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ぼっちを極めた結果、どんな攻撃からもぼっちです。  作者: ウィザード・T
第六章 同級生の恐怖(第一部最終章)
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指輪の使い道

「お前、なんて事を!!」

「ユーイチさんは私が守る、いやユーイチさんとその仲間、ユーイチさんが守りたい物は私が守る……!!」




 セブンスは指輪と目を輝かせながら、ヘイト・マジックを放った右手を下ろしている。


「私に攻撃魔法があれば、私にもっと力があれば……!!」

「お嬢さん、その指輪どっから!」

「イトウさん、ごちゃごちゃ言ってないで早くユーイチさんのために!」

「あ、ああ……!」


 セブンスは声を轟かせると共に、キアリアさんの懐からもう一つの指輪をひったくってイトウさんの指に付けた。これまでにない機敏な挙動であり、その上に威圧感まである。


「おいこれ!」

「さあ風で吹き飛ばしてください、この壁を!そしてこれ以上犠牲を出さないためにも!」

「ああ……」

「聞こえてるんですか!!私ができないから頼んでるんです!!」

「わかった、わかったよ、まったくもう……!」

「皆さんもどうか、サンタンセンの町を守るんです!!」


 イトウさんの尻を強烈に叩きながら、俺たちにも檄を飛ばす。


「しょうがないな、やってみせますか!」


 俺たちを追い越して先頭に立ったイトウさんの手から、ものすごい嵐が巻き起こった。ガラスのように透明な壁が倒れ、大きな音を立てながら新たなる地面となる。


「見事であります……!」

「イトウさん、ユーイチさんを思いっきり風で飛ばしてください!私たちからはなるべく遠くへと引き離して!」

「ああ……!」


 それで俺に向かってものすごい強風、それもダイレクトな細い強風が吹き、俺の65キロプラス鎧の肉体が一挙にサンタンセンの宿屋まで飛ばされる。







「何無様な真似をさらしてるのよ!」


 結果として、俺はヘッドスライディングのような体勢で宿屋の前まで飛び込んで行くことになった。赤井たちは付いて来ない。

 別に寂しくはないしカッコ悪いとも思わないが、とりあえず三田川の口をふさげないのは残念だ。


「あんたは昔から生意気なのよ!私がさんざんああだこうだと言い聞かせてるのに馬耳東風で!」

「それはお前のセリフだろ!お前は一体何様のつもりだよ!」

「私と同じ空気を吸わないでくれる!」


 火柱が寝そべっていた俺に向かって迫り、やはり俺をぼっちにしながら消える。体を起こして剣を構えた俺に向かって来た雷もまた、同じ経過をたどって消えた。


「ずいぶんと身のこなしのいい事ね!」

「俺の目的はお前を止める事だ!なぜあんな真似をした!」

「私は自分に与えられた力を使っているだけよ、そしてその力により頂点に立つ事が目的なの!それの一体何が悪いの!」

「頂点に立つような人間があそこまで殺戮を行う必要があるのかよ、説明しろ!」

「一人殺せば殺人犯、百万人殺せば英雄よ!」


 ヘイト・マジックが有効なのか三田川は次々に攻撃をかけるが、それでも俺に当たる事はない。


 そうして俺への攻撃に夢中になった結果か、ギンビにかけていた魔法が効力を失いギンビが落下を始めた。宿屋のさらに倍ほどからの高さからの、とてもありえない速度での墜落。




「かろうじて息はあるか!」

「うるさーい!!」


 俺の「おいミワ」と言う四文字を封じるがために口からとてつもない大音声を放ち、同時にわざとらしく豪雨を降らせた。

 もちろん俺を物理的に黙らせるためだろう事は、俺が無傷であると言う時点ですぐさまわかった。


 だが俺に当たらないと言う事は、他には当たると言う事だ。


「てめえ!」

「なんでそんな顔になるのよ!」

「こんな事をしたら、このサンタンセンがどうなるかわかってんのか!?

 この町は織物の町だろ?それをこんな水ぶっかけて、綿花はどうなる麻はどうなるカイコはどうなる!」


 たまたま宿屋の付近にそういった類の場所はなかったとは言え、だとしても三田川は西側の街道にとんでもない打撃を与えた主犯であり、同時にこのサンタンセンのギルドの冒険者のほとんどを殺した大罪人であり、そしてその魔法によりサンタンセンの産業を破壊しかねない存在である。


「俺らはどうあがいてもこの世界に飯を食わせてもらっている身分だ!お前は何なんだ、この世界を壊してどうする気だ!」

「壊す気なんてないの、とっとと頭を下げればいいだけなの!」

「お前は力を振るい過ぎている!俺の力は俺の身を守る事はできる、だが俺の周りにいる奴は傷つく!お前だって」

「わからないの!世界はしょせん弱肉強食!その世界の原理のわからないようなぐうたら共に負けるような事なんか、あってはならないの!」


 かろうじて体を起こしたギンビに構う事もなく、俺に罵詈雑言と攻撃魔法を投げ付け続ける三田川の言葉に、俺は剣で答えた。

 三田川も剣を取り出して軽く振り、俺の剣を弾く。


「どこで作ったのか買ったのかわからねえけど、その剣もなかなかじゃねえか!」

「何そんな能天気な事ぬかしてるの、って言うかそんなのろま極まる動きでどうする気なの!」

「俺たちは元の世界に帰るんだよ!そのためにはまずこの世界で何とかしなきゃならねえはずだ!お前のやり方じゃ誰も助からねえよ!って言うかお前、この世界全部の存在を殺すか従わせるかする気か!」

「真面目に物を言いなさいよ!」

「最初から言ってるだろ、それともお前はこの世界に骨を埋めてもいいのか!」


 三田川の剣が激しく動く。言葉以上に激しく動き、俺を切り裂こうとする。

 その上に魔法と思しき風の刃や火の玉が次々に飛んで来るが、それらが形勢を変える事はない。


 いつも通りの、打ち合いだ。俺の技量のなさとチート異能による、千日手。


 どんな相手だろうと、いつもこうなる。俺の攻撃もみんなからぼっちにされているのかと思うと、寂しくもあり面倒くさくもありだ。


「ああもう!どうして!」

「どうしても何もないだろう、俺はWランクに過ぎない、そのWランクと互角なのがお前の身のほどだよ!」

「ふざけるんじゃないわよ、あんた何様のつもり!」

「何様のつもりだって、ただの高校一年生様のつもりだよ、お前と同じ!」


 ファンタジーやアニメじゃあるまいしなんでただの高校一年生がこうも命がけの戦いをしなければならないんだよ、とか言うお話はもうあきらめた。あきらめられないのは、もう少しましな理由でやりたいと言う事だけだ。


 確かにクラス全員を集めて元の世界に帰ると言う目的について誰が主導権を握るかは重要ではあるが、三田川にはとても任せられない。

 もし三田川を加えるのならば、三田川が絶対に言う事を聞くような奴がいなきゃならない。



「ああうざいうざい!」

「まじめに話を聞け!」

「黙りなさいよ!」




 岩の雨が降る。落下こそゆっくりだが俺の頭を狙っての実に絶妙なコントロール。


 だが俺はぼっちだ、当たらない。




 そう、「俺には」当たらない。




「おいギンビ!」

「転生したら、せいぜい口を慎むようにする事ね!」




 岩は一発目でようやく立ち上がっていたギンビの背中を打ってなぎ倒し、二発目で頭蓋骨を砕き、三発目でギンビを完全な死体に変えた。




「お前!」

「あんただって何十人と人を殺してるんでしょ!」

「お前のは人殺しのための人殺しだ!」

「私はね、どこまでも往生際の悪い男におしおきをしただけなの!だのにいくらやっても聞かないから……!」


 どんだけ上から目線なんだよ、この女は……!

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