表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼっちを極めた結果、どんな攻撃からもぼっちです。  作者: ウィザード・T
第十二章 この女だけは許せねえ!
396/631

三田川恵梨香はまた泣く

作者「第二部はあと三話です」


「裕一!」




 最大級のヘイト・マジックを浴びた、俺の百人の分身が割り込む。




 三田川恵梨香に向かって刀を振りかざし、前後左右から攻撃をかける。



 三田川は体から波動を出すが、ぼっチート異能のせいで当たらない。



 もっとも俺の刀の腕も知れたもんであり有効打はひとつもないが、それでも百人の俺の攻撃に三田川も戸惑っている事だけは間違いない。


「ちょっと裕一!」

「河野、三田川に伝えてくれ!この村に大事なのは休息だと!」

「戦争から何年、経ってると、思ってるの!」


 三田川が息を切らしながら炎の魔法を放ち、両手の剣を振るう。

 三田川の攻撃の速度も切れ味も衰える事はないが、こっちも百本以上の刀が三田川に隙を与えまいと振られ続けている。




「裕一!危ないじゃないの!」

「俺の分身だ!構わずやってもいいぞ」


 だが、河野の手も止まってしまった。


 俺の分身たちが四方八方を囲んでいるせいか、スピード任せに隙も突けなくなってしまったのだろうか。


「分身だとしても!市村!」

「いや、三田川の目を覚まさせるために必要とあらば俺は行くぞ。セブンスには悪いと思うが」

「私は気にしていませんので」


 セブンスは気にしていないと言いながら、クレーターでやり合う二人を睨んでいた。


(三田川も河野も、同じクラスメイトだよな……それがどうしてこんな事に……)


 遠藤、剣崎、辺士名、みんなして仲は良くなかった。

 だがそれらと殺し合いまでする事になるとは思わなかった。「ぼっち陰キャ野郎」ぐらいの不快感で殺されていては心臓がいくつあっても足りゃしない。

 で三田川が倫子に対して抱いていた悪感情がもしこの行いを許すレベルだとしたら、親も教師も甘く見ていたと言う烙印を免れねえだろう。

 そして倫子を守った俺へ向けて、俺を守った倫子へ向けてのこのやり口。理解しろと言う方が無理だ。



「三田川……今のお前は引きこもりと大差ねえよ」

「私のどこが引きこもりだと!」

「自分が正しくて他の奴は全部間違ってる。だから自分は何をしてもいい。それで他人の言う事には絶対に耳を貸さない。お前はどんなに飛び回ってても自分の思想から一歩も出て来られねえじゃねえかよ」

「そうやって無駄口を叩いて!まーた怠けるのね!」



 無駄口を叩くな、だと!



「くだらねえギャグをやめろ」


 もう笑う気にもなれない。オユキのダジャレの方がよっぽどましだ。


「お前は人の話を聞く気がないって自ら大々的に宣言してどうするんだよ」

「怠け者の言葉なんか聞く必要はなし!黙って働けばいいだけ!」

「ソージローって人はそんなに怠け者だったか?」

「毎日毎日体力を回復させて食事も与えて来たのよ?そして村人に私が調べたかつてのブエド村の栄光の歴史を聞かせ、その夢を与え」

「糖尿病患者に毎日ハンバーガー十個とケーキワンホールを食わす奴がいるか」


 どこまでも自分のためだけの善意。自分のためだけの正義。


 それに従わない人間は全部悪。自分に従って失敗したらそれはそいつのせい。


「お前がやってるのはそういう事だよ。どうしてもって言うんならメンタルケアをちゃんとやり、あくまでも村人のペースに合わせるべきだったな」

「メンタルケア?みんなずいぶんとやわなのね」

「だから、あなたは自分以外の物差しを持ちなさいよ!」


 河野もここに来てついに動いた。


 俺たちが後方に回ったのを見て正面から突っ込み、また双剣で三田川を攻めた。


 三田川は俺たちから逃げるべく飛び退くが、すぐさま俺たちが追いにかかる。まだ百体以上残っている俺の分身たちが三田川に付き従い、一撃を加えんとしてくる。

 三田川より俺の分身たちの方が遅いから引き離されてはいるが、それ以上に河野が速い。


 河野が三田川を追跡し、釘付けにする。


 三田川はそれでも四方八方から飛ぶ攻撃に歯を食いしばり、百人の俺と河野の攻撃に耐えている。




「私たちは同じ光景を見て来たはずなのに……」

「正直、ミタガワってただの意地っ張りだよねー」


 だがセブンスもトロベも、俺と同じようにすっかり冷めている。




 そうなのだ。いつも俺の戦い方はこうなのだ。


 ヘイト・マジックで多くの敵をかき集め、ぼっチート異能で攻撃をかわす。そしてその間に俺や仲間たちが攻撃して敵を討つ。

 その繰り返しだった。




 しかしいざ第三者になってみると、実に見苦しい。



 取っ付いてるのが絶対に攻撃の当たらない俺だって言うのもあるが、それ以上にミタガワの顔が辛い。

 まるで俺を何十回と狙っても当たらなかった、たくさんの敵のように苦しんでいる。


 だが同情心は湧かない。


 ソージローさんの事もさることながら、それ以上に顔がブサイクだ。



 いたずらに光り輝く目。

 そして同じくやたらと白く輝く歯。

 やっぱり玉のように輝く汗。



 その全てが、本来の目鼻立ちをむやみやたらに強調している。


 美人であるがゆえにブサイクであり、自分がどこまで努力しているか見せてやろうと言う下心がありありと見えている。




 ああ、醜い!



「うぐぐ……!」


 そしてついに、疲れ切った三田川に俺の分身たちが有効打を当て始めた。

「ああもう!!」

 三田川は上空へと逃げ、河野の追撃をかわしながらますますブサイクに口を大きく開け、水魔法をクレーターに叩きつけまた吠えた。




「もういいわよ!!このぐうたら怠け者軍団!後であの時努力しておけばよかったなとか後悔しても絶対に助けてやらないんだからー!バカバカバカバカー!!この怠惰貪りバカー!!」

「待ちなさい!」




 小学一年生のように泣きわめきながら飛び去る三田川恵梨香と、それを追いに行った河野速美。


「……魔物は?」

「とうの昔に全滅したであります……」


 二人がいなくなった下では、あのエクシスとか言うケンタウロスも含め、すべての魔物が俺らとミタガワと河野により討ち取られていた。


 クレーターは三田川の魔法によって池となり、多くの魔物の死体を飲み込みながら、いや深さ1メートルもない池では飲み込まれた死体は多くなく、大半が戦いの跡を示すかのように中途半端に浮いているだけだった。


 その上で当然の如く青く染まり、血の臭いを含んでいる。




 これがもし戦果だとしたら、本当に戦争ってのは無意味なもんだよな……。

上田「大晦日の更新は?」

作者「やめた。三が日もお休み。とりあえず箱根駅伝だよ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ