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二人の過去

「ほぼ同じ場所に来たっつーのかよ」

「まあ、そうなるであります」




 俺は二人目の同級生との再会を喜びながら、セブンスの食事作りを手伝った。まあ手伝いと言っても薪を拾ったり割ったりか、さもなくば配膳ぐらいしかしねえけどな。




「俺と赤井は、パラディンと僧侶ってアビリティをもらったらしい」

「異世界転移ならば山と見てまいりましたが、自分の身に起こると一体何をどうしていいのやらと言うのが正直な所であります!」

「にしてもえらく着慣れているな」

「我々はいつの間にかこの衣装になっていたのであります!学生服の着心地など忘れそうになってしまっているのであります……」

「まったくその通りだ。着慣れた制服、正直うっとおしいと思っていた事もあった。しかしこうして離れてみるとな……」


 パラディンってのは聖騎士だ、なまなかな騎士とはケタ違いだろう。そして僧侶ってのはそのまんま神様に仕えるお仕事だ。ったく、学生服しか見てねえはずなのにずいぶんとそれらしい衣装が似合ってやがる。まあびっくりするほどピッタリだぜ。




 もしかして学ランでやって来たの俺だけなのか?その点でも俺はぼっちなのかとかツッコミを入れる前に、二人とも学ランを懐かしそうに触りまくってる。

 あのな、上はまだいいけど下を触るのはカンペキにヤバい奴だぜ……。

 ひと月近くほとんど着ないでタンスの肥やしになってたせいか、セブンスがお遊び半分で着てたせいかずいぶんと色あせちまってしわだらけになっちまって、本当に悲しいぜ。


「俺はこうしてこの村の守り人になってたけどな、って言うかお前らは」

「言うまでもなく僧侶と聖騎士として戦っていたのであります!」

「赤井の回復魔法はありがたかったし、その上に説法もうまかったしな」

「すべては市村君が敵を倒してくれていたからであります、それとその辻説法の人を集めてくれていたのは市村君でありまして!」




 本当に仲のいい事だな。もともとそんなに仲良くなかったはずだけど、まあ赤井はアニメ好きなら来る物拒まずだったし、市村は誰とでもナチュラルに接してたからな、俺でさえもだ。まあ俺以外に二、三名ほど馬の合わない奴もいたが。



 俺が過去の黒歴史に思いをはせて居ると、セブンスが四人分の飯を作ってくれた。礼儀だとばかりに銀貨四枚を差し出す市村に対してセブンスが首を横に振るが、どうしても受け取れとばかりに赤井はテーブルに叩き付けた。



「律儀なんですね、ですが私の日給の半分近くを出されても」

「休みは何日ほどでありますか?」

「六日に一度ですが」

「結構あの食堂はもうかっているのでありますな……」

「おいおい、やっぱり俺ってヒモじゃねえかよ……」


 俺のここひと月の守り人としての給料は、あのエクセルからもらった銀貨百枚をのぞけば銀貨にして一七五枚だった。

 銀貨四枚が給料の半分って事は日給は八枚、三十日の内五日間休みだからゼロとすればだいたい二五日×八枚で二〇〇枚か……。


「セブンス、いやセブンスさん……」

「いいんですよ、私は気にしてませんから。でも今度はあなたが私を支える番ですから、それなりに路銀もありますしね」

「あっはっはっは……ああ飯がうめえ……」



 ちなみに赤井と市村の今月の所得は二人合わせて銀貨一五〇〇枚、って言うか金貨十四枚と銀貨九二枚と銅貨七三枚らしい。二人で割っても俺の四倍以上か……うーむすげえな。



「正直な話、村長様の息子さんからお前を斬れば金貨三枚くれるからと言われだけどな…………」

「金貨三枚、確かにひと月寝て暮らせる額ではありますが、それでもまったく罪のない存在を斬る必要などどこにもないのであります!まあ、立会人役ならばと言う事で受けてしまった方も受けてしまった方でありますが……」

「どれだけもらったんだよ」

「銀貨十枚だ、ケチくさいと思わないか?ってそれはさておき、これからも大変だぞ」

「そうであります!一般論ではありますが、ああいう手合いはあきらめると言う事を知らないであります!上田君がプライドを粉々にしてしまった以上、確実にもっととんでもない事をするであります!」

「あのー……」



 とんでもない事をするぞと熱弁を振るう赤井に呼応する市村、それで尻上がりの声で自分の作った飯を食おうとしない二人にいらだちを示すセブンスのいる中で、俺は逃げるように飯を適当に胃に放り込んだ。



「たぶんその金を受け取るまで喰わねえぞ二人とも」

「はいそうですか、本当律儀なんですねぇ……」

「で、何をやるって言うんだよ」

「そのですね、上田君の彼女を襲おうと言うのであります。ではいただきましょうか市村君!」

「どうぞ召し上がってください!」



 で、そのセブンスのいらだちは一発で吹っ飛んだ。急に営業スマイルと違う自然な笑顔になり、それでいて仕事場のようにてきぱき動き出した。

 ったく赤井ったら俺の彼女だなんて簡単に言いやがる、実際は彼女どころか嫁宣言したような奴なんだけどな……


「お前さ、命を狙われてるかもしれないんだぞ!」

「大丈夫です、ユーイチさんとお友だちの皆さんが守ってくれるのなら」


 って言うか真剣な話の最中に顔を赤らめるなよ……。

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