ガーゴイル軍団
「なんだあれは!」
「ガーゴイルでありましょうか!」
コウモリの羽根に真っ赤な体、そして右手には鎌。
そんな姿をしたガーゴイルなる魔物が、次々とこの和風の町に降りて来る。本当にミスマッチだ。
「魔法は」
「見た所なさそう。って言うかかなり数が多いよー」
パッと見で三十、いや四十。そんな数の魔物たち。
当然ながら町はパニックになり、みんな悲鳴を上げながらサッと家に閉じこもって包丁やら何やらを構えながら震えている。
「セブンス!」
「はい!」
セブンスは俺の首筋にヘイト・マジックを打ち込んだ。
俺は柳の木がそよぐ河原へと走り、空を見上げる。
「よし来た!」
いつものように、俺の魔法を感知したガーゴイルたちが突っ込んで来る。
見た所、鎌はさび付いていてあまり強くなさそうだ。もちろん装甲は何もなく、守りもあまり強くなさそうだった。
「速度重視だ、火力はないぞ!」
あっという間に向かって来たのを見ればわかる話ではあるが、それでもこれぐらいの大言壮語はしてやらなきゃいけない。
「キキーッ!」
図星を突かれたのかガーゴイルたちがわめき出す。俺は冷静に日本刀を抜き、さっきと同じように振った。
(すごい……)
一発でガーゴイルたちの羽が斬られ、青い血が地面に流れる。
羽どころか鎌の柄も斬られ、次々と手ぶらになったガーゴイルが現れる。
もちろん頭や銅を斬られ、青い血を拭き出しながら消えるガーゴイルも出始めた。
「皆さん!」
当然ながら、ここに城直属のサムライや民間の冒険者たちも集まる。
「あくまでも上田君からやや離れた存在を狩って行って欲しいであります!」
「落ち着いて下さい、焦ってはいけません!」
まるでアイドルのコンサートかなんかのような行列だ。
しかしヘイト・マジックってのもわかっちゃいるけど凄まじいもんで、川べりの柳しかないような一角がたちまちホットスポットだよ。魔物狩りってのがどれだけの報酬になるのかはわからないけど、上から下までサムライの皆様方が揃いも揃って狩りまくっている。
青い血が川に流れ込み、鎌の破片や魔物の皮膚と言う名のゴミが山積みになる。環境に悪そうだ。
「と言うかあの北から来た冒険者たち、かなりの強者らしいな」
「ウエダとか言ったな、これだけの魔物を引き付けて無事だとは」
「まあおこぼれを拾えと言っている以上ほっとく意味もないよな」
「……しかしやけに数が多くない?」
「確かにな……と言うかトロベ……」
北から来たと言うダジャレで戦闘力ダウンのトロベはさておき、みんな本当にガーゴイルを狩りまくっている。
だが、正直多い。
まあとにかくあっさりと囲まれていたわけだが、それにしても後から後からやって来る。いくら一撃死レベルとは言え、ここまでやって来ると正直面倒くさい。
「ああもう!うっとおしい!」
「私が氷の壁を張るよ!」
オユキが俺を取り囲むように不透明な氷の壁を張るが、それでもガーゴイルは変わらず突っ込んで来る。割られる事はなくまるでニワトリかなんかのように突っ込んで来ては倒れて行き、その度に犠牲者の山を作って行く。
「すごいと言いたいがな、これはさすがに」
「あるいは総攻撃があるのかもしれませぬ」
「そうだよー、これって総攻撃だよねー」
「だとするとこのトードー国始まって以来の危機やも知れぬ!皆、町の警戒に当たれ!殿にも知らせよ!」
三十や四十ではない、七十、いや下手すれば百。
こんな数で一体何をする気か。
「市村君!私と共に城へ向かうであります!」
「え?」
「これはおそらく囮!どこかを狙っている可能性があるであります!申し訳ありません上田君、皆様方上田君たちをお頼み申し上げるであります!」
赤井が何かを思いついたように叫び、市村の手を握ってお城へと走り出す。
(城か……)
確かにその通りだ。あるいは他に何かあるのかもしれないが、とりあえず一番重要なのはお城だ。
あのお城に何がある?金か?殿様か?
どっちにせよ魅力的ではあるが、ガーゴイルの力がこれだとするとあまり問題視する事もない。確かに数が多くてうっとおしい事極まりないが、さっきからオユキが氷の柱を伸ばしてガーゴイルを叩き落しまくっている以上さほど問題でもなさそうだ。
その結果ガーゴイルの死体や鎌が雨のように降って来て建物に若干の損害と、住民の皆様の精神状態に大きな損害が及んでいる事についてはどうかご容赦してもらいたい。
魔物がどれだけいるのかはわからない。この世界に住む人類より多いのかもしれねえ。
(ミルミル村では魔物と一緒に野生生物も狩りまくった。ゴブリンはさておき、それこそあの剣で一番斬ったのはイノシシじゃないかってぐらいにな)
ゴブリンを斬って落ち込んでてイノシシ(みたいな生き物かもしれないが)を平気で斬れた時にはセブンスが派手に首をかしげていたが、それこそ野生生物との戦いってのは結局どうにもならないもんだとしか言えない。
「ああもう!悪いけどセブンス以外城へ行ってくれ、絶対なんかある!!」
魔物が人間を滅ぼそうとしているのかはわからないけど、とにかくこの数は異常だ。
「頼むぞ!」
俺は大川たちを見送りながら、一向に減る様子のないガーゴイルを斬っていた。




