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パラディン様との戦い

 ずいぶんと俺のより長い剣を、相当な速さで振り回して来る。俺が1回斬る間に、パラディン様は2回斬って来る。


 もちろん、防戦一方になるしかない。俺は必死に剣で攻撃を受け止めた。




「さあ行け、行け!あの逃げるしか能のない奴に目にもの見せてやれ!」


 デーンは楽しそうに盛り上がってやがる。ったく、そんな人ごとそのものの姿勢の奴に誰が付いてくっつーのかね。

 カスロ村長もカスロ村長で、村の経営と女にしか興味ありませんと言わんばかりに屋敷に閉じこもっちまって、そんな調子で大丈夫なのかね息子の事は。


「ユーイチさん負けないで!」


 セブンスの声ってのはよくわからねえ。俺のことを心配してるのかしてないのか、単純に勝ってくれると信じてるのか。本当に、愛の力ってのはすごいね。まあぼっちだった俺は家族愛以外の愛はよくわからんけど。


「……噂通りか……」

 

 パラディン様はほぼ無言で俺に斬りかかり続ける。本当に隙のない戦いぶりだ。


 まあ一応、俺のチート異能のせいでパラディン様の攻撃は絶対に当たらない。俺がその隙を見て反撃を試みてみたが、もちろん当たらない。ちょっと突き出しただけですぐさま受け止められ、逃げるので精いっぱいになる。

 その隙を狙って来るが、やっぱりチート異能のせいで当たらない。こっちもまったく避ける気もなく打ちまくろうとしても、凌がれ続ける。


 攻撃に全振りしてなお当たらない俺と、攻撃と守りのバランスを取りながら当てられないパラディン様による戦い。俺に回避チート異能がなければあっという間に終わっていたはずの戦いは、やっぱり長引いた。


 俺のこれまでの勝ち方は、こうして相手が焦れた所をやっちまうと言うパターンだった。だがそれは、俺のスタミナが先に切れちまえば負けと言う意味でもある。

 そりゃさ、信じてない訳じゃないよ。でもそれにしても、ものすげえ太刀筋だ。盗みたいぐらいの太刀筋だ。




「おい、まだ決着がつかないのか!早くそいつを斬れ!」

「無理だよ、そんな剣で」


 少し余裕ができた俺は、パラディン様の剣に気が付いた。


 先端が潰れてるじゃねえか。ぶっちゃけ斬るんじゃなくてぶん殴る、って言うか練習用の剣じゃねえか?


「俺の剣はマジで人が斬れる、少なくとも魔物は斬ったからな。それじゃ不公平だから木の棒でも使わねえ?」


 パラディン様は俺の言葉に少しだけためらいながらも、再び飛びかかって来た。

 まあ別に、斬り殺しに来たわけじゃねえもんな、単に試合をしに来ただけだもんな。試合をして勝てば単純に名誉も得られるし(まあ俺から得られる名誉なんてあるのかわからねえけど)、単純にもうかるだろうしな。デーンの事だから派手に金出してるだろうし。


「おい神父、あれが本当にペルエ市で一番強いパラディン様なのか!なんであの攻撃が当たらない!?って言うか人を斬れない剣なんかよくもまあ!」

「それは、あくまでも今日は剣術の試合と言う事で参ったので……ございますから。あくまでも試合は試合であり、ですからその、神もまた無用に命を奪うのは良くない事であると、その……」


 デーンは立会人の男の聖職者に喰ってかかってるけどよ、たかが試合、ぶっちゃけスポーツと大差ねえそれで死ぬだなんてまっぴらごめんだぜ。

 もしかして俺が死ねばいいとか考えてるとか言うんなら、それこそ客観的に言って最低だな。

 ほれ見ろ、しもぶくれな顔のふくよかな聖職者様も聖書っぽいもんを抱えてめくりまくってるじゃねえか。あんなに動揺させやがってよ……。ノワル教とかってもんの教えを俺は知らねえけど、えらい奴がそうでねえ奴の勝手に生殺与奪を決めていいだなんていう教えなんぞねえ事ぐらい常識としてわかるだろ?



「だからですね、最初から疑問だったのですが……今からでも、デーンさんお自ら」

「るせえよ!」


 っておいバカ、関係ねえ第三者様に当たる奴があるか!剣を抜くんじゃねえ!


「その剣はホンマモンだろ、やめろバカ!」

「バカだと!このよそ者の泥棒男!もういい、何がパラディンだ、結局はあの同じエクセルと同じ程度の奴じゃねえか、もういい俺がやる!」


 デーンたら、あり得ない方角から叫びながら突っ込んで来た。1対1の真剣勝負に一体何のつもりだか……。


「最初からそうしろ!」

「うるせえ!!」


 俺はその必要もなかったが振り下ろされた剣を軽く飛んでよけ、デーンをパラディンと挟むような形になった。


「落ち着いて……」

「この役立たず!」


 パラディンが親父か兄貴のようにデーンに近寄った所で、デーンは思いっ切り剣を振り上げた。

 剣の先っぽが仮面に引っかかり、顎が見えた。

「あっあっ……」

 聖職者様があわてふためいている間に、パラディン様の顔を隠していた仮面が飛んだ。

 俺は後ろががら空きだった乱入者デーンを蹴倒し、その背中に右足を思いっきり乗せてやった。



「何をする、俺以下の力しかねえ奴にふさわしいその情けねえ顔を……」

「バカヤロー!どこが軟弱だ!?最初から挑みかからねえほうが軟弱だろうが!」


 俺だってとんでもねえもんをもらっちまった身だから大きな事は言えねえが、だとしてもこいつのやってる事はとても正当化できねえ。




 だいたい強引に兜を弾き飛ばして素顔を見ようだなんて乱暴だ!そんなに


「……やっぱり、上田裕一なのか!?」


 っておい、なんで俺の名前を知ってるんだ!?そりゃデーンから紹介を、って……!?







「市村正樹!?」

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