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細川忠利の意地(細川忠利視点)

(これもチート異能か?)




 不思議なほど、馬は俺に懐いてくれた。しかもかなり速い。


 競馬なんか全く関心はないが、それでもまるで自動車かバイクのように高速で走ってくれる。


(それにしても、あの時の魔物め……!)


 なんとしても、王子様を取り戻さねばならない。俺の手で。


 俺は、俺の力で戦った。


 この国に来た時から、いやこの世界に来た時から。



 経験を積み、俺の手でみんなを救い出すために。




 最初に世話になったリョータイ市。そこにいたゴロックさんを始めとしたギルドの人たちはみんな優しかった。登録からやり方まで、いろいろ教えてもらった。


 でも、甘い人だった。


「あのさ、そんな急にランクなんて上がるもんじゃ」

「上げなきゃいけないんです!」


 俺が事情を素直に言っても、悠長な事しか言わない。


 とりあえずゴロックさんのランクぐらいになればそれなりに名も売れるし人も集まるだろうと思ったが、ゴロックさんのUランクになるまで二十年かかると言う。


 バカバカしいにもほどがある。


 そんな所に現れたのが平林倫子だ。


 なぜワーウルフになっているのかはわからないが、とりあえずその彼女がランクを上げたいきさつを聞いた俺はすぐさまその真似をした。


 徹底的に幻影術と言う名のチート異能とやらを使いまくり、コボルドを狩りまくった。幻影術で魔物たちを惑わし、一日に三桁のコボルドを狩った事もあった。


 幻影を実体化させて運ばせ、ギルドに持ち込んでは金以上にランクアップを求めた。



「お前さんさ、何をあわてふためいてるんだ?少し休んだ方がいいぞ」

「十分寝てます!」


 それでもくどくどと言うのをやめないのに腹を立て、五日目からは会話もしなくなった。


 チート異能を生かし数個単位で仕事をもぎ取り、大も小もなくすべて成功させる。そんな事をするとろくな名の立ち方をしないぞとか言われたが、ろくであろうがなかろうが知った事かい。


 とにかく俺はそうやってランクを強引にでも高め、ある程度名も売れた。今着ているのは、冒険を生業とする術士用のローブだ。この世界では極めてありふれた衣装だが、衣装だけで優劣が決まるもんでもない。



 ましてや、俺がもたついている間にトードー国へと行った平林が三田川に襲われて行方不明になってしまったと言う報を聞いてしまった以上もうどうにもならない。


「ミタガワエリカ……我らの恥と言うべき存在!どうか、どうか……!!」

「まあ落ち着けよ兄ちゃん、ほら豆茶でも」

「どうか皆さん、俺に力を貸してください!!」


 豆茶を飲み干し、その上で深々と土下座までした。だってのに望ましい回答は返って来ず、床を濡らしそうになっても皆平然と笑っている。



「ああそうですか、失礼いたしました!」


 もういい。俺はこんな悠長な連中に付き合いたくないとばかりに「裏道」へと向かい、トードー国へと向かうための手はずを整えた。

 まったく、俺がギルドを出る頃になってようやくため息めいた音が耳に入り込んで来たが知った事かいそんなのは!



(俺はこんなにも真剣なのに!)



 俺はみんなを救いたかった。と言うか、高校に入った時からそう思っていた。



 三田川だって、平林だって、みんな俺が救いたかった。


 そのために科学者、いや政治家にでもなって、みんなを幸せにしたい。だからこそ学問に精を入れ、それ相応の成績は出して来たはずだった。

 しかし成績はいつも三番。三田川と赤井の競い合いに割り込む事すらできない。




「ここか!ここなのか!」

「うんそうだよ」




 不思議な声に導かれながら、俺は村へとたどり着いた。


 平林のように、俺たちはみんな何らかの力をもらっているらしい。俺に与えられたそれがもし幻術だけでなく、ここまで引っ張る事の出来るほどの馬術まであったとは。


(上田……お前もこれを見れば考えが変わるだろ?)


 このトードー国、黒髪の人間が暮らしやすい町でも俺は幻術を見せて味方を求めたがまるでうまく行かない。

 そうこうしている内に、今日上田たちに出会った。

 上田たちは皆かなり名の知れた冒険者になっているらしい、だから俺と共に戦ってもらうために力を見せたつもりだ。しかしその結果俺は上田に殴られ、置き捨てにされたただけだった。




 なぜだよ上田、俺はこの国のため、若君様のため、そしてお前たちのために戦ってるんだぞ!それの一体何が悪い!?

 だから俺は強引にでも馬を譲り受け、そして若君様を拉致監禁した輩の所までやって来たのだ。





 俺の手で、若君様を救わなきゃならねえ!

次回はまた上田視点です。

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