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ぼっちを極めた結果、どんな攻撃からもぼっちです。  作者: ウィザード・T
第十二章 この女だけは許せねえ!
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戦いの意味

「…………何よ!何よ!何よ!」


 ミタガワは二本目の剣を作りだし、自分が作った火の玉を突き抜けた河野に斬りかかる。




 火の玉を叩き壊した結果四散、爆発したエネルギーはバラバラの個体となり、途中から制御をあきらめた三田川のせいで火の玉の雨となって降り注いでいる。




 自然現象と言うか、もはや完全な天災だ。




「ユーイチさんたちが!」

「こんな目的のない攻撃が一番厄介であります!」




 俺の分身たちも次々と打撃を受けている。すぐさま感覚をぶった切ったが、視覚で捉える事になってしまう俺の死に様はどうにも目に悪い。

 洪水にも、地震にも、悪意はない。ただ自然現象として存在し、勝手に住んでいる人間を勝手に巻き込む。人間にできるのはその被害を少なくすることだけ。

(これがもし望み通りだって言うんなら、相当気合いを入れて俺に諦めさせようとしてるよなぁ!)

 抗いがたい力を持って全てを従わせ、自分の思い通りにするだなんて、それこそ英雄か神様のやる事じゃないか。しかもこの意志の強さ。ますます英雄とか神様の類じみてるじゃねえか。



「ただの人間の言う事は聞けねえのかよ!」

「私はただの人間よ!」

「お互い様と言えばそれまでだが、お前のやってる事はただの人間じゃねえよ!ただの人間が太陽を作る事ができるのか!」

「だーかーらー、私はただ怠けるのをやめろって言ってるだけ!!」

「そのためだけに草木を焼いて、大地をわざわざ荒廃させるのか!」


 まったく厭らしいことに、魔物や俺の分身は燃えていてもさっき三田川の建てた小屋を含め建物はひとつも燃えていない。


 最後の制御として、当たってもいい所へと落としたんだろう。


「お前のやってる事は確実にただの人間じゃねえ、この世界でも!」

「転生転生って、デブオタやあのラノベ女がチヤホヤチヤホヤしてる本のような世界なんてどこにもないの!転生って言ったってね、所詮は生前の遺徳ありきなのよ!努力を積んでいた人間がいい思いをするのは当たり前だっての!」

「遠藤や辺士名はそんなに罪が重かったのかよ!そんで俺はそんなに努力した覚えはないぞ!」


 燃える大地をオユキが必死に鎮める。炎に氷が当たり、白い煙が立ち込める。

 もしぼっチート異能が努力の成果だった言うんなら努力をしたいだろうか。確かに災難から遠ざかるのはありがたいが、俺個人に向けられたそれでない限り無意味ってのは便利なようで不便である。




「奇跡に理をもって当たるは熊に釣り竿をもって当たるがごとし」

「だよなあ……」

 

 トロベがこぼした聖書の一節の通り、奇跡なんてのは説明できないから奇跡だ。努力して得られるのはただのアビリティであり、技術でしかない。

 地球が地球になったのは地球が努力したからだって言うのか?太陽が努力したからか?


「何が奇跡よ!私は奇跡など信じない!奇跡は起きないから奇跡なの!」

「ならば女神様の!」

「それは女神様の力であって人間の力じゃない!私は人間として努力して目一杯の事をするだけ!」

「女神様の力は人智を越えている!その人智を越えた力を私たちは奇跡と呼ぶだけの事!」

「私はただの人間よ!」


 ミタガワが地面に向けて突っ込んで来た。

 自らに炎魔法をかけたかのように真っ赤に燃え上がり、その上で追跡しながら攻撃をかける河野に応戦するかのように剣を合わせる。



「イカン、ニゲロ!!」



 スケルトンたちさえも背中を向け出すが、あまりにも遅すぎた。




「あ、ああ……!」

「こんな、こんな……!」




 ソーゴも、俺達も、何も言えなくなった。




 ミタガワが地面に着地するや先ほどの火の玉の雨とも違う強烈な波動が地面に流れ、その波動に巻き込まれた魔物と、俺の分身がほとんど全滅同然に消えた。


 残ったのは、わずかな分身の俺と、ミタガワと、追いかけて来た河野と、半径数十メートルはありそうなクレーターだけ。




「三田川恵梨香!自分が何やったかわかってるの!」

「わかってるわよ!これこそこの村の住民の怠惰の!」

「怠惰とか勤勉とか、そんな言葉に逃げるんじゃないわよ!」

「あんたこそぐうたらを正当化しないでよ!」

「何よ人様の事が見えないこのうぬぼれ屋!」

「何よ才能の浪費家!」


 そして二人して剣を合わせ時には魔法も放ち、さらにクレーターを深く広くして行く。




「…………セブンス」

「はい」




 俺の右肩に置かれた手から、力が込められて行く。




 残っていた魔力のほとんどを注ぎ込み、俺の体を赤く光らせる。







「裕一!」







 そしてその赤い体をした俺は、二人の戦いの中に突っ込んでいく。







 いや、俺たちが。

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