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ぼっちを極めた結果、どんな攻撃からもぼっちです。  作者: ウィザード・T
第七章 ハチムラ商会(第二部第一章)
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グベキvsセブンス

「まったくもう、まだ生きてたわけ!」




 またグベキだった。


 タイガーナイトたちの端っこから出て来た、見た目と中身の全く違う女。


「お前、仲間に向かってまだ生きてたはねえだろ!」

「ウエダ、あんたに言ってるのよ!」

「ミーサンカジノの仲間たちも、お前にとっては道具なんだろ!」

「何を言ってるの、私にとっては親兄弟同然なのよ!その存在を殺したあんたを許す訳には行かないじゃないの!」


 グベキはパチンコ玉を投げながら飛び回る。あまりにも軽快すぎて、実に腹立たしくて仕方がない。

 本来家族を失った怨念をむき出しにするんなら、怒り狂うか無表情になるかのどちらかじゃないだろうか。


「お前なんでそんなに目が笑ってるんだよ!」

「だってミーサンの仇を討てると思うと嬉しいんだもん」

「じゃあなんで最初あんなとこにいて、ここまで逃げて来たんだよ!」


 スキャビィを頼るのはわかる、この一団で一番強いから。

 だがその存在を当てにしているならば、それこそ最初から一緒にいるべきじゃないか!なぜわざわざ囮である山側に潜んでいたのか、正直わけがわからない。



「俺らの世界じゃ復讐は無価値だとかさんざん言われてたけど、改めて意味が分かったよ!」

「どういう意味だ!」

「結局自分のためだけの、まったく意味のない行動のためによそ様を巻き込むからだ!それに見合うメリットがないからだよ!」


 かなり冷たい見方かもしれないが、紛れもない事実だろう。


 自分の欲望のために大勢を巻き込み、そして達成した所で何も残らない。残るとすれば自己満足。



「俺には意味がある!散って行った仲間たちの供養、そしてお前と言う大敵をなくすと言う!」

「お前に言ってないぞスキャビィ!」

「俺だって昔は、まあこうして山賊のふりをしてからの話だが、仲間の仇だとか言って追いかけて来た奴もいた。仲間をやった奴をなぶり殺しにした事もあった!」


 スキャビィの声が急に柔らかくなる。中身はとげとげしいのに、調子は軽い。


「人の事を言えた義理か!」


 俺は顔を赤くして剣を振る。


 もちろんスピードもパワーも手数もまったく及ばないド素人のそれでしかないが、感情だけは伝えられているつもりだ。


「みっともない悪あがきやめようよー」

「静かにしろ!」


 攻撃力を高める魔法ってのがあるんならば、今俺はそれをかけられたんだろう。


 みっともない悪あがき、ああまったくその通りだ。言い返す気にもならない。



「俺にとって剣は、仲間を無事に取り戻し守るための道具に過ぎない!今までやってたことはすべてその過程の産物だ!」

「笑っちゃうなあ、そのナカマヲマモルタメの戦いの間、一体何人のナカマと戦って逃げられて来た訳?とくにあのミタガワなんて靴を舐めなければ言う事聞いてくんないよ、そんでそんな勇気もないくせにさー!」


 いちいち神経を逆なでするような言葉を吐きながら、俺に向けて攻撃してくる。残ったタイガーナイトを盾にして赤井たちから逃げ回りながら、鬼ごっこでもするかのようにこの血だらけの草原を走り回っている。

 

 その間にも俺に当たらないはずの攻撃を放ち、鎧へのわずかな傷と少なくない心理的打撃を与えて来る。いちいち煽るだけ煽って、ひたすらに表舞台に立つのを避けたがる。

 俺はSNSをやってないけど、こういうのが即ブロックされそうなのは赤井を見ていれば分かる。安全圏から来たない事を言うような奴が好かれる訳がないだなんて簡単にわかりそうなもんなのに、つくづく程度の低い奴だ。




「ユーイチさん!」

「おいお嬢ちゃん!」



 

 そんないら立ちをため込んでいた俺の顔、いや体が急に赤く光った。




「セブンス」

「絶対に、ユーイチさんを守りたいからです!」



 ヘイト・マジックの重ね掛け。


 サンタンセンの戦いでもあった事だけど、いざこうされてみると手足がより輝いて来て、ひと月目にしていなかった赤信号を思い出すほどに光っている。

 となりに黄色信号と青信号を並べてみたいもんだ。




 そして効果もまたてきめんだった。



「あっコラ、おい貴様!!」

「てめえ……!!」


 総大将様のお言葉に従い逃げ出そうとしていた残りのタイガーナイトが一斉に突っ込んで来た。チームワークを最大限に生かし、俺を討つために迫って来た。


 もちろん、俺に当たる事はない。薄くなっていた包囲網など俺でも打ち破れる。


「ああもう!!」


 やけくそになったのかグベキの攻撃も外れ出した。俺に向けられて外れた攻撃は当然の如くタイガーナイトやスキャビィへと向かい打撃を与える。


「おい邪魔をするな、こいつを殺したいんだろ!」

「そうなのに、そうなのに!」


 グベキが歯嚙みする中、セブンスは剣を握りしめながら舌を動かしている。


 よそ見する程度には余裕もできた俺が後ろを振り向くと、俺よりずっと勇ましい顔をして手を振っていた。



「なっ……!」


 そしてその剣でタイガーナイトの背中を突き、仕留めてしまうんだから実にすごい。


「なんてえ娘さんだよ!俺らも!」


「悪いけど控えててください!セブンスももういいから、危ないぞ!ほら市村たちだtって無理はしてないだろ!」


 セブンスは目を輝かせながらも剣を振るい、俺のためにさらに犠牲を作ろうとしている。どこまでも、どこまでも真剣に。



「あんた、ものすごく邪魔!!」


 そしてたぶん、グベキにはセブンスの事は理解できないだろう。ただ単純に的に当たらなくなったことに対してわめき、俺を狙っては同士討ちを繰り広げている。


「私はユーイチさんのために動いただけです!あなたは誰のためにやってるんですか!」

「ミーサンのためよ!あんたのせいで攻撃が当たらなくなったじゃないの!」

「わかってるならおとなしくしてください!」


 セブンスの唇が引き締まり、グベキは緩んでいる。



「やだ!」


 セブンスに向かって飛んで来るパチンコ玉―――いや剣!



「くそっふざけやがって!」


 俺が受け止めに行くしかないとばかりにスキャビィから離れ、飛んで来た剣を弾き返した。


 グベキの作り出した剣が、二匹のタイガーナイトにかすりながら宙を舞い、草原に突き刺さる。

 青い血をさらに植物に吸わせながら、悪目立ちしたそうに銀色に光っている。銀色だからきれいだって言うのは一般的なセンスなんなら、センスが悪いとか言われても一向に構わない。




 その間にもタイガーナイトは一人減り二人減り、もはやスキャビィ一人になっていた。



「ぬぅ……!ウエダ、貴様だけは、貴様だけは!」


 かなわなくとも、せめて一太刀だけでも。


 悲壮な決意を感じさせるほどの声で、スキャビィは俺に飛びかかって来る。


「降伏しろ!」

「お前が降れ……!」


 お互いに叶いっこない願望を叫びながら、得物を打ち合わせる。セブンスたちと仲間たち、それぞれへの思いを込めた一撃がぶつかり合う!


「ぐぐぐ……!!」


 ……事はなかった。


「おーっと前ばっかり見てちゃダメだよ」

「隙ありと言う事だ!」


 キアリアさんの剣とモルマさんの足が、スキャビィを捉えていた。

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