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ぼっちを極めた結果、どんな攻撃からもぼっちです。  作者: ウィザード・T
第十二章 この女だけは許せねえ!
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指輪だけとは限らない?

上田「前回に続いて危ねえなおい……」

作者「危ないの意味がだいぶ違うけど」

「遠藤君…………!」


 赤井の悲痛な声が飛ぶ。



 ななめ45度にターンして俺へと向かって来た遠藤。




 その前に狙いとしていたのは俺でも赤井でもなく、おそらくは…………。




「上田!」

「お前は一体何をしようとしてたんだ!」

「だからこの村の人間をお前らの手で!」

「だからこの村の人間はしばらく休ませろって言ってるんだよ!彼らを立て直すのは時間でしかねえ!」




 強引にでもやる気のない村人を動かす方法————それは飯か、金か、命かだろう。


 飯と金は同じとも言えるが、その上にミタガワは尊厳まで奪いにかかった。

 相手の事をびた一文考えないパフォーマンスを叩き付け、その上でできないのかと上から目線極まる慈愛を投げつける。そしてオーバーフローにも構う事なく注ぎ込み続け、飲み込めないとなるとコップを叩き割って、なんて小さなコップなんでしょうって泣きわめくその有様と来たら醜いことこの上ねえ。


「てめえ、やっぱりソーゴを人質に!」

「黙れ!」

「それはイエスって事でいいんだな!」

「一番手っ取り早い方法をだな!」


 数と速度とチート異能だけが取り柄の連続パンチをかわしながら、俺はさっきと同じように胸を押す。

 動かない。確かに固くなってはいる。


「どうだどうだ、この力を得た俺は無敵だ!無敵なんだよ!」

「馬鹿馬鹿しい!てめえのやってる事が山賊や強盗とどう違うんだよ!」

「何だと、一から説明してみろ!」

「お前は人質を取って動けと言ってるだけでしかねえだろ!ノーヒン市のゴッシたちはトードー国の人間を誘拐しておいて金を寄こせって言ってたんだよ!その意味が分からねえのか!」


 俺は刀を抜かない。抜けば折られるかもしれないからだ。抜かないでパンチやローキックなどで――期せずして遠藤と同じやり方で――立ち向かう。



「大丈夫なの……」

「大丈夫です!ユーイチさんは強いんですから!」


 ターゲットにされていたソーゴが、先ほど魔法を放ったセブンスの後ろで震えているのがわかる。

 まったく、祖父孫そろってなぜ無駄に可哀想な思いをしなきゃならねえのか!


「でもユーイチさんって人が!」

「大丈夫ですよ、ユーイチさんを傷つけようとする攻撃は一つも当たらないんですから、ほらちゃんと目を見開いて見てください!」


 セブンスがはしゃぎまわる中、オユキが氷の剣を構えている。

「いざとなったら秘策があるからね!」

 オユキの能天気な声がほんの少しだけ空気を温かくする。その秘策が何なのかさておき、実に余裕しゃくしゃくと言った風情だ。




(機械的だ、実に機械的だ)


 それに対し遠藤と来たら、まったく内容のある事を言わずに拳を振るうばかり。


「この!」

「喰らえ!」

 とかならまだいい。


「俺こそお前たちを導けるんだよ!」

「この村のために、世界のために!俺はお前たちを!」


 上から目線極まる言い草を垂れ流し、従え従えと迫って来る。


「そんな力でどうやって勝つ気だよ」

「ただ参ったと言えばいいんだ、それが一番平和的だろ!」

「お前の唱える平和ってのはただの屈従だよ、奴隷契約だよ」

「うるせえこの陰キャ野郎!」


 冷めきった言い草にさらにムカついたのか攻撃が激しくなるが、何十発放とうが一発たりともかすらない。

 もうヘイト・マジックとか以前に、こうしているだけで相手を挑発できるのだとしたら我ながらとんだ才能だ。



「あのさ、俺こんな事したくないんだけどさ……」

「何余裕ぶって手足を動かさねえでいるんだよ!お前はそれでも陸上部員か!」

「じゃあほらよ」


 俺は、蹴った。




 男の最大の急所に、右足の裏をぶつけた。


「うっ……」


 防御力がいくらあろうと、ここだけは痛いのは変わらないらしい。


 遠藤の体勢が崩れ、両手が止まる。



 俺はもう一方の足を、同じ箇所にぶつける。



「上田君………………」

「ほぼ無言である事が恐ろしいな」


 本当に怒りが溜まっていると、人間ってのは無言になるらしい。


 クラスメイトとしてそれなりの敬意をもっていたはずの存在に向かって、俺は最大級の尊厳を脅かす真似をやっている。


 振り向くと赤井と市村が男として不安を覚えているのか少し内股になっている一方で、トロベは薄く笑っていた。

「アカイ殿、イチムラ殿、男はそこを責められると弱いのは変わらぬと父上や兄上、さらに旅先でも聞いている。ちなみに女子でもかなり痛いそうだ」

 大川と倫子が口を開ける中、セブンスとソーゴは割と平気そうだ。この辺りはやはり世界の違いを感じざるを得ない。

 と言うかソーゴと来たらセブンスと共に髪の毛を撫で合ってる。


「ほら、ユーイチさんは本当にすごいでしょ」

「お姉ちゃん、私」

「いいんですよ、ユーイチさんは許してくれますから」




 で、オユキはと言うと。




「スキあり!」




 ただ一人いつものように、氷の剣でエンドーコータローに斬りかかっていた。


 鋭いだけはずの氷の剣がエンドーの左肩に刺さり、股間への連続攻撃でうずくまりそうになっていたエンドーが大きく吹っ飛んで仰向け大の字になった。



「ウエダ……」

「ありがとよ……」


 まったくくだらない喧嘩を終わらせてくれたのに礼を言っていると、また消えた。




「ああ……やっぱりそういう事かよ」



 ヅラ。と言うか、魔法製の毛。



 まあ端的に言えば能力を上げるためのアクセサリー。



「ずいぶん自然に隠したもんだよな、あの女……」



 こんなもんを仕込める、と言うか仕込もうとするやつは一人しかいない。



 そう、あの女だ。

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