうしてそれなりにちやほやされるようになってから振り返ると、ところどころにわざとらしさが見え隠れする。


 テストの点数ひとつ取っても、100点満点のテストはおろか10点満点でも一人もいない。

 いや、小学校時代の5点満点の漢字テストでさえも、俺が4点だと誰も4点がいなかった。

「なんかわかんないけど」

 その枕詞と共にひらめいたり見落としたりとかで3点や5点になり、誰も4点を取らない。たまに100点を取る事もあったが、その度に舌打ちが聞こえた。そして通知表をもらう度に深いため息が聞こえ、他人の不成績を思う度に自分ももっと頑張らなくちゃとなる。


「不自然な物には理由があると思います」

「チート異能に理由も何もないと思うけど」

「いいえ、私はあると思っています。まるでユーイチさんが孤独であって欲しいと願うような」


 セブンスの言う通りだとしたら、俺はそれこそとんでもない宿命に巻き込まれてる訳だ。

 ムーシがいる以上あるいはと言えなくもないが、いずれにしてもそんな力を持った奴が二人もいるとは思いたくないってのも事実だ。







「やあやあ準備は整ったかな」

「執政官様」




 そんな所にスルッと入り込んで来る執政官様。相変わらずムーシを従え、にこやかな笑顔と共に現れて来る。


「準備ができたんですか」

「いやまだだけどほどなく終わるね、それで君らに会って欲しい人がいるんだ」

「どんな人です」

「リョウタって言うんだ」




 リョウタ?




 亮太か、良太か、涼太か。いずれにしても実に俺たちっぽい名前だ。




「それは!」

「おおいい具合に喰い付いて来たね、その彼もまたこの大会に来てたんだ。ああ元々別の要件も君らにあったみたいだけど」

「どんな人なんですか!」

「南ロッド国の国王様だよ」

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