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ぼっちを極めた結果、どんな攻撃からもぼっちです。  作者: ウィザード・T
第十二章 この女だけは許せねえ!
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魔王にもない力

作者「メリークリスマス!」

上田「31日まで更新するの?」

作者「……ノーコメント」

 河野速美の剣が、三田川恵梨香を襲っている。


「何よ!なんで邪魔するのよ!」

「邪魔も何も、裕一に何をするのよ!」

「何をするって、そりゃもちろん怠惰を戒めているだけでしょ!」

「死んだら勤勉も怠惰もないと思うけど!」



 三田川があわてて剣を作り、河野と打ち合い出した。



 すさまじいまでの音が鳴り響き、俺たちはあっさりと蚊帳の外に置かれる。



「河野!あんたも今すぐこの村の復興を手伝いなさい!」

「サンタンセンをぶっ壊しておいてその言い草?」

「あんな簒奪者の建物なんか壊れて当然!だいたい空虚な自慢ばっかりして肝心要の山賊退治を怠るような奴に一体何の価値があったの!」

「それを動かす役目を放棄して一体何のつもり!」



 河野が優勢だ。


 単純に速い。

 ただそれだけなのだが、それだけで三田川を押している。




「河野さん……」

「まったく神出鬼没な!」


 河野との共闘はこれで四度目だ。



 昔からあいつは何かあるとやって来て、悩みが解決したと知るや去って行く。


 幼稚園時代には授業中におしっこが漏れそうになったと思ったらいつの間にか小便器の前にいて、気が付くと後ろに河野がいた。男女共用なのをいい事にずっと終わるまで待ち、そして手を洗って拭いたのを見るやまたサッと元の場所に戻っている。

 そんな俺にも説明できない現象のせいでいろいろ言われたりもしたが、小学生になってからはぼっちが染み付いたせいかすっかりなくなった。


「コーノさんはまるでユーイチさんの助けを待っているかのように」

「俺に聞かれてもな、と言うかシギョナツの俺はそんなに困ってたか」

「私はユーイチさんからコーノさんの話をたくさん聞きました。それでコーノさんのやる事があまりにも都合よく行き過ぎている気がしたのです」

「都合よくか……確かにこの世界でも俺らの世界でも、河野は実に見事なタイミングで動いている。それがもし怪しいとか言うんならば、河野はこの世界に来て初めてチート異能を身に付けたって訳じゃない事になる」


 チート異能ってのは、現実にありえないからチート異能だ。


 一日に何十時間単位の勉強をしなければ追い付けないような事を平気でやってのける三田川恵梨香に、なぜか元の世界でも嫌な事とは無縁だった俺。

 リアルでチート異能じゃねえかってぐらいのポテンシャルを持った人間は確かにいるが、そんなもんがたかがひとつの高校の、ひとつのクラスに、三人も集まる訳がないだろう。


「ああもうこの怠け者ども!」

「それはどこの誰!」

「この村にいるすべての人間よ!かつての鉱業都市としての活気を取り戻そうとせずただただうずくまってばかりの!」

「あなたは一体何時間勉強して来たの!」

「五時間よ、一日!!それを毎日!」



 三田川はまた叫ぶ。大噓と言うには説得力がありすぎる、必死な訴えかけと共に、光が放たれる。


 ミタガワの全身からあふれ出た光は空をむやみに明るく照らし、四方八方に光線となって飛び散り、降り注ぐ。




「光が……いや、光に……!」




 ミタガワの、いや三田川恵梨香の嘆きを純粋に示すようにまっすぐに、そして力強く伸びた光線は、次々とその必要のない犠牲者を増やす。


 おそらく河野を狙ったはずの魔法は俺たちも魔物たちも巻き込み、文字通り光に変えた。

 かろうじて竜騎士だけは命を保っていたが、もはや戦闘能力はない。


 生きているのは、たまたま外れただけに過ぎない。



 市村をして動けなくなるほどに強烈なインパクト。


 SFでもなんでもない、間違いなく現実に存在する光景。ファンタジー世界ですら想像しえない死に方で消えて行く俺たち。


 骨すら残らない状態で消えた魂がどこへ行くのか。




 そんな下でも倫子は元気よく駆けずり回りながら敵を引き裂き、俺の分身と市村は魔物たちを数で押し潰し、赤井は浄化魔法でスケルトンを成仏させ、トロベは丁重に敵を討ち取っている。

 大川はトロベに得物を弾き飛ばされた戦士スケルトンをつかみ、また投げ飛ばしていた。


「みんなすごいな、そんな中で俺だけ……」

「気にする必要はないよ、私だってほら!」


 オユキは少し離れ、魔法防御力のないバッドコボルドとかに氷の矢を投げつけている。

 スケルトンに受け止められる事はあるが、それでもスケルトン以外の魔物に当たれば十分な打撃になっている。


「なあオユキ……お前人間と魔物に一日の差ってあると思うか?」

「ないと思うよ。ぶっちゃけライドーさんと会うまで親しい人間はいなかったし、ライドーさんはすでにおじいちゃんだったからよくわかんないんだよね」

「俺たちは一年間ひとつの授業でノートを使っても二冊だ。まあだいたい二百時間ほどの中でな。一晩でノート十冊となると、あいつの一晩は千時間って事になる」

「何それ怖い」


 人間にも魔物にも経験しえない時間を大事なことに費やし、偉くなったつもりなのかもしれない。


 だけどその結果の成果がもしこれだとしたら、千時間の内九百九十九時間ぐらい寝ていた方がましだ。




 だって、河野に押されているんだから。

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