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ぼっちを極めた結果、どんな攻撃からもぼっちです。  作者: ウィザード・T
第六章 同級生の恐怖(第一部最終章)
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 消え去ったギルドを何も言わずに見つめるしかなかった俺の背中に、セブンスが抱きついて来た。




 俺の体が、真っ赤に輝く。




「お前、さらなるヘイト・マジックを!」

「ウエダさんには、ウエダさんには指一本触れさせません!!」




 そして風が巻き起こり、セブンスが絡めとられる。イトウさんの魔法によって巻き上げられたんだろうセブンスはすぐさま赤井たちの所へと戻って行く。




「まったく……どうしてこうも頭が悪いのよ!」

「どういう風に悪いんだよ!」

「これほどの力の差があるのにどうして素直に負けを認めないのよ、この空気男!!」

「俺の鎧を見て物を言え!」

「ただの安物じゃないの!」

「他に言う事があるだろうが!お前は俺に何回攻撃魔法を使ったよ!」


 泥と地面に付いた血での汚れはあるが、それが全てだった。ミミさんが作ってくれた小手もまたしかりであり、俺は全く無傷のままだ。


「ったく、すべてあんたのせいだからね!あんたがおとなしく私を認めないからでしょ!」

「お前は自分のやり方で認められるとでも思ってるのかよ!」


 誰も近寄れない。いや近寄らせない。


 自分がこの場での絶対者と言わんばかりに仁王立ちし、平穏無事な毎日を送っているサンタンセンの住民を恐慌に陥れているというのに、なぜ笑っていられるのか。




「ああもう、これでとっととひれ伏しなさい!」




 キレたいのは俺たちだと言うのにまるっきり逆ギレを続ける三田川の前に、今度は黒い壁が現れた。







三田川恵梨香


職業:賢者

HP:100000/100000

MP:9000000

物理攻撃力:10000

物理防御力:20000(デフォルト10000)

魔法防御力:20000(デフォルト10000)

素早さ:10000

使用可能魔法属性:炎、水、氷、土、風、雷、闇、光

特殊魔法:ステータス見聞・変身魔法・偽装魔法・変換魔法







 なんだこれは。




 白い枠の中に囲まれたいろんな文字と数字。




(ステータス表示……?)




 人並みの知識で似たような物を探していると、ほとんど同じ壁がもう一つ出現した。




上田裕一


職業:剣士

HP:100/100

MP:0

物理攻撃力:100(装備補正により150)

物理防御力:170(装備補正により154)

魔法防御力:190

素早さ:270

使用可能魔法属性:なし







 数字が違い過ぎる。



 なんて言うか、何にも言い返せない。




「別に私は、あんたを殺したい訳じゃないの」


 その言い返せない俺に対してさらに舌を回して来るが、驚くほどに刺さって来ない。


「あそこまで人殺しをしておいてよくもまあ」

「あんたは私らを集めて元の世界に帰りたいんでしょ?だから私を総大将にしますって言えばそれでいいだけなの!」

「悪いけど危険すぎる、ただでさえ遠藤や剣崎を何とかしなきゃいけねえのに、お前を抱え込んでいたら危なっかしくてしょうがない!お前を加えたら、何もかもお前が仕切るんだろう?」

「何がいけないの?」


 俺がぼっチート異能による絶対的な回避力により攻撃をあきらめさせるか疲弊させて戦意をもぎ取るように、三田川も圧倒的な実力差を見せつけようしているのかもしれない。その方向だけは一致している。


 だが、俺のそれだって敗北感を味合わせにくいゆえにうまく行きにくいが、三田川のように乱暴なやり方では主従関係はできても対等な関係はできない。独裁がいいとか悪いとか言うより、三田川自体があまりにも強引すぎる。

 

「本来この村は、このギルドはな、南に巣食う山賊連中を狩るために集められた人間たちがいた。お前はそれを根こそぎ殺したんだぞ!」

「で?」

「で?じゃないだろうが、お前は山賊の一味か!?」

「山賊なんかと一緒にしないでくれる?」

「敵の敵は味方だ!お前は南の国が、このサンタンセンの織物を買うのを妨害したも同然なんだぞ!その責任をどう取る!?」


 俺の難癖と言い切れないはずの質問に対する答えは、火の玉だけだった。


 当たらない火の玉を乱発し、地面を焦がさずに固める。


「不思議よ、本当に不思議!どうしてここまでの実力差があるのに立ち向かって来るの!?さっきの数字の意味、わかるでしょ!」

「わかっているよ、その上でその力をもう少しおとなしく使えばいいだけって言ってるんだよ」

「そんな悠長なことがよくできるわね。時間は有限なのよ、あんたらがぼさーっとしてる間に他の連中はどんどん強くなっているわよ!あっという間に追い抜かされて取り残される事が望みだなんて、あんたってバカか変態じゃないの!?」

「………………」


 本物の感情であればあるだけ、他人の心は動く。その事を俺は知らなかった。


 いや父さん母さんや柴原コーチのように真剣に俺の事を思ってくれる正の感情はよく伝わるのだが、三田川のような人間が発していただろう負の感情が俺の心に伝わる事はなかった。


(変態って言葉だけで、相手を縛り付けられるわけがないだろ……)


 変態って二文字が頭のおかしい人間と同義語であると言うのは、この世界でも同じらしい。だがそうやって叫んだところで実態がなければ言葉は軽くなる。


 と言うかこの場合、なぜ自分の思い通りにならないのかと言うわがままを披露しているだけであり、そのわがままに力と理屈をくっつけているだけなのが見え見えだ。


「何その顔、どうやら痛い目を見なければ分からないようね!」

「…………」

「何とか言いなさいよ!!」


 たぶん、この時の俺は恐ろしく退屈そうな顔になっていただろう。自分の狙い、と言うかわがままが通らなかった事に三田川はますます腹を立て、氷の槍を投げ付けている。

 言うまでもなく俺をハブり続けるその攻撃を放つたびに、三田川は目を光らせる。




 だがそんないらだちが頂点に達していたはずの三田川の顔がいきなり明るくなり、そして口角が上がった。




「もうこれ以上、抵抗しても無駄なんだから……」

「あのな、俺を倒す事は無駄だと」

「そうよ、あんたを倒す事はできない。でもね……!!」




 いったい何をする気だと振った俺の剣を、三田川は左手で容易く受け止めた。


 乱れに乱れたギルド跡地の一角で、ただただ不気味に笑う少女。







「さあ、私にひざを折らなかった事を、存分に後悔しなさっ!」







 いきなり、三田川の体が揺れた。







「何よあんた!」

「何やってるの、三田川!」




 ――――河野だ。

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