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ぼっちを極めた結果、どんな攻撃からもぼっちです。  作者: ウィザード・T
第十一章 魔王軍、都会に来たる!-後編
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幼稚園時代

作者「ここから本編に戻ります」

上田「戻ってねえだろ!」

作者「戻ってます!」

 俺がぼっちだと実感したのは、十年前だった。




 ある日、幼稚園バスの帰り道、なぜだか隣に誰も座らなかった。



 これまで二日に一回は男の子か女の子がやって来て、幼稚園でのお遊戯や人気のおもちゃとか、アニメとかの話をしていた。



「ユーイチ!」

「ああこうの」

「こらこうのじゃないでしょ、ひろみおねえちゃんでしょ」


 それがいつのまにか、俺の隣には河野しか座らなくなった。

 俺がいた幼稚園は各年度とも一組ずつしかない小さなところだったが、それでも各年度に三十人ほど園児が男女比1:1でいた。

 それこそ幼稚園だなんてみんな仲良くおててつないでって教育の権化みたいな所だから、ぼっちになるのはなかなか難しいはずだった。


「らいねんはしょうがくせいだよな」

「そうそう、いちねんせいになったら、いちねんせいになったら、ともだち100にんできるかなっ!」

「ほんと、こうのってうまいよなー」


 河野は俺の隣で楽しそうに歌っていた。お世辞にも褒められる出来ではないって言い方があるけど、その逆だった。けなそうとしなければけなせないにほどに出来が良く、不思議なほど引きずり込まれそうな魅力があった。

「だからひろみおねえちゃんでしょ!」

「こうのはおなじねんちょうさんだからこうのだよ」

 河野と言うといつもそう言い返して来るが、俺は年中組だった時には年長組の子をおにいちゃんおねえちゃんと呼んでいたし、年少組の子からおにいちゃんと呼ばれていた。


「まったく、わたしがいないとゆういちはなんにもできないんだから。シャンプーでかみのけをあらえるの?」

「だいじょうぶだよ!」

「じゃあわたしがたしかめてあげるから!」

「やだよ!」

「わがままいわないの!」



 で、本当昔っからこの言い草は変わらない。別にわがままでもないはずなのにわがままの四文字で俺の批判を封じ込め、何もかも都合よく終わりにしてしまう。


 そんで、河野の辞書の1ページ目には有言実行って言葉が書いてあるかのように行動力が高い。







「なにゆういちったらかってにおふろはいってさー」

「いいだろべつに!」

「ほらさ、わたしがみててあげるから、ちゃんとできるのかみせてよー」

「こうののおとうさんとおかあさんは!」

「でんわしてきいてもいいよー」


 その日の夜、河野は言葉通りに風呂にきちんと入っているか確かめに来た。親と言う名のストッパーをぶち壊して、堂々と風呂場と言う名のプライベートスポットに一人きりで特攻して来た訳だ。ちなみにプッシュホンを押した結果は河野の言う通りだ。


「いいじゃない別に、速美ちゃんはお姉ちゃんも同然なんだから」

「たったとおかじゃないかよ」

「ほらほら、はずかしがらないの!」

「やだ!」

「ごめん速美ちゃん、裕一がどうしてもやだって言うから、ちょっと我慢してくれるかな……」


 俺が河野の手を振り払っておもちゃを買う時でさえまともにこねなかった駄々をこねると、最初は河野の味方だった母さんも折れてくれた――――はずだった。




 それが、いつの間にか俺はおちんちんを丸出しにしていた。

 そして同じように一糸まとわぬ姿になっていた河野によって強引に風呂に入れられ、何が何だかわからないまま、人生で初めて親以外との混浴をする羽目になった。


「ほらちゃんとあらってあらって」

「…………」

「どうしたの、きんちょうしなくていいって」

「…………え?」


 俺が混乱したまんまその一文字を口にすると、河野は石けんを含ませたスポンジを俺の体に叩きつけた。

 その上にシャンプーを頭からぶっかけ、髪の毛を適当にいじくり回し出した。


「やっぱり、わたしがいないとなんにもできないんだからー」

「あのさ、ちょっと……おれいっしょにはいるだなんてひとことも」


 そして俺がようやく回り出した頭で同じ事を言おうとすると、河野はシャワーを上からぶっかけて来た。五歳児の目にシャンプーが入り込む事などおかまいなしの乱暴なやり方だったが、不思議な事にシャンプーは俺の目をハブっていた。

「もう、ほんとうにゆういちってつめたいんだからさー」

「こうのはなにやってるんだよ」

「だからさ、ゆういちはこどもだからさ、わたしのからだをみてればいいの。どうやってわたしがからだをあらうか」


 ぼさっとした調子で河野の顔ばかり見ている俺に対し、河野は胸を見せながら迫って来た。

 何を言っていたのかは覚えていない。


 一応ここはこうやってとかここはこうやってとか、おねえちゃんなんだから言う事を聞きなさいって言われていたのは覚えてるが、それ以上の記憶は何にもない。


 ただ不思議で、奇妙な思い出としてだけ残っている。



 だがいずれにせよ、俺の今までの人生で混浴はもちろん、お菓子の好みやらスーパーヒーローやら好きなスポーツ選手やらを聞いて来るような異性とは未だに出会えてない事、それだけは確実だった。



 なぜかお遊戯会でやった劇では主役になれたが、そんな俺をほめてくれたのは両親とお姫様役の河野だけだった。



 ……いや、なぜか二、三日経ってからみんなカッコよかったとかうらやましかったとかほめてくれたけど、みんなそれっきり何も言わなかった。

上田「後編の傍からこんなんかよ……」

オユキ「後編って言うけど、こう変(こうへん)更が多いと困っちゃうよねー」

トロベ「ハハハハハ……!」

赤井「平林さん、いつもの事であります……」

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