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ぼっちを極めた結果、どんな攻撃からもぼっちです。  作者: ウィザード・T
第十一章 魔王軍、都会に来たる!-前編
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タイミングが合わない

「お前は誰だ」

「俺は上田裕一だ。お前は」

「私はガッチャだ」


 ガッチャとか言う全く迫力のない名前をしているが、そんなんでごまかされるつもりもない。



 グラサンにリーゼント。パッと見イケメンだが、それ以上に強面。スーツは真っ黒。

 そして右手にはかなりデカい剣を持っている。


「とても片手では扱えそうにない剣であります」

「だが攻撃力そのものは大した事はない、おそらくは範囲重視か」

 ボスならばボスらしく、気合を入れてかからねばならない。



 とは言え、まずは目の前のザコだ。

 昨日戦ったような魔法アイテムも見当たらない、あくまでもただのザコ。


「何ボーっと突っ立ってんでい!」

「俺の手でやってやる!」

「カタ、ギと一緒にすんな!」


 次々に俺に集って来る。もちろん俺も刀を出して斬りにかかるが、言うまでもなく数が違うから打撃は知れている。

「はーい、吹雪起こしちゃうよー」

 当然味方頼りであり、今回はオユキが俺の周りに吹雪を起こした。ドーナツ状の吹雪が俺を包み、外側にいた連中を次々と襲って行く。



「すごい攻撃……」

「私はこれでも雪女なんだから、リンコも頼むよー!」


 オユキに元気づけられたかのように、次々とみんなやって来る。

吹雪によってやられた外側の連中にとどめを刺したり俺への憎悪の取り付かれた内側の連中を後ろから刺したり殴ったり、まったくいつもの戦いだ。


 そんな俺らの戦いを、倫子はやや遠巻きに見ていた。爪を尖らせながらも、のそのそと連中の背中へと忍び寄るような感じで。


「これは戦いだろ!」

「……うん」

「大丈夫よ、みんなやってるんだから!」

「わかった、私も行く!」


 そんな倫子もどうあがいても日本人なのか、その一言で飛び出して行く。この世界でも日本語が通じる以上同じなのかもしれねえが、セブンスやトロベを船から海に飛び込ませるにはなんて言ったらいいんだろうか。

「余裕ぶっこいてんじゃねえぞ!」

 当然のようにそう吠えられるが、そんな分かり切っている事を言われた所でどうにかなる訳でもない。

 舐めプと言う訳でもないが、いつものように敵の攻撃は俺をハブる。今回も同じであり、俺が懸命になる必要はあまりない。適当に剣を振っているだけで敵の方が剣に突っ込み、勝手に死体になってくれる。もちろんその間にがら空きになった左右や後方から市村たちの剣が飛んで来る。


「私はもっと強くなります!」

「本当にさ、本当に見事だよ」


 セブンスも、エクセルも、次々と敵を斬っている。セブンスは出会った時の俺よりずっときれいな太刀筋を見せ、エクセルは相変わらずトロベとも戦えそうなほどの剣術鵜を見せている。

「上田君は時々言っていたであります、エクセル殿の太刀筋を盗みたいと」

「そんな身分じゃないよ、お前のが圧倒的に強いだろ」

「俺は市村と稽古をすると四回に一回しか勝てない。市村とお前どっちが強いかわかんないけど」

 ぼっチート異能とはそんなもんであり、俺はどうあがいても素人剣士だ。


 仲間がいなきゃ、何もできないとまでは行かないにせよ、大したことはできない。


「そりゃああ!!」



 今、倫子が爪を突き出している。俺の真っ正面の敵に向かって。


 狼の爪が背中を裂き、あるいは俺に向かって倒れ込むかもしれない。





「ん!?」




 そんな構図を思い描いていたのに、なぜか目の前のザコが思ったより早く倒れ、倫子の爪が俺の眼前に迫った。


「ああしまった!」

「いやいい、横薙ぎだ、横薙ぎにしてくれ!」


 何らかの形で攻撃のタイミングがずれ、俺とザコの間に挟まっていた倫子の攻撃が折れに向かって来たらしい。まあ、不慣れだからしょうがない。



「ん?」

「当たらないであります」

「んん?」


 ……と言いたかったが、その倫子の失敗から攻撃が外れる事が増え出した。

 市村も赤井もトロベも、なぜか寸前で攻撃が止まってしまう事が増えた。


 正確だったはずの狙いが微妙にずれ、空振りが増える。その度に無駄撃ちではあるが俺への攻撃が増え、その度に俺がせわしくなる。


「これはまた補助魔法か!」

「セブンス」

「わかりました……」


 とりあえず魔法の流れを調べて見なければならない。

 この世界の魔法の導線は電波と同じで、回復も攻撃も補助も対象を見極めた上で飛ばさねば意味はない。ヘイト・マジックだってその通りであり、こんな風に狂いを生んでいるのは誰かが何らかの手段を講じているはずだ。

 かつてのミワのように、補助魔法でもかけて連中の速度を上げているか俺らの速度を落としているのだろう。


「おいガッチャ」

「……」


 おそらくはその根源である存在に向かって吠えてみるが、本人は全く無反応だった。



 市村は俺から離れ剣に力をため、ゆっくりとガッチャに近付いている。魔法の導線、いや根源を断ち切っちまえばこっちのもんのはずだ。



「ずいぶんとせっかちな事だな」


 余裕ぶった面相を崩さないガッチャは、剣を抜きさえしないままじっと車道のど真ん中に仁王立ちしていた。その間にもオユキの氷剣がザコを狩ろうとして決定打を与えられず、倫子の爪もスーツを切り裂くまでが精一杯だと言う光景が続く。

 もちろん俺の刀も致命傷を与えられない。


「……んん?」

「何これ、今度は早すぎる!」


 と思いきや、急に敵が遅くなった。全力を込めて読み切ったはずの刃は空を切ってしまい、あわてて斬り上げてもやっぱり致命傷には遠い。

まるで全体の速度を操られているかのようだ。







「聖なる力を込めたはずなのに!」

「確かに力は認める。だがそれだけではな」


 そして、肝心の市村もガッチャを倒せない。鍔迫り合いに持ち込まれ、歯を食いしばりながら押し切ったはいいがすぐさま飛び退かれている。全力でああだとすると、普通に打ち合ってたらどうなっていたか。




 って言うか相変わらずこの連中は速度が読み切れなくてうっとおしいな!


「ちょっと待ってください上田君、ガッチャのMPは1しかないはずでは!」

「あっ?」




 倫子を疑うつもりもないが、最大MP1のガッチャにそんな魔法が使えるのだろうか。

 聞けば速度は上げるのにも落とすのにもつ離れしたMPが必要であり、ガッチャがそんな事をすればMPマイナスになる危険性もあるはずだ。


 だってのに、かつてのロキシー村長のように苦しそうに、強引に魔法を使っている節もない。




「誰がMPを使うって言った?」

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