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ぼっちを極めた結果、どんな攻撃からもぼっちです。  作者: ウィザード・T
第十二章 この女だけは許せねえ!
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カツラが招く女

「魔力解析できるか?」

「無理であります、相当に高度なプログラムでありますゆえ…………」


 残されたカツラに仕掛けられた、非常脱出用と思われる魔法。

 そして、能力増強用と思われる魔法。




 その二つが入っている事は、俺でもわかっていた。




「これを作ったのは」

「ああ…………」


 MPゼロの遠藤に、こんなもんを作る技術はない。しかしずいぶんと肌触りの良い上物だ。


「しかしこの糸もかなりの上物だ。サンタンセン産かもしれぬ」

「サンタンセンだなんて、それこそもっとも立ち入れない場所だろ」

「サンタンセン?」

「この村の遥か北にある織物の町だ」



 サンタンセンの町は少なからぬ打撃を受けている。一応俺たちがそれなりに復興の真似事もしてみたが、いかんせん今上物な繊維を入手するのは難しい。

 ましてやこんな二つの国を通過しなきゃいけないような、ソーゴを含め村の人間の誰もが場所を知らなさそうな町のもんが入って来る事はない。


「じゃあやっぱり!」

「ああ……あのエンドーコータローは……」


 皆まで言う必要もないとばかりに俺が言葉を飲み込むと、ソーゴが震えて泣き出しそうになった。

「大丈夫大丈夫、このユーイチさんが守ってくれるから」

「お願いします、お願いします……」

 いや、セブンスに抱かれるとすぐに泣き出した。

 まったく、居もしないのに他人を脅えさせるなんて、本当に呆れた女だ。


「あの……それで……今の……」

「エンドーコータローでありますか」

「あの人はやっぱり皆さんの、お友達なんですか……」


 俺ら五人とも何も言えなかった。

 本来なら親しいはずの同じ運動系部活の俺はぼっちだし、平林はそれどころじゃなかった。そんで赤井のみならず市村にも、軟弱だとか何とか言ってケンカを売っていたのが遠藤だった。


「あれが私たちの仲間だとは思いたくない、思いたくないけど事実よ」

 で、大川も冷たいもんだ。




 そう言えば前に、柔道の対外試合の前に神林が勝利のために一曲歌おうかとか言った時に大川が口を曲げる前に、遠藤が突っかかって来た。

「ったく、お前はあのデブオタに媚でも売ってろ。運動部の応援は運動部がするもんだ」

「でも同じクラスだし」

「ったく、あんな勉強とオタ知識しか取り柄のねえ奴の何がいいのかね。っつーかどうしてかな、あんな貧乏劇団員まっしぐら男が」

 遠藤は赤井だけじゃなく市村にもケンカを売っている。体育部にあらずんば人にあらずと言わんばかりの言い草だが、大川もその時はノーリアクションだった。

 それほどまで赤井と取り巻きを嫌い、遠藤を好いていたのだ。




「遠藤はおそらく、未だに忘れられねえのかもしれねえ。あのミーサンの事を」

「死してなお囚われるほどの力の持ち主とも思えませんけど」

「己の塵芥は他者の財宝かもしれぬと思え、と言うであります……」

 

 手垢がついた聖書を開く赤井の顔は沈鬱だった。


 ミーサンが遠藤に何をしたのか。俺たちにはわからない。

 右も左もわからない世界のイロハを教えてくれたからなのか。


「ソーゴ……あまり振り向くなよ。過去にしがみ付くとあのエンドーコータローのようになるぞ……」

「わかった……」


 本人のいない所でこんな陰口そのものの言い草をかます俺は卑怯かもしれない。

 だがそれが卑怯だと言うのであるのならば、卑怯者上等である。



「しかし、本番はこれからでありましょう」

「本番って」


 赤井が聖書を閉じると、村にどこか聖なる感じの音が鳴り響き、少しだけ場が和やかになる。コスプレとも言われそうな僧侶が本物に見えて来るんだから、慣れと経験と実績の三拍子って大事だな本当。


「やはりあいつは」

「おそらく、ミタガワエリカの手先……」




 ミタガワエリカ。




 覚悟はしていただろうとは言えその名前を出されたソーゴは青い顔で背を伸ばし、今度は大川に抱えられた。



「ミタガワエリカって、あのミタガワ、」

「紛れもなくミタガワエリカだ、今のエンドーコータローはミタガワの部下だ……」



 部下。本当に優しい優しい市村のおかげで、手下とか下僕とか捨て駒でないだけましな言い方だ。


 だいたい、今のエンドーコータローは賞金首と言う名の指名手配犯だ。堂々と日の当たる所を歩けるような身じゃない。それが今こうしているのは、誰か強力なパトロンがいるからに決まっており、ましてやここまでの魔法を施す存在などほとんどいない。



「もしかしてミタガワって人こそ魔王じゃないんですか」

「魔王の方がまだ可愛げがある。サンタンセンやここで何をやったか忘れたのか」

「でも魔王軍は」

「魔王軍はこれまで見る限りもう少し戦略的だ。この村を襲ったのもまた鉱山目当てに過ぎないだろう」


 俺はセブンスをたしなめる。


 ロッド国とシンミ王国の戦争と言う隙を突き、鉱石をせしめ領国を得ようとした。

 火事場泥棒そのものであるが、目的ははっきりしている。戦争なんてそんなもんだし、これまで戦って来た魔物たちも街道封鎖や若殿様を洗脳しての事実上の国乗っ取りなどなかなかに巧みな手を打っていた。



 だが、ミタガワエリカは違う。



 どうしてここに住み着いたのかはさておき、この前彼女がやった事は全く村の内情を無視した一方的な善意の押し付けであり、ただの酔っぱらいでしかない。







「で、そのミタガワは」

「来ます!」




 そして、さっきまでソーゴにぬくもりと安らぎを与えていたセブンスが、今は恐怖を与えていた。


「とんでもない魔力が迫って来るのか!」

「はい!」


 セブンスの魔力関知の魔法に、とんでもない存在が引っかかったらしい。

「魔王軍ですよね!そうですよね!」

「早く逃げてください!」

「でも……って何これ!」


 少女のいたいけな願望は、地震と共に本当にあっけなく破られた。


「地震魔法?」

「おそらくは……だがそれも実用性の低く用いられて来なかった魔法だ、この村の十分の一以下の範囲をわずかに揺らすだけの!」


 日本人が日本人なりに直立して武器を構える中、トロベとオユキはややふらつきながらも得物を構えた。




「来ました!」




 セブンスの声に合わせるかのようセーラー服————ではなく、黒いシャツに黒いロングスカートを身にまとった女がやって来た。




「まったく、どうしてみんな怠けてるの?」




 間違えようのない、この太く、低く、それでいて軽い声。




「ミタガワエリカ……!!」

上田「こんなマヌケなサブタイトルでこんな展開かよ」

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