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ぼっちを極めた結果、どんな攻撃からもぼっちです。  作者: ウィザード・T
第十一章 魔王軍、都会に来たる!-前編
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またまたまた登場!?

 結局少しだけごねたセブンスを我慢させた上でコンビニで銀貨五枚注ぎ込んで適当に食糧その他を整えておき、その上で大川が持ってくれると言うか背負ってくれることになった。


「しかしリュックサックなど」

「平林の服を揃えるついでに買ったの。銀貨三枚だったし」

「一つしかなかったんです……」



 アイテムボックスってのもまたチート異能だよなあ。


 RPGの登場人物って奴は一体どうしてすさまじい量の道具を持ってるのかこれまで不思議だったけど、実際この世界に来てから必要最小限以外の物は持てなくなった。もちろんこの世界にもそういうバッグの類の物はあったけど、俺らの世界のそれからするとぶっちゃけあまり強くない。

 縫製技術とかはあったはずだが、それでも量産されておらずこのリュックサックと同じ大きさ、同じ丈夫さのカバンとなるとケタが一つ違う。サンタンセンとかならあるかとも思ったが、あそこも被服優先で日常品は扱われていなかった。


「王家御用達もいいけどな、トロベって普段はどうしてたんだ」

「騎士たる物あまりあれこれと物を抱えて動くのは野暮と言う物でな、路銀と食糧と薬があれば事足りると言う方針で動いていた。今も変わらんつもりだ」

「そう言えばハチムラ商会にも馬車はたくさんあったけどこういうバッグは多くなかったな。こりゃもう文化の差だな」

「文化の差、か。位の高い魔導士ともなると収納魔法により道具をしまったり取り出したりすることもできるらしいがな。召喚魔導士はコークの研究に専念する事も多いからな」


 召喚魔法か。確かに何もない所から何かを取り出すなんて召喚魔法そのものだよな。

 それでたいていの召喚魔導士は家庭用にも戦力にもなるコークの召喚を行い、運送用にしかならないアイテムボックス系の研究はさして行わないらしい。


「まあな大川、頼むよ」

「私は正直あんまり役立ってないからね、こんな事ぐらいはしなきゃって」

「クタハの心を鎮めただけで相当えらいけどね。ってかあのカレーライスっての、ものすごくかれえね」


 で、早速一発オユキのギャグが飛び出し、そしてなぜか大川にトロベはしがみ付いて笑い出す。

 そのついでにワーウルフに出会った、わーウルフだーなんて言い出すもんだからトロベったらいきなり大川の洗ったばっかの柔道着を濡らしてるし……

「この二人はこんな関係なんだよ」

「なるほど……」


 本当は昨晩の内に澄ませておくべきやり取りだったかもしれねえけど、とにかく倫子も今は俺たちの仲間だ。少しでも仲良くなっておくに越した事はない。



「今日は西地区へと乗り込む。そこでゴッシの配下の残党を倒し、そしてトードー国から連れ去られた少女たちを取り戻す」

「それでいいなと言いたいが、今日一日でどれだけできるかわからない」

「私は南西の地域にいて、そこから北へやって来たから北西の地域はよくわからないのよ」



 とりあえず俺達は倫子を先導役にして、南西方向へと進んだ。


 昨日あれほどの立ち回りを演じたのに死臭も血臭もない道路を南に歩き、不思議なほど沈黙を守ったゴッシのビルを西へと曲がって行く。


「都会の路地裏はよくわからないのであります」

「路地裏ね……私もサテンちゃんも路地裏に出されるゴミや野草を食べて生き延びていたわ」

「…………」


 もしこれが三田川の狙いだとしたら、それはもう成長促進と言うよりただの犯罪だ。

 同じ事をやれと言われれば三田川ができなくもなさそうなのがまた腹立たしく、それ以上にそんな場所が用意されているのが恨めしい。



(ホームレスを溢れかえさせるような街だ。当然ながら環境は最悪だろう。それがわざとだろうとそうでなかろうとな)



 倫子からゴッシらの悪巧みは聞いている。


 誘拐した獣娘たちをわざと放置して精神的に追い込み、そこに救いの手を伸ばして自分しかいないと思わせる。そうしてゴッシ様こそ絶対であるとすり込ませ、自らの配下へと仕立て上げるのだと言う。

 実に凶悪で陰険なやり方だが、実際クタハを見る限り効果はそれなりにあった。

「彼女は元からトードー国でもあまり恵まれた立場ではなかったらしいけど」

「それならなおさら寄り付きそうだと思いますけど」

「それゆえにむしろしたたかだったのかもしれない。ある程度取り込まれながらもあの場でああして振る舞うのが最高だとわかっていたのだろうな」


 確かに助けが来たとは言ってもこっちは数人、向こうはゴッシを失ったとしてもまだ何百。

 いざって時のために節を曲げずにいた方が、心証としてはいいって寸法か。


「危ないのはむしろ名家の子どもであります」

「蝶よ花よと育てられて来た、もやしっ子か」

「ああ、まだ自立しきれていないな。実際その手の子もかなり連れ去られていたらしい」


「って言うか下手に金払えばトードー国は間者を領内に抱えてたって事か、ああ危ないったらありゃしねえ」


 ゴッシはそれを全く正しいと思って実行してたんだろうな。

 本当、人間のほうが悪魔よりも醜いとかよく言うが、この世界は嫌ってほどその事を教えてくれる。




「ユーイチさん、後ろから来ます!」

「えっ」




 とか考えてると、そんな余裕があるかいと言わんばかりにセブンスが現実に引き戻してくれる。




 どうやって潜んでいたのか昨日の決戦場であったビルから飛び出して来た男たち、共に手には槍を持っている。


 そしてもう一人、剣士。


「敵は三人か」

「三人……まあいいゴッシ様のためお前を!」




 そのゴッシ様の忠臣が願いをかなえる事は、永遠にできなくなった。


「久しぶりだな!」

「エクセル……」




 二人を斬り倒した剣士こと、エクセルのせいで。

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