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ぼっちを極めた結果、どんな攻撃からもぼっちです。  作者: ウィザード・T
第十二章 この女だけは許せねえ!
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魔物軍の狙いは

 かつてこのブエド村を襲った魔物の大軍。

 鉱山と鉱業によりロッド国の中核となっていた工業都市を、魔物の大軍が襲った。

 鉱業都市だけにロッド国の騎士団とかでも愛用されていた武器をたくさん作っていた。

 ロッド国の何とかと言う将軍もまたブエド村製の刀剣で多大な戦果を挙げ、現在でもロッド国の王都に匹敵する大都市の名前になっていると言う。

 しかも品行方正で公正無私だったのでシンミ王国人にも評価されており、ロッド国からキミカ王国に渡った今でもその彼の名前が付いたままらしい。

 ちなみにその英雄はブエド村北西の女神の砦から千匹の魔物を斬り殺して魔王とも戦い、魔王の腕を斬り落として散ったと言われている。


 それはさておき、ロッド国とシンミ王国の戦争においてこのブエド村は大変に繁栄した。この荒野一帯が工房であり、その工房では槌の音が絶えず鳴り響き、ブエド村の子の音楽は槌の音から生まれるとまで言われたそうだ。

 だがその武器をもってシンミ王国を本城一歩手前まで追い詰めていた所に、魔王軍がこのブエド村に攻撃をかけて来た。


 当初は服属要求であったが、戦勝続きで勢いに乗っていたロッド国は拒否。

 言うまでもなくシンミ王国を服属させた後は魔王軍と戦う気であったからだが、これにより魔王軍は態度を硬化させ、一挙に大軍をもってブエド村に攻めかかった。


 魔物の正確な数はわからないが、ロッド国軍の数倍とも十倍とも言われているらしい。

 もちろんロッド国軍も抵抗しようとしたがかなわず、村中が火に包まれ、悲鳴が絶えず、抵抗した者は老若男女問わずことごとく殺され、逃げ延びた者は人口の十分の一程度。魔物軍の犠牲はロッド国軍の数分の一。

 もちろんロッド国も最重要地点としてかなりの軍勢を置いていたために物的損害もさることながら人的損害も大きく、ロッド国の国情は一気に傾いた。

 そしてその後も残った鉱石を求めてのたびたびの出兵により村は完全に破壊され、またシンミ王国の逆襲により本城を落とすどころか王都を失ったロッド国は事実上の分裂状態を受け入れて生きる事を余儀なくされた。


 今やこのブエド村は南北のロッド国をつなぐ道でしかなく、道としてもまともに使われていない。戦争から十年経つはずなのにだ。







 ソーゴと言う少女の心の梁を叩き折った、悪夢。


 ――――それはブエド村を滅ぼしたも同然の、悪夢の再来。




「千、いや千五百……!!」


 この大軍は、人間同士の内輪もめであるロッド国とキミカ王国の戦争の時、魔王軍がこのブエド村を滅ぼした出兵の再現だって言うのか!

「ミタガワー!」

「私に言われても困るのよ、あんたらが屁理屈をこねて働かないから!」

 俺らには重大な責任がある。止めなければいけない。


 だがぼっチート異能があると言っても、かつてこの村を焦土と化した魔王軍の攻撃に、俺たちは耐えきれるのか。

 そしてまったく聞く耳を持たないミタガワ。


 いや、ミタガワなどもういい。



 俺にはこの戦いを終える責任がある。




「ったく、最強の俺だけでいいのに出て来やがって!」

「ネンニハネンヲイレヨ!」

「コレハマオウサマノチカラヲシメス、ジュウヨウナタタカイ!」


 目の前には俺の大群と、相変わらずの突撃を繰り返すエクシスと、こっち狙いなのは変わらないがそれでも正確なフォーメーションを組んで来るスケルトン。


 そして、後続の魔物たち。


「この町に戦力は」

「ないよ!」

「持山、剣を」

「誰が使う?」


 俺たちの戦力は、分身魔法を除けば俺たち九人しかない。

 武器はあるが、使う人間はいない。分身魔法は武器も使えるので、余計な武器は必要ないのだ。


「しかしこの調子だともう柵はないのと一緒だな」

「となると人間の盾」

「ああ!」



 さらに百人の俺が、全身を開始する。スケルトンたちをすり抜けながら、ボロボロになった柵を塞ぎにかかる。


「ここは通さない!」

「村人は俺が守る!」

「ここは通さない!」

「村人は俺が守る!」


 柵の前で、目的のはっきりした俺たちが魔物に立ち向かう。

 スケルトンやコボルドだけじゃなく、タイガーナイトやリビングメイルまで混じっている軍勢に。



「この状況を目の前にして何もできないのが腹立たしいな」

「俺本人だって行きたいよ」


 大戦を目の前にして何もできない無力な自分に、誰だって腹が立つだろう。


 ましてやあの三田川が、我が物顔に振る舞えているのに。



「この怠け者が!」


 その名前で全てを支配し凌駕できると思い込み、火の玉を落とす女。



 また数十人の俺が犠牲になる。


「ギャー!」

「熱い……」

「ホネガ……ヤケル……」

「ミタガワ……!」


 いや、どうやら標的は俺だったらしい。

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