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ぼっちを極めた結果、どんな攻撃からもぼっちです。  作者: ウィザード・T
第二章 冒険者デビューしてみた
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山賊との戦い

「五〇〇本以上の剣ですか……」



 ものすごい量のコボルドの剣が、荷馬車に乗せられている。決して長くはない山道だけど、それでもなかなかに険しい。


 で、俺らが受け取った買い取り価格がおよそ金貨二十五枚、あとギルドの取り分が金貨十枚、そしてこの商人様の取り分がやはり金貨十枚。


「これでおよそ三〇〇〇枚の銀貨と三十万枚の銅貨できるそうだ」

「にしても、俺の知ってる銅貨とほとんど価値が同じだなんてな」

「あれは純粋な銅貨なのでありましょうか」



 赤井が言うには俺の知ってる銅貨とこの世界の銅貨の価値はほぼ同じで、そして銅貨一〇〇枚が銀貨一枚、銀貨一〇〇枚が金貨一枚らしい。


 俺の主食となっている朝飯用のパン一個の値段が、だいたい銅貨十五~二十枚らしい。ミルミル村のような農村では少し安いが、都会だと少し高くなるようだ。実際、ミルミル村で食べそれと同じ大きさのパンに、俺は十八枚の銅貨を払った。


「しかしさ、魔物の武器を加工して貨幣を作るだなんて危なくないのかね」

「ユーイチお兄ちゃん何にも知らないの?私たちはずっと、あのコボルドの剣を加工してお金を作って来たんだよ。それでも金だけはなかなか取れないから、一部では金貨一枚と銀貨五〇〇枚を取り換えてる所もあるんだよね」

「ぼったくりじゃねえかよ」

「ヒトカズ大陸はすっごく広いんだから、金貨が比較的安く手に入る所へ持ってって、それで高く売ってもうけちゃう人もいるんだから」



 それが堂々と行われる程度にはこの世界は殺伐としており、そして同時にみんなたくましく生きてるって事なんだろう。モモミは荷馬車の中でずいぶんと嬉しそうに俺に向かってしゃべって来る。覚えたての事をいろいろ自慢したいんだろう。それをしたがる程度に彼女は幼く、そして俺に気を許している。


「ハンドレさんは今もお城にいるのでありますか?」

「そうだよ、パパはお城でパパのお友だちのお店を何とかしてほしいって。私もその店行きたいのになー」

「ダメであります!あれはうかつに手を出すと身を滅ぼす物であります!これは別に宗教的見地で言っている訳ではないのであります!」

「でありますお兄ちゃんこわいー」


 赤井が少しだけ引き締まった膨れ顔で怒鳴ると、モモミは面白半分におののく。うかつに手を出すと滅ぶ店ってなんだよと思い、すぐさまその正体に当たりが付いた。


 なんだよ、この世界にもそういうプレイスポットってあるんだな、って言うかそんな事業堂々と王様に相談していいのか?あるいは国営のとか…………







「その金のなる木もらったぜ!」


 とか余計な事を考えていると、さっそくお目当ての連中がおいでなすった。そのために俺らがいるんだとばかりに、山道からいかにもな山賊が出て来た。


「もういい加減にしてくださいであります」

「金が欲しけりゃ自分らでコボルド狩って来いっつーの!」

「おっ?なんだ新米がいるじゃねえか、野郎ども、パラディンと坊主なんかほっといてあいつから片付けてやれ!」


 剣やらこん棒やら槍やら、いろんな得物を持った奴らが荷馬車めがけて飛び込んでくる。


 とりあえず赤井は控え、市村と俺は堂々と斬り込む。

「いいか、山賊ってのはどこから出るかわからないからあまり突っ込むな」

 とか市村は言ってるけど、それでも俺はせっかくこうしてねじ込んでもらった以上引っ込んでいるなどできる訳もない。




「最近てめえらのせいで仕事がやりにくくてかなわねえんだよ、この黒い悪魔どもめ!」

「おおそうかよ!」


 黒い悪魔か、ったく二人ともずいぶんと山賊に嫌われてるな。

 まあ、ひと月でランク上げるには相当な功績を挙げなきゃならねえからな。こうなったら俺だって負けてられねえぜ。


「ほれよ!」

「ふん甘い甘い!そんな下手くそで非力な剣で俺らを狩れるのか?」

「やってみなければわからねえだろうが!」

「何を!この元Xランク冒険者をなめんじゃねえぞ!」


 Xランク冒険者だろうが何だろうが山賊は山賊だ、ちゃんと退治しなきゃならねえ。そのついでに袋叩きを目論むザコどもをきっちり片付けながら、俺は元Xランク冒険者様に挑みかかる。



 ずいぶんと大振りだ、これならチート異能なしでも避けられるし凌ぎ切れる気がする。もちろん「気がする」だけで実際は当たりまくってるんだろうけど、それでも取り巻き連中が次々と倒れて行くのを見るのは気持ちいい。



「あっ逃げるのか!」



 そんで急に俺をすり抜けて逃げ出したもんだからさらにいい気になって次々に敵を倒して行く。実戦で覚える剣術ってのはこんなにうまく行くのかってぐらい、どんどん剣が軽くなって行く。不思議だ。これがレベルアップって奴なんだろうか。ああ楽しい。




「何やっているのでありますか上田君!」

「えっ?」

「もうお兄ちゃん!」


 そうやって浮かれてた所に、いきなり赤井が罵声をぶつけて来た。金属製っぽいハンマーを持ちながら、必死に頭目の攻撃を受け止めてる。


「そもそも俺らの目的はこの剣だ、おっとそれからこっちのお嬢ちゃんも」

「上田君、正樹!」

「だからなんだよな……!」




 モモミちゃんが引きつった顔をして俺をにらんでる。




 ああ、そうだよな、そうだったよな……。この仕事って、山賊狩りじゃねえもんな……。


 っていうか俺の能力って……まあ愚痴ってもどうにもならねえか。ああ、馬車がボロボロになって行く……


「お前な、部下を何だと!」

「知った事か、ったくあの化け物剣士さえいなきゃ大丈夫だと思ったのに!」


 まったく化け物剣士とは、遠藤もえらい呼ばれ方してるもんだね……。まあ今は目の前の奴を何とかしなきゃ。



「バカめ!後ろががらんどうだぞ!」



 まだいたのかよザコが……まあやる事は同じなんだけど。チート異能が俺にはあるしな……はいよ。


「バカヤロー!俺を狙うんじゃねえ!」

「違います、勝手に手がずれてお頭の!」

「いぢぢぢ……!」

「はいおしまい、であります」


 チート異能のせいでずれた攻撃が頭目の手を削り、そこに赤井の鉄槌が振り下ろされ、頭目は気絶。あとは一方の敵を全滅させた市村が全部請け負ってくれた。










「やっぱり不向きだったでありますな……」

「ああ、そういうこったな……」


 凌げたと言えば体はいいけど、馬車はあっちこっちに損傷ができちまって、ついでにモモミちゃんも不機嫌になっちまうし……あーあ、ったく、本当にろくなことがなかったな…………。

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