ラブラブカップル
作者「いよいよ第八章です」
赤井「そう言えばこの作品のタイトルは何でありましたか?」
作者「最初からタグに「でもハーレム」ってあるんだから許してよ……ああ、こっちhttps://ncode.syosetu.com/n9944gz/もよろしく」
「んな顔をすんなよ」
「モテる男は違うんだなって思いますよ」
八村慎太郎は、タトさんに脇腹を突っつかれながらこれまでの人生全てを後悔するかのような顔をしている。
まったく、セブンスったら馬車に乗せてもらうまで俺の側を離れようとしない。それこそ寝ても覚めても飯を食う時さえも(セブンスの量が俺の倍だったから俺はしばらく待たされたけど)だ。
「おい慎太郎、俺は」
「説得力と言う概念が世の中には存在するであります……」
「ったく本当に不思議だな、どうしてお前がモテなかったのか」
赤井と市村も味方になってくれない。って言うか市村も、確かに負担を少なくするってのは正しいし、それでそう言えば持っていた乗馬の技術を使うのもわかる。
とは言え、七人ぐらいなら乗れる馬車に二人きりだなんて場も間も持たない。
「大川、一緒に」
「この状況で他人が入り込む余地があると思う?」
大川は赤井と共に商材を積んだ馬車の護衛役のように立っているし、トロベとオユキは漫談の主と客みたいなことやってるし、キアリアさんはサンタンセンに帰っちゃうし……
「って言うかモルマさん、本当にギルドマスターをやめるんですか」
「ああ。もう私の役目は終わったと思っている。後はお城へ上がって、後進の指導でもしようかなって……」
「モルマさんは優しい人だってよくわかりますよ」
そしてモルマさんは、俺以上に疲れた顔をして俺たちの乗る馬車の目の前を歩いている。
キアリアさんと言いモルマさんと言い、人格者って言葉がよく当てはまる人だった。
もし遠藤や剣崎がこんな人たちと出会っていたら、彼らはもう少しまともになったかもしれない。
だがキアリアさんはその真面目さゆえに焦りまくっていたミワに嫌われてあんな暴走を引き起こし、モルマさんはその温厚さゆえにギンビたちを止められなかった。
「世の中の人間がみんなモルマさんみたいだったら世界は平和ですけどね」
「バカ言っちゃいけない。私ばかりだったら何も進まないよ。ギンビ殿ってお方は私のじれったいやり方が気に入らなくてね、たびたび自分たちだけでも山賊討伐をやらせろってせかしてたよ」
「でもやっぱり手続きを踏まないと齟齬が出てしまうと思いますけど」
「そこがまたねえ、ウエダユーイチ君だっけ」
「あっアルイさん!」
いつの間にか俺らの目の前に来ていたアルイさんが、口を歪めながら笑いかけて来た。
その笑顔と共にセブンスは急に俺から離れ、両手で顔を覆いながら丸くなる。ってか赤井たちやモルマさんを見ても平気なのになんでアルイさんにはこうなるんだろう。
「おやおや、あっつい所を邪魔しちゃったかい?オッサンはこれだからダメだねえ」
「いや、あの、その……つい甘えちゃいまして、私にもできる事がないかと」
「そうじゃないよ。お前さんは実に分かりやすいよ、一緒に戦ってると人ってのは簡単にわかる。でもお前さんほどなのはめったにいないね」
アルイさんは得意げにあごを突き出すと、まるでそのあごになぎ倒されたかのようにセブンスは倒れ込み、ふたたび俺を拘束した。
「そういやセブンス、アルイさんやモルマさんと一緒に戦ってたんだよな」
「ああはい、それで、ああ申し訳ありません!」
「ただひたすら、恋する乙女ってのはこういう人間なのかっつー感じでさ。別行動だってわかってるのにずーっとユーイチさんユーイチさんでさ。
ユーイチさんのために敵を倒す、ユーイチさんのために頑張る、ユーイチさんのために戦うってさ」
アルイさんが舌を動かすだけ、セブンスが馬車を飛ばしそうなほどに膨れ上がる。アルイさんたちの前で大泣きして抱きついて寝ちまった以上もう完全公認状態なのに、本当いちいち熱くなれるんだから相当だよな。
「そういう事は私を心配してくれたシンタローさんが傷つくからなしだって言ったじゃないですか!アルイさんはシンタローさんが嫌いなんですか!」
「やれやれ、そういう所がなんだよねえ…………ああウエダユーイチさんよ、黒髪のお方ってのはみんな真面目なのかい?」
「かなりふざけた奴もいますけどね」
八村慎太郎はどこまでも一途なセブンスに危うさを感じ、暴走を抑え込むためにモルマさんの下に付けた。結果的にセブンスをますます暴走させただけになっちまってひどく落ち込んでいたが、それでもその気持ちだけは間違いなく本当だった。
(赤井……悪いけどお前八村に嫌われてもしょうがないぞ?)
――――と言うか赤井も落ち着き過ぎだ。
米野崎が行方不明、と言うか相当な危機にさらされてるはずだと言うのにずいぶんと悠長に歩いている。
「赤井!」
「とりあえずは情報を集める事が第一なのであります。ましてやリョータイ市及びキミカ王国に向かうにはこれが一番速いのであります」
「……そうだな」
あくまでも正論。あくまでも現実主義。
いくら街道整備などされていない(一応冒険者の皆さんがある程度は片付けてくれたが)上に電車も自動車もバイクもない以上、俺たちはこの速度でしか急げないのだ。
「そう言えば上田は聞いた?街道整備の魔法使いの噂を」




