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ぼっちを極めた結果、どんな攻撃からもぼっちです。  作者: ウィザード・T
第六章 同級生の恐怖(第一部最終章)
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グミナ=シコ

「何だよ、昨日に続いて何の用だ坊や?しかもそんなにぞろぞろ引き連れてよぉ」




 次の日、悪目立ちの権化のような極彩色のギルドへと向かった俺らに、さっそくまたあのギンビとかいう奴が絡んで来た。



 右手の剣に手をかけながら、左手を耳の上で回している。この世界なりの挑発なのかもしれねえけど、だとしたらやっぱりお見事なお話だ。


「おい、何だ?昨日に引き続き挨拶なしか?お前ランクはいくつだよ」

「Wですけど」

「っておい、嘘吐くんじゃねえ!」

「いいえ、見せてもいいですけど」

「見せなくともいい、本来ならSランクのトロベが先頭に立つもんだろう?それが何なんだ、たかがWの分際で?なあお前」


 ギンビは後ろの女に向かって右手の親指と人差し指でVサインを作り、後ろの赤色の髪の毛の女はそれに対し親指と人差し指でJのマークを作った。ギンビのランクを示すつもりだろう。




(青い髪でロングヘアーの女か……)


 もっとも俺の目は、そんな連中の方には向いていなかった。あの後話してくれた、「青く長い髪の毛の女」の事ばかり探していた。

(「エンドウさんは私に言ってたのです、これをくれたのは実はそういう女性だって」)

 そんな危ないもんを作る女性がこんな所に来るとは思わない。とは言え裏の裏をかいている可能性はある以上、とりあえず探してみるつもりではいた。


「言っておくがギンビ殿、彼は私より強い。言うまでもなく強い」

「知ってるよんなこたぁよ、よくも昨日はコップを無駄に割りやがったなあ?」

「投げ付けたのはそっちでしょ、いったいあれいくらしたんです」

「銀貨五十枚だよ、ったくその後は酒がマズいの何の……お前のせいだからな?」

 

 ぼっチート異能のせいで俺に当たり損ねたコップがそんな高値な代物だなんて驚きだよ、ったくどうしてそんなもんを使い捨てにできるのか。って言うかコップは投げるもんじゃないんだけどな……。


「昨日の指輪はどうしました?」

「あれですか、一応指輪と宝石を外した上で調べてみたんですが、やっぱり相当危険な代物ですね」

「どっちがですか」

「両方です。ただ指輪の方は呪文だけで、宝石は」

「んだよお前ら、同じもんを持ってたんだろー?」


 それでギルドマスターの説明中だってのに割り込んで来るしさ、そんで誰もツッコもうとしないし、こいつにだけは渡しちゃいけねえってはっきりわかる。


「ギルドマスター説明を」

「宝石はあくまでも呪文を発揮させるための力の供給源でしかねえんだろ?そんでそんんなら他の事に使えばいいとか思ったか?ああ思っただろ?わかるんだよその顔でな。でもよ、こういう宝石ってのはおおむね指輪との結びつきをぶっ壊すとただの宝石になっちまうんだ、あーあ残念でしたー」

「人の話聞いてます?」

「お前な、このギンビ様が話してるのに聞いてねえのか?」

「俺も人と話すのは下手くそだって自信ありますけどね」




 俺の肩の上を、何かがすり抜けて行く。


 何かって言うか明らかに火の玉だが、あわてて市村たちが避けたせいでただ床を焦がしただけに終わった。


「ちょっと困るんですけど、ギルド内での私闘はご法度だよ!」

「ふーん、結構大した反射神経じゃん?Vランクに上げてやってもいいぜ?」

「ギルドマスターさんの了解を得ない事には」

「って言うかさ、お前さんの連れはずいぶんと美女ぞろいだなあ?」

「それでギルドマスターさん」


 たぶん、ギンビじゃない誰かが俺に手を出したのだろう。おそらくはギンビの後ろにいる女だろうが、そう断定するには容疑者が多すぎる。


(「Wランク、いやVランクでもこのギルドでは最低に近いレベルだよ。Sランクってのを振りかざしても空しいだけだよ、Rランク以上が十人以上いるんだから」)


 ランクの高さ=人間性でない事はとっくに学んだが、まだ=強さではないと言う事はわからない。

 って言うかみんなして俺らなんか眺めて、他にする事ないんだろうか。


「で、だ。用が済んだんならとっととけえれ!ここはお前みたいなインチキヤローが来る所じゃねえんだよ!」

「インチキとは何ですか!」

「ほう……お嬢ちゃん可愛いねえ。名前は何って言うんだい」

「ウエダさんの彼女とだけ言っておきます!」


 おいおいセブンス、何魔法を構えてるんだよ!

 確かにヘイト・マジックを使いたい気持ちはわかるよ、この顔だけ良くて後は全部ダメな男を前にして憤るのもわかるよ本当。


「って言うかさ、男三人に女四人……」

「ひとり余ってるじゃねえか、おいトロベ」

「私はウエダ殿を武人として尊敬している。ギンビ殿は何を考えている?」

「何ってさ、この素晴らしい俺たちの仲間にしてやろうって言ってるんだよ」

「それで山賊退治をしたら終了だろうな」

「当たり前よ、せっかくあの万年Xランク野郎でも使おうと思ったのによー、あいつがバカ、いやバカ正直をやったせいでなー!あーあ、金貨百枚がもったいねーなー」


 今日も坂道補修に励んでいる真面目なイトウさんに対する物言い、ずいぶんって次元を通り越した言い草だ。個人的には指輪もさることながら南の盗賊団にも腹が立っているし、囮役は絶好の役目ではあると言う自負があるが、こんなのが頭では従う気が起きない。


「キアリアさんに全面的に指揮を預けてくれるんなら従いますけど」

「うっわー、ないわー……」

「あのうぬぼれ屋甘ちゃん剣士様に~?トロベ~、こいつギャグセンスなさすぎねえ?」

「一周回って笑えるかも!」

「貴殿らの反応は笑えるがな」


 それでほんのちょっとだけ歩み寄ってやったつもりになったら、円形のギルド全方向からこの反応。トロベも呆れ顔でため息を吐いてくれたけどさ、ったくやんなるね。




「ってかさ、さっき言っただろ?用件が済んだならとっとと出てけって。それとも俺の率いる盗賊討伐団にでも入りたいのか?」

「キアリアさんが率いるのならばと言いましたけど」

「じゃあとっとと出てけよ、と言うか俺ら二度も恥を掻かせやがって、お前らは出禁だ!」


 おいおい、ギルド内部の人間が一斉に迫って来てるよ、本気で叩き出す気満々じゃねえか。

 ここまでギルドマスターの姿が見えていないかのように振る舞えるのって本当にすごいね。

 っておいセブンスやめろ、何お前までヘイト・マジックを放つ気満々なんだよ!



「それがお嬢ちゃんの魔法かい?」

「そうです、これがウエダさんにかかれば!」

「生意気な女だ……よーし決めた、ウエダとか言ったな」




 セブンスを手籠めにする気かよ、遠藤と同じように本気でやるしかねえのかよとか覚悟を決めようとしていると、いきなり強い光の球が現れた。




「ちょっとあんたら!」

「おいちょっと、どうしたよグミナ=シコ」


 グミナ=シコとか言う、エメラルドグリーン色のツインテールをした魔導士の女性。




 彼女の手から、その光の球は浮かんでいた。

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