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ぼっちを極めた結果、どんな攻撃からもぼっちです。  作者: ウィザード・T
第六章 同級生の恐怖(第一部最終章)
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三田川恵梨香

 妙に長い黒髪をたなびかせ、セーラー服を身にまとい、ついでに右手の中指と薬指に指輪を付けている。




 宿屋の屋根に立っている人間の容姿を一言で解説するとそうなる。




「まったく、どうして今までずーっと私を待たせてたわけ?困っていて困っていてしょうがないって言うんなら、私にひざまずいて何とかしてくださいって頼むべきじゃないの?本当にもう、そこのニート予備軍共々、この世界を楽しんじゃってたわけ?」

「たった今までお前の所在すら知らなかったんだよ、こちとら命のやり取りを何度したと思ってる!」

「上田、あなた何をやってるの?」

「何をやってるも何も、そうしなければ生き残れなかったんだからしょうがないだろ!お前だって似たような事をやって来た、って言うかやってるだろ三田川恵梨香!」


 メガホンならぬ拡声魔法(あるか知らないけど)でも使っているのか、数百メートル単位の距離があるくせにやけによく届く。

 本当にその声ひとつであらゆる所に届かせ、って言うか目標を見つけ次第いたぶって来たんだろうな、この三田川恵梨香って女は。




「ミタガワエリカ?聞いたことがねえな」

「俺らの世界の女だ、いや正直他人にしたいけど」

「そんな他人行儀にする事ないじゃない、だって一応クラスメイトなんだし」


 もし万一人狼ゲームや陶片追放って奴があったんなら、俺はすぐさま三田川に投票してやりたい。

 俺らしくもないが、誰か一人をそこまで憎んだのは三田川が初めてかもしれねえ。


「だったら今すぐ平林に謝って来い、もちろん俺らの目の前まで連れ込んだ上でな」


 と言ってもそうするだけで消えるレベルの憎しみでしかないが、それでも三田川の平林倫子に対する扱いは、俺から言わせれば常軌を逸していた。


 時間に遅れれば一日中遅刻を咎め、早く来れば余裕がないと笑い、ぴったりに来れば朝がなっていないと怒鳴る。

 元々素直で気弱だったらしい彼女はあっという間に三田川の的になり、三田川は一から十まで倫子の挙動を咎めまくった。もちろん市村や河野、大川や先生は注意しまくったが、三田川は文字通りの馬耳東風で口だけでも謝ろうとしなかった。

(それでちょっとおとなしくなったかと思うと猛烈にレベルアップして、それで少しでも作ったと言うか見つけられた隙を全力で埋めにかかる……ったく、本当にもったいないよな)

 三田川が普段何をしているのかは知らない。それこそ必死になって穴を埋め、俺らと二歩も三歩も違う所を見せつけてやろうと躍起になって行動しているのだとは思うが、少なくとも三田川の家が金持ちだと言う話は聞いたことがない。

 彼女の自慢はあくまでも成績や資格だけで、あれこれの物品を自慢した話を聞くたびに逆にそれでしか自慢できないなんてかわいそうとか言っちまうのが三田川だ。




「謝れ!?まったく昔から思ってたけど本当にトンチンカンなのね、私は謝らなければいけないようなことは何にもしてないけれど?」

「……わかっただろ、俺らが同類項にされたくない理由が」




 実に腹立たしいことに、三田川にもチート異能はあるらしい。しかも、相当に強力な奴が。


 サンタンセンの宿屋はペルエ市ほどではないが建物が高く、クチカケやシギョナツのような平屋ではない。そんな屋根の上に立つのは、それこそ魔法の力でもなければ無理だろう。

 おそらくはチート異能により空でも飛べるんだろう。それでおそらくはそこから雷やら火の玉やらを投げ付け、ギンビとその仲間たちを狙って来たという寸法だろう。




「って言うか、何だおい、その格好は」

「それはこっちのセリフですけど!」

「この世界じゃそっちのがよっぽど奇異な格好だよ!」




 そして三田川は、セーラー服を着ている。たぶん普段はこの世界の服を着ていざって時に着るようにしているのだと思うが、どっちにせよこの世界じゃ完璧によそ者の装束だ。



「キャー!!」

「ミワ!」

「実験は成功だったようね……」


 その俺の疑問に対し、三田川は雷をもって応えた。


 俺らじゃなくミワ、騒ぎを聞きつけて重たい体を無理やり動かして宿屋から出て来たミワの頭めがけて。




「てめえ!彼女は関係ねえだろ!」

「あら、本来ならあんたらを負かして連れてくるはずだったのに失敗したから、それ相応のお仕置きをしただけなんだけど?」

「バカ、弱り切っている奴を何だと思っている!お前は人を何だと思ってるんだ!」

「ただの実験台よ?私の発明品の」




 ああそうだよなと納得してしまう自分が、嫌で嫌で仕方がなかった。

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