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ぼっちを極めた結果、どんな攻撃からもぼっちです。  作者: ウィザード・T
第十二章 この女だけは許せねえ!
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持山武夫

持山武夫「ボクの事を知りたい人は第三章のぼっち伝説Ⅳをご覧ください」

上田「それっていつだよ」

オユキ「私と出会った頃のお話だよね」

上田「第三章……って十一か月前かよ!!」

 持山武夫。「清掃委員会」に所属するクラスメイトの一人。


 もっとも清掃委員会と言っても学校の正式な委員会ではなく、同好会の一種だ。

 校内を回ってはゴミを好き勝手に片付け、そして床をきれいにして去って行く。

 それ以外の事は何もしない。

 奇妙と言えば奇妙だが、特に何かマイナスがある訳でもないので放っておかれている。そんな同好会の一員が、この持山だ。




「何やってるんだよ」

「ああ上田か。実は八村に出会ってさ」

「八村慎太郎か。あいつ何やってるんだ」

「そこで廃品回収のために品を持ち込んだら、思いのほか高値になってね。ゴーレムの石とか、妖精の服とか、建物の屋根の一部とか」

「お前も変なもんを拾ってんな」


 持山はさっき槍をしまった手元から、将棋の駒の形をした物を出した。ほとんどが剥げ落ちているがわずかに金色がのぞくその物体は、見た所勲章のようだ。


「こんな勲章どこで」

「キミカ王国だよ。どうやら滅んだ貴族のそれとか」

「それハチムラ商会で取り扱えなかったのか」

「国家に反逆してたそうでさ。そんなもんキミカ王国ではとても扱えないんだよ」


「何人の話を聞かないで雑談なんかしているの!」

「あ、ヤバい!走れ!」



 突然の来訪者と世間話をしていると、当然のように邪魔が入った。


 岩だ。

 持山があわてて逃げてくれたせいで当たる事はなかったが、こんな岩どっから出したんだか。


「おいミタガワ。なんでこんな事するんだ」

「あなたたちがサボるからでしょ!」

「サボるって!」

「持山……」

「持山関係ねえだろ。とっとと逃げろ持山」


 持山が物も言わずに北の方へと走り去って行くのを確認するや、ミタガワはまた攻撃を再開した。


「また金属かよ!」


 今度は槍じゃなく、鉄球。鉄球の雨が降り、俺たちを狙う。


 当然当たらないが、それでも地面は揺れ、穴が開く。


「こんなもん落としてどうするんだよ」

「もちろんこの金属を鋳つぶし、この町の栄耀栄華の糧とするためよ。あともちろんサボり屋を懲らしめるため」

「お前は遠藤が何を言ったかわかってるのか?さんざん潰す潰すって言っときながら、あわてて村のためだとか手のひらを返したんだぞ、遠藤が」


 俺は改めて、一つの事実を認識した。



 遠藤はもはや、三田川恵梨香の手駒でしかない。


 あのサンタンセンでの戦いの後、いやあるいはミーサンカジノでの戦いの後から赤井と市村ともケンカ別れし、完全に行き場を失っていた遠藤に、三田川は目を付けたのだろう。

(俺には恋愛の経験なんてねえ…………もしかするとセブンスが本物の初恋かもしれねえ…………)

 もしかすると遠藤は、ミーサンの事を未だに引きずっているのかもしれねえ。三田川がミーサンを蘇らせると約束したとか、あるいはミーサンそっくりの所を見せて取り込もうとしたか、どっちなのかはわからねえ。


「遠藤の事は知ってるよ、指名手配犯として」

「八村は何か」

「商会のみんなに万一の時はできるだけ生かしてくれって頼んでたけどね。ああ一応」


 八村も、商人の子だ。

 どんなに友人であろうと、あまりにも害をなす存在に対して容赦をする訳には行かないだろう。

 そのしたたかさこそ、あいつがただのボンボンでない証明だと思う。


 そして同時に、またもう一つの事実を証明している。



「お前のやり方をなぞった遠藤は、クラスメイトからも見捨てられたんだよ」



 そりゃ説得力って言葉はあるが、どんな人間が唱えようが理屈は理屈だ。


 先生が教える内容ってのは同じ教科書を使っている限り基本的に同じである。1+1の答えが先生によって2だったり3だったりするわけあるかいって話だ。

 だからその理屈が根本的に間違っている場合、誰が言っても受け入れられない。

 もっともその根本的な間違いってのがなかなか存在しない以上ややこしいのだが、だとしても遠藤と言うか三田川のやり方が受け入れられない事はもうみんなわかり切っている。


 単に操り人形だからとか、あまりにも速い手のひら返しとか、遠藤自身に問題があっただけでもないのだ。



「そう、結局は屁理屈をこねて怠けたいだけなのね……よーくわかったわ」



 全然わかってないミタガワエリカのせいで、また暗くなった。


「そういう所も遠藤と一緒だよ、その意味が何でわからないのか!」

「グチグチ言ってないで働けばいいの!」



 で、結局は暴力に訴える事を決めたミタガワエリカはまた魔法攻撃を始めた。




「竜巻でも起こすのか!」

「そうよ、私自らやるのよ!」



 今度は風だ。

 風が渦を巻き、天から舞い降りて来る。全てをなぎ倒しそうなほどの風だが、やけに規模が小さい。


 まるで、どこか一ヵ所を狙っているようだ。



「ちょっとセブンス!」

「大丈夫です!竜巻に突っ込み、そして自分たちを狙わせるのです!」



 セブンスの声に伴い、八十人の俺が降りて来た竜巻に向けて突っ込む。

 その通り。

狙いは俺か、村人たち。


「そこまでしてやらせる気か……!」


 手を休めればすべて吹き飛ばすとでもいうのか!ミタガワ…………!


 村人たちは相変わらず死んだ魚の目でじっとしているらしい。無理やり動かしても何も意味のない存在に何をさせる気なのか、まったく賢者の肩書が聞いてあきれる。



 その間にも竜巻が降りて来た。


荒野に立った風が全てを飲み込もうとしている。




「行くのです!」



 竜巻に向けて、俺たちが突っ込む。もちろん攻撃など通らないが、こうしていれば注意を向ける事ができるはずだ。


「いざ!」


 降りて来た風と、俺たちが接触する。


 竜巻はさっきの爆風のように俺たちをすり抜け、あちこちに飛び散り、あるいはその形さえも失うかもしれない。そうなればしてやったりだ。







「……えっ!?」

「そんなバカな!」

「ぼっチート異能が……!」







 なんてことだ……!なんてことだ……!







 俺が竜巻に巻き込まれて宙を舞い、悲鳴を上げている!







 俺が、消えて行く……!

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