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ガシャは悪い文明?

「おいソウゴ、一体どこへ行く気だ?」


 銀色の鎧を着て、右手に槍を持った一団。

 ああ先頭の男だけは兜をかぶり、剣を持っている。



「ガシャ殿、これから執政官邸だ」

「ギルドなら南側だぞ」


 先頭のガシャと言う男の脇から出て来た男がにやついた顔をしながら槍で南側を指す。

 そんで後ろの連中もガシャ以下みんな判で押したように同じ顔をしてる。


「ありがとうございます。でも私たちはこのソウゴさんに連れられて来たので」


 そんなモブキャラとその親玉の前にセブンスが乗り出し、深々と頭を下げた。



 俺らが言うのもなんだがセブンスは修羅場をくぐっているはずなのに清楚で、血の匂いを感じさせない。おまけに相変わらず勤勉で、今日の朝も疲れているはずなのに部屋の掃除までしていた。

 そんなセブンスがこれまでの旅で他の男に誘われた事は、実は一度もない。赤井やオユキはセブンスが俺の女だと認識されているからと言ってるが、俺にはそんな自覚はない。


 と言うか、この兵士たちの目は本当によくわかる。俺がいようがいまいが、やる事は何も変わらなさそうって目。


「なんだよお嬢さん、ちょっと俺らと一緒に町巡りしない?」



 で、まったく予想通りのセリフを吐くガシャ。




 そんでよく見れば連中、大川やトロベ、オユキや倫子にも目を付けてやがる。

「後ろの大柄な女いいよな強そうで」

「俺は女騎士様だね」

「あの色白な子のがいいだろ」

「ワーウルフって良くないか?」

 俺から見ても実に下品だ。



「私たちはソウギさんに案内されているんです。他を当たってください」



 言葉は機械的だし目も口調も笑っていない。まったくの塩対応だ。



「いやいやお嬢さん、ソウギってのは悪いけど日和見主義でな、弱い奴には威張るくせに目上の奴にはへこへこする男だぜ?そんなのほっといて」

「否定はせんが、こっちは執政官様の命なのだぞ」

「ったく事あるごとに執政官様執政官様、ったく自分じゃ何もできないのか?」

「執政官様は王族だ、王族を敬って何が悪い」


 どっちもどっちと言えなくもないが、筋が通っているのはソウギさんだ。目の前の連中に比べとりあえずはまともそうな執政官様に味方したくもなる。


 それに俺自身、せっかくいい気分で町を巡っていたのにこんな事を言われて少しむかついた。


「セブンス」

「そうです、私にはこのユーイチさんがいるんです!」


 俺はセブンスもソウギさんも追い越し、行列の先頭に出てやった。



「ほぉ…………」


 ったく、その途端に飛んで来るガシャたちのぼっチート異能でも回避できねえような見下ろす視線の洪水。確実に値踏みしに来てるなこいつら……。



「ユーイチとか言ったな」

「ああそうですが。それより、ソウギさんの行き先の案内を邪魔しないでくれます」

「何だよ、生意気な小僧だな」

「一応Hランク冒険者ですけど」


 こうした連中には権威で押せばいいと思いもらったばかりの切り札を切ってやったが、全く反応に変化がない。相変わらず俺を見下ろし、口ばっかりでないかどうか確かめようとしている。


「いやいやいやいや、こっちだっていろいろ辛いんだよねえ。だからさ、ほんのちょっとでいいからさ、その彼女を少々だけでもご紹介してくれれば俺らも執政官様に諸手と上げて」


 回りくどいだけで言ってる事はまるで同じ。ここまで何も中身のねえことを言えるなんて逆に尊敬するね。




「るせえんだよ」




 逆に何と言えばいいんだよ。

 ただいきなり出くわして言いたい放題言いやがって。


 って言うかただのナンパごときにそんな執着するもんかね普通。恋愛経験値はゼロに近い俺でも、しつこい男は嫌われるってわかるんだぞ?


「百回吠える狼は一回吠える狼の百分の一の力しかねえんだよ」

「この野郎!」



 ほら、ついに手が出た。

「おいこら!」

 先頭にいた男がいきなり槍の先っぽを俺に向けて来た。ソウギさんの制止などまったく耳に入っていない。


「痛い思いしたくないんならさ、ケチな真似をおやめくださいって言ってるだけなんだよぉ?どうしてわからねえのかなあ!?」

「そういう押しつけがましい言い草って本当大嫌いなんだよね!とっとと帰ってくれ!」


 俺が刀も抜かずに歩み寄ると、その兵士様らしきお方は槍を俺の胸に向けて突き出して来た。

 確かに速い。ただその気になれば避けられなくもない速さだ。

「トロベのが速いっつーの」

 俺はぼっチート異能に頼らずに悠々と回避し、伸びきった腕に向けて軽く蹴りを入れてやった。


「ああお前!」

「先に手を出したのはどっちだって話だよ。こんな衆人環視の中でさ、証人は山といるんだぞ」



 蹴りの音が鳴り響くまでもなく、俺たちの事は多くの市民の目に入っていた。

 そんな集団にケンカを売ったのだから耳目を集めるのは当たり前であり、しかも負けたとあらばそれこそ面子などありゃしない。


「てめえシンミ王国の兵士に手を出したな!」

「だから俺はHランク冒険者だっつーの。Iランク以上は王様にも面会自由って聞いたけど」

「ちょっとやったぐらいでいい気になるんじゃねえぞ!」

「おいお前たちいい加減にしろ!」



 こんな所で大乱闘開幕かよ……ったく!

作者「ゲームは買い切りに限るよね」

赤井「後付けDLCには手を出すのでありますな」

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