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ぼっちを極めた結果、どんな攻撃からもぼっちです。  作者: ウィザード・T
第七章 ハチムラ商会(第二部第一章)
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冒険者たちを集めて

スマブラ、最後のDLCファイター参戦!!まさか○○○○とはねえ。

 緑色のマントに青赤の上下。

 手元には付けペンらしき物体と、何らかの数字が書かれてるっぽい紙。




 紙押さえもないのにずいぶんとさらさらと書いている。


「と言うか都合が良すぎない?ハチムラ商会に八村がいるだなんて」

「本当、俺だって不思議だよ。いろいろとさ。まあ正直、口ばっかりだけどな動揺してたのは」

「へ?」

「噂になってたんだよ、冒険者歴十日ほどでみるみるうちにランクを上げて行くウエダって冒険者の名前」


 俺は思わず頭を下げた。ただでさえ調子に乗ってると言われたんだ、浮かれ上がって我を失うような事態は避けなきゃいけねえ。

「それでさ、八村、いや八村慎太郎は何をしてたんだ?」

「俺はさ、サンタンセンって町にやって来てさ。そこで親切なこの大商人様に拾ってもらったんだよ」

「私とユーイチさんみたいなものですね、ああ私はセブンス、ミルミル村出身です」

「ミルミル村って確かお茶の産地だったよね。本当にこの辺りはお茶が高くてね、紅茶…いや完熟茶ともなるとそれこそ一袋で金貨一枚だよ。もちろんミルミル村産のがね」

 俺らに割り込んで来たセブンスにも平静に対処し、話をまとめて行く姿勢と来たら本当に地に足がついてるよな。


「それで今は何をやってるんだよ、野暮だけどさ」

「ちょっとシンタロー、油売ってる場合じゃないぞ。ちょっと面接した冒険者たちのリストを見てくれ」

「了解しました。そういう訳だから上田、後でな」


 八村は背の高いおじさんに呼ばれながら小走りに去って行った。その後ろには何人かの男女が付き添い、決して身長の低くない八村の周りに群がっている。


「面倒を見られてるって感じはないね」

「むしろ見ている側であります。八村君、いや、慎太郎君にいろいろと聞いているような」

「八村はしっかりやっているようで何よりだな」


 八村にチート異能があるのかないのかはわからない。だがそんな事など関係なく、八村はしっかりと自分の立場に向き合っている。

 元の世界で既に自分の目標を見極めているからだろうか。


 自分の父親の会社の一部として経営を支え、そしてゆくゆくはもっと大きくしたい。単純明快だが、途方もない目標でもある。


「とりあえず、やはりどうしてもあの山賊連中が邪魔になるか」

「そうだよねー、だったら私たちも追いかけなきゃー」



 それはさておき俺らとしては、南へ行くためにも山賊狩りをしなければならない。


 キアリアさんたちがある程度は取り計らってくれているとか言うのは甘えだ、それこそ冒険者ってのは目先の仕事に食いつかなきゃいけない……んだろう。


「赤井、市村、俺が調子に乗ってるってさ、ほとんど流れだけで生きて来たからだろ?

 俺はずっとセブンスのヒモでさ、それでペルエ市に出て来てからもなんとなく巻き込まれたのに対処しているだけだった。自発的に依頼を受けたのはそれこそ赤井と一緒に行ったコボルド狩りの時ぐらいでさ」


 村の守り人って言う仕事だって、セブンスが持って来てくれたもんに過ぎない。後はもう移動するがてら否応なく覆いかぶさって来た火の粉を振り払っているだけで、自発的に金儲けのために仕事をした記憶はほとんどない。強いて言えばエスタでのリオンさんとの共闘やワーマン狩りは金儲けとも言えなくはないが、それだってあくまでもクラスメイトを探すと言う目的ありきだ。


「いや先ほどの件についてはお詫び申し上げるより他ないであります」

「さっきからずいぶんとセブンスちゃんの視線が怖くてね、それからまだ常識に囚われている気がして……」

「おいセブンス」

「何ですか?」


 赤井も大川も平身低頭している。セブンスが何かした気がしないでもないが、この際だから不問に伏そう、と言うかそうしないと話が進みそうにない。


 とにかく八村に会って山賊討伐団に加えてもらわないといけないとばかりに、俺は早歩きで八村の後を追った。


「おうおう、あいつら金目当てか?」

「本当、キアリアさんも大変だよな、ミタガワとかって恐ろしい女のせいで冒険者たちが全滅しちまってあんな坊やたちを頼らなきゃいけねえだなんて!」

「あれで確かUランクだってよ、それでサンタンセンじゃ二番目だって」

「まあ俺らもUランクには届かねえけどな。まぐれじゃねえか見せてもらおうじゃねえか」


 その間好き放題に言われまくる。だが全然気にはならない。


 ギンビのような強い冒険者がいないのも、今のサンタンセンにWランクのイトウさんとYランクのミワしかいないのも、俺が坊やと呼ばれるに値する年齢なのについても、みんな本当だからだ。わざわざ表情を変える理由もない。


「私、わかっちゃったかも」

「え」

「ウエダってさ、悪口とか全然気にしないでしょ。何か言われてもああそうだよねって過ごして来た口でしょ。アカイとかイチムラはたぶん違うんだよ」

「確かにその通りだよ」

「悪口雑言を聞かされても悪口あっこうんなもんだなってすぐ聞き流せちゃうって言うか、それってものすごい才能だよね」


 オユキのダジャレ混じりのアドバイスに、いやどっちかというとアドバイス混じりのダジャレを俺たち以外聞く人間はいない。

 例によって例のごとくトロベは笑っていたが、それがそんなに注目を集める訳でもなく、ハチムラ商会の使用しているらしい一角へ向けて冷気が流れて行く。



「ウエダ君、ずいぶんと積極的だね」

「キアリアさん」

「大丈夫だよ、ボクが取り計らっておいたからさ」


 そんなわけでやけにたくさん書類が積まれている吹きっさらしの机の前に座る八村たちの所へたどり着いた俺ら七人組を、キアリアさんは暖かく出迎えてくれた。モルマさんも苦笑いしながら頭を掻いている。


「いつも人任せか流されてですからね」

「流されてねえ、私も昔は流してたんだけどね」

「モルマさんは相当な冒険者だったんですよね」


 キアリアさんとモルマさんの前に三人いる冒険者さんたちの順番が終わるまで、モルマさんを観察してみる。

 サンタンセンのギルドにいる時よりは背も伸びているけど、やはりどこかくたびれた感じは否めない。そんで同じくたびれたと言ってもイトウさんは数年かけて押しのめされた感じだけど、こっちは何かにぶつかって一撃でやられた感じだ。


「ああ。でも数年前、ものすごい魔導士と戦ってやられてしまいましてね、もはやこの稼業でやって行くのは無理だと思って。まあ、ミタガワって娘ほどじゃないけどね」

「聞いた事あるよモルマさん、ガーメって炎魔術師ですよね。かつてキミカ王国を荒らしたって言う」

「姫を一人消し炭にしたと言う伝説の魔導士だな。そいつに挑みかかって名を挙げたかったんでしょう、よくわかりますよ」

「Aランク冒険者って言う夢がありましたからね」


 Aランク。単純な最上級とか言う次元を通り越した言葉が出るだけで、場が引き締まる。トロベも先ほどまで崩れていた顔を引き締め、気合を入れるように槍を地に叩き付ける。


「Aランク冒険者……それこそ国王に等しい、いや国王以上の権力者だな」

「今までいるんですか」

「一応基準としては、いち回戦の間に一万人のFランク以上の冒険者を倒せばAランクと言う事になっている」

「そんなのアリですか」

「だからいないのだ。だがBランク冒険者ならば歴史上4人ほどいる。その4人の末裔が四大王国を築いたと言う伝説もあるぐらいだ」


 それってBランクでも伝説級って事じゃないか。まったく、BランクとUランクだなんてフルマラソンで2時間を切るようなランナーと俺のような関東学生ローカル大会を目指すようなランナーぐらいの差があるんだろう。


「そう言えば三田川はCランクらしいけどな、ああもちろん除名されてるけど」

「無駄口を叩いてないで書類を処理しろ!サンタンセン産のドレスや小麦の量を!」

「もう三回もやりましたよタトさん、ナイヤンさんだってOKを出しましたし」

「ああそうでしたね!」




 そんな事を考えている内にどうやら順番が回って来たらしい。


 と言うか八村も大変だな、タトさんとか言う先達の、言うまでもなく金髪碧眼のそばかす男にずいぶんと突っかかられていて。

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