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ぼっちを極めた結果、どんな攻撃からもぼっちです。  作者: ウィザード・T
第十一章 魔王軍、都会に来たる!-前編
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冒険者の価値

「ヒラバヤシリンコ……無事だったか」

「エクセルさん」


 倫子はリョータイ市のギルドにいたからエクセルも名前を知っていた。でも倫子がトードー国にやって来てあれこれやっている間に、エクセルはミルミル村からリョータイ市まで戻っていたから直接会った事はなかった。


「なぜここにいるのでありますか」

「キミカ王国とトードー国はゆっくりと交流を進めようって事になってさ。それもお前のおかげだよ」



 どうやらキミカ王国とトードー国の両国が正式に国交を結び、名目的ながらも続いていた戦争を終結させていく運びになるらしい。


 その第一歩としてとりあえず冒険者たちが何人かトードー国に正式に入国し、その上でノーヒン市に入る事になったそうだ。


「ノーヒン市と言う大敵が長年戦争を続け国交断絶状態にあった存在を結び付けるとは、戦争とは皮肉な物であります」

「ここに来るだけでノーヒン市ってのがトードー国以上に常識の通じない町だってのはわかったけどさ、まあトードー国の時点でかなり驚きだったけどさ」

「トードー国内で何か」

「名目的には断絶状態だったけど亡命者はいたからな、その類の存在かと思われてたせいか何もなかったよ」


 亡命ってのは、国を捨てると言う意味だ。

 俺はミルミル村から反時計回りでここまでやって来て、その間に二つの国と二つの市と四つの町村を巡って来た。その全てに人がおり、コミュニティがあり、そこに住み着く人もいれば移動する人もいた。


(冒険者って奴は弱いよな……なんとかランクってもてはやされてるけどその実は根無し草であり、命がけの任務にも平気で駆り出される)


 兵士と言うか軍人は国家に忠誠を誓えばいいが、冒険者と言う名の自由業は因って立つもんなんかない。ゴロックさんのような実質ギルド専属の「冒険者」もいるが、それはもうただのサラリーマンだ。


よそからやって来てよそへと帰る冒険者ってのは旅人と言うか流民だ、ある意味最高の捨て駒だ。



「死ぬんじゃないぞ」



 俺は相変わらずのイケメンフェイスを見せつける男に対し、これ以上の言葉を言う事ができなかった。




 とにかくエクセルと言う9人目の仲間を得た俺たちは、改めて前進を再開した。


「本当に灰色だよな」

「私たちの世界の町などだいたいがこんなであります」


 エクセルは昨日おとといのセブンスたちのようにキョロキョロと町を見渡している。この世界のどこにもない町によりエクセルほどの人間を呑み、集中力を切らす事が狙いだとしたらずいぶんとよくできたお話だ。


「それより気を付けるべきはゴッシの残党です」

「俺はゴッシを殺したも同然だからな、セブンス」

「まあこっちはそれを倒しに来ているのだがな」

「出来れば全滅させたいけどねー」


「にしてもこれは……」

「都会の負の一面であります」



 そして歩けば歩くだけ、町が汚くなってくる。


 塗装の剥げた網目のゴミ箱に、ポリバケツ。どっちも中身は荒らされており、それを片付けるような人間もいない。俺らが手を出そうにも、蓋がない。そして空き缶に混ざっているパッと見さほど汚れていない大きな鍋。こういう使えそうなもんを引き渡して金をもらっていたのだろうか。

 雨風にさらしておくにはもったいなさそうなほどの代物だが、誰も回収するような奴もいない。


「この先に川があるんだけど、そこで体を洗ったり飲んだりってのは日常茶飯事で」

「つまりその辺りにさらわれて来た子たちがいるんだな」

「うん。でもサテンのような子もいればクタハのような子もいた。ナカシンちゃんって子も私に懐かなかったなあ……」

「その子たちを何とかして救いたいけどね」


ゴッシの死に伴い誰か逃げて来るのか、そんな期待をしていなかった訳でもない。

だがあんな巧妙に情報封鎖して取り込もうとしていた連中だ、ゴッシの死などと言う最重要情報をあっさり漏洩するとは思えない。


(やっぱり頼りはヘイト・マジックか……)


 俺の力は目立った方が都合がいい。

 大通りへと飛び出して人だかりを作り上げ、そこを仲間たちに狩ってもらう。

 そんないつもの戦法で行くしかないのに吐こうとしたため息を飲み込み、細い道を抜けて体にゴミを付けながら大通りへと飛び出した。




 果たして。




「てめえ!」

「その武器を寄こしやがれ!」

「やってやろうじゃねえかこの野郎!」




 まったく、驚きの吸引力だ。


「数は」

「五十ほどです」

「出て来るって事はまあそういう事だろう。それで倫子、能力が見えるか」

「はい」


 倫子は路地裏から顔を出し、向かって来た十把ひとからげなスーツ軍団の先鋒の男をじっと見つめた。


 そしてステータス表示を大通りのビルに映し出す。まるでセブンスの魔法みたいだ。




トウシマ

職業:ゴッシ配下

HP:120/120

MP:0

物理攻撃力:100(装備補正により160)

物理防御力:100(装備補正により140)

魔法防御力:80

素早さ:150

使用可能魔法属性:なし




「他の人もおおむね同じです」

「魔法使いその他は」

「いないようです」


 この程度ならばハイコボルドとそんなに変わらない。倫子と比べてもレベルは低く、狩るのは簡単だ。


「よし、エクセルも含めてみんな頼むぞ。俺に集まって来たところを一人一人やってくれ」

「了解!」




 みんながそれぞれの得物を抜きながら、迫って来た連中の後方を突かんと散らばって行く。


百貨店やら、オフィスビルやら、雑居ビルやら、人がいるのかいないのかわからないビルの立ち並ぶ中での刃傷沙汰がまた始まろうとしている。自動車事故以上の血など流れっこないはずの場所で。

気が付けば、朝飯後の軽い運動として。


 だが、倫子だけは動きが悪い。


「どうした倫子、とりあえず市村について行けば」

「ちょっと待ってください!強い人がいます!」


 俺が促すと、倫子は百貨店っぽい建物の壁にまた別のステータスを表示させた。




ガッチャ

職業:ゴッシ配下

HP:400/400

MP:1

物理攻撃力:300(装備補正により350)

物理防御力:300(装備補正により350)

魔法防御力:300

素早さ:333

使用可能魔法属性:なし




 この軍勢の総大将って所か。




 なるほど……ヘイト・マジックが効いてねえ。

 じっと、腕組みをして構えてやがる。

作者「明日は上田裕一の夢!全日本大学駅伝!」

上田裕一「絶対見てください」

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