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究極のチート異能!?

「おい!絵ドロボー!」


 ベストに白いワイシャツに型のいいズボンを履いた男が、三枚ほどキャンバスを抱え込んでいる。


「絵ドロボー……?」

「お前以外のどこの誰だよ!!」


 鳩が豆鉄砲を食ったような声でこっちを見た男の顔は、やっぱり鳩が豆鉄砲を食ったようだった。




「お前、アホなのか?」




 他に何の言いようもない。



 出入口が一つしかねえアトリエ部屋に腕利きの冒険者が一同揃って居並んでいる。


 どっからどう見ても絶望でしかないはずなのに、まったくその様子がない。

 だいたい泥棒なんて要件を満たしたらとっとと逃げるもんなのになぜだ?強盗にも見えやしないし、っつーか俺らでさえも武器を持ってねえのに……。

「キャー!」

 と思っていたらなんとその泥棒、いきなりないに等しいはずの俺らとドアの隙間をくぐり抜けて飛んで行った!キャンバスまで丁重に抱えて、一体どんな身体能力だよ!


「待ちなさいであります!」

「誰が待つかよ!」


 そしてようやく本気を出しましたと言わんばかりに走り出し、執政官邸の門に向かって突き進む。


「何だよあれ!」

「すげえ身体能力だ!」

「ってかなんだよバリンって!」


 いや、その前に手すりから飛び降りてる。ガラスを割ったような音を立て、足に傷を付けながらも着地してすぐに走り出している。

「氷の壁を作ったのに!」

「出入口を封鎖してください!」

 オユキの防備をも破るのかよ、見た所大した魔力もなさそうなのに。って言うかオユキも行動が速いけどそれ以上なのかよ!


「シカフー!!」


 姫様も叫ぶ。



 って、え?シカフー?




「シカフーって!」

「そうだよ、私ですよ……!」



 ふりむいた絵ドロボーは執事って言うより下働きって感じで、細身だけど下にはしっかりと筋肉が付いている。

 重い物を運んだり、いろいろと雑用をこなしたりするその力は本物なんだろう。だが今はそれが恨めしい。



「どうして絵を盗んだんだ!」

「これはな、国家の怠惰を戒めるため、ですよ!」

「国家の怠惰?」

「戦争の最中にどこ行ったのかもわからなくなった王子様を、八年間もぉ!」

「何を言ってるんだよ……!」

「捕えろ!」


 当然兵士たちがシカフーを襲うが、この中年男性は三枚のキャンバスを抱えながら高く飛び上がり、視界から消えた敵に右往左往していた兵士たちの頭を踏ん付けて正門から飛び出して行った!




 シカフー

 職業:魔物

 HP:100/100

 MP:0

 物理攻撃力:200

 物理防御力:100

 魔法防御力:1000

 素早さ:500

 使用可能魔法属性:なし

 特殊魔法:なし




「何だよこれ!」


 俺は倫子が出してくれたステータスを見ながらシカフーを追いかけるが、まったく厄介な数値だ。

「これ一体何ですかぁ!」

「説明は後でします!」

「これじゃヘイト・マジックも効くか自信がありません!」

 ヘイト・マジックはそもそもこっちに害意がある事が前提なので、魔法防御力がゼロだとしてもここでは難しい。


 って言うかなんて言う速さだ、一応箱根駅伝志望の俺でも逃がさないようにするのがやっとだ!


「それにしても、シカフーが、魔物だなんて!」

「いやおそらくは、悪魔憑きかと!ああそこの彼を捕らえて下さいで、ありますぅ!」


 お姫様も走っている。その姿と声に反応した町の人たちもシカフーを捕えようとするが正面に立てば上に行かれ、上をも塞ぐとスライディングで崩される。



「なんなんだ、あれは、どうしてあんな……!」



 人間業とは思えない身のこなしだ。




 なぜかやけにたくさんいる強者っぽい人たちも止めようとするが、まるでアクションゲームのザコキャラのようにかわされる。



 しかし、命を狙う訳でもなくただ絵を持って逃げ出すなど一体何のつもりなのか。


 悪魔と魔物が同義語なのかはともかく、絵にどれほどの価値があるのかわからない。


 金策だって?悪魔憑きだからこそその金を魔物に献上する事もあるだろうけど、今まで魔物と手を組んでいるような人間は俺らを除いていなかった。コーク?あれは主従関係だ。オユキを見る限り魔物への偏見はないようだがだとしても怪しまれる。




「っつーかこの先ってブエド村だろ!?」

 って言うかなぜ東に向けて走ってるんだ?南と西は論外としてなぜ北じゃないんだ?

 この絵を手土産に北ロッド国に亡命でもする気かと思ったが、だとしてもおかしい。まあ一応ブエド村もロッド国だが……







 ってなんだ、この光線は!




「上田君!」

「あ」




 赤井かと思ったが、それにしては声が高い。まあいい振り返る暇もないとばかりに俺が光線を横目にシカフーを追いかけると、光線は人や建物を突き抜け、角を曲がろうとしたシカフーの頭をかすめた。




「ひいいい!!」




 いきなりシカフーが悲鳴を上げ、前のめりになる。



 って何だおい、剣が落ちている!

「ガハッ!」

 そして、倒れ込んだ。




 剣が両腕をかすめている。




 頭にリンゴが当たっている。




 そして、絵からは剣とリンゴが消えていた……。

上田「って言うか俺らの名前って元ネタありって本当?」

作者「全員じゃないけど」

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