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ぼっちを極めた結果、どんな攻撃からもぼっちです。  作者: ウィザード・T
第六章 同級生の恐怖(第一部最終章)
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Jランク冒険者、ギンビ

「悪いのは運と間だけですから……」

「本当に申し訳ございません、分不相応な真似をしてしまいまして……」



 ミワを宿屋に運んだ俺はギルドと言う名の悪目立ちする建物にイトウを連れて行き、キアリアさん共々ギルドマスターに陳謝させた。


 本当に小さく縮こまっていて可哀想なオジサンだ、なぜまたわざわざこんな刺すような視線を向けなければならないのだろうか。


「おい小僧、その責任者とやらとなんかあったのか!」

「なんかってなんですか」

「あの泥と磯の香りしかしねえシギョナツとの間の道をぶっこわしたそうじゃねえかよ、このまぐれ当たりWランクのオッサンがよぉ!」

「壊したのはミワとエンドウですけど、むしろこの人は止めてたんですけど!」

「おいおいこんな坊やにかばわれて恥ずかしくねえのか?やっぱりお前は万年パシリ野郎だな!」

「アッハッハッハー!」

「バカっていう奴がバカって本当だなって思いますよ!」

「お前よ、名前は何だ?ランクは何だ?」


 一応は敵味方であったはずの人間のために俺は思わず吠えた。


 遠藤に申し訳ないと思わなかったわけではないが、それ以上にギルド内にいる連中がむやみやたらにイトウを叩く姿がみっともなくてしょうがなかったもんでついカッとなって吠えると、軽蔑の視線がこっちに向かって来た。


「ウエダユーイチ、ランクはWです」

「なんだよオッサンと同じじゃねえか、十何年やっててやっとここまで来た奴をかばおうだなんて、本当にお人好しなんだな!」

「逆に聞きますけど、そんな大した事のないはずの存在に何故にこだわるのです?」


 自分なりに考えたいじめの真理って奴はそれだと思う。


 いじめってのは本来ならば見下しであり、本人からしてみれば格下だと見た相手を強者の立場を振りかざしていたぶる事にある。

 だがそれこそその相手に執着している証拠であり、逆に言えば依存症みたいなもんでもあるとも言えるんじゃないだろうか。


 三田川恵梨香なんかは平林を四六時中いたぶり続け、それでも一向に飽きる様子がない。俺にすら絡んでくる辺り元からそういう性格なのかもしれねえが、正直別の意味で血の気が引く。


「おいおい坊や、その言い方からするとエンドウってのが責任者のようだなあ、そいつを俺に新たなる手柄にさせてもらおうか?」

「悪いけどギンビさん、そいつは俺が取りますんで」

「ギンビさんじゃなきゃ勝てねえんじゃねえか」

「ギンビ殿、そのエンドウはとんでもない魔術使いです。このウエダがとどめを刺そうとした所を素早く逃げ出しました、これをご覧ください」


 ギンビとかってギルドマスターの真横の席でにやつきながら酒を注がれている男と取り巻き連中の物言いに面倒くさいと思って俺がギルドマスターさんの方に集中しようすると、キアリアさんは遠藤に付いていた一番大きな指輪を懐から出した。

 大きな宝石のわっかの裏に記されたたぶん呪文かなんかが発動したのが遠藤の力なのか、指輪の力なのかはわからねえけど、いずれにせよこれが相当重要なシロモノである事には間違いない。


「なんだぁ、その指輪をエンドウとかって奴が付けてたのか?」

「そうです。ですが言っておきますが絶対に生かして捕まえてくださいね。そうでなければ次はギンビさんがエンドウのようになりますので」

「あーあ、ったく派手派手な格好をしておいて堅物なんだからよぉ!わかってるよ、死なない程度には痛めつけて拘束して置いてやるからよ、ああ死んだらとぅいませーんって言ってやるからよ、ハッハッハ……おーいグミナ、酒ー!」

「はいはーい……」


 キアリアさんはその指輪をギルドマスターに渡し、ギンビと言う名のプリン頭な男と、ついでにその男が投げ付けて来たコップを無視してギルドから立ち去った。

 陶器だか土器だかわからないコップが割れ、地面にきれいな模様を見せている。あーあもったいねえ。







「あのギンビってのは」

「この辺りで一番の冒険者、Jランク冒険者だ」

「J!?こちとらNのキアリアさんとですら力の差を感じているのに!」

「まあかなり強いんだが、その力を恃みすぎる所があってね、自分が一番うまく引っ張って行けるって信じてる節があるんだよ」


 かなりオブラートに包んでいるのがわかる。そりゃJランクって言えばNランクの4つ上だから相当な強者なんだろうけど、だとしても正直あまりにも我が物顔をし過ぎている。


「ギルドマスターさんはうまく回せるんですか」

「回せるから安心していい。まあとにかくイトウさん、勤労奉仕お願いいたします。何か難癖を付けられても私が守りますから」

「本当はミワにもやらせたいんですがね……」

「それまでに直りきったらどうするんですかね」

「それこそ別の形での無償労働を与えることになるだろうな。いずれにせよあれに懲りてくれれば幸いだよ。私だって此度の一件には責任があるからね、彼女は焦ってたんだろう、野心の大きさと成果のなさが噛み合ってなくて、それがどんどん悪循環を引き起こしていた。

 おそらくその指輪は、力を与えると同時にそういう性質も強化してしまうんだろう」


 それでイトウの罰は荒れた坂道の無償労働による修繕だけで済むらしい。もちろんミワも同様の罰を受けるが、何せあの状態なので回復するまでは猶予があると言う。


 しかしミワの力だけでなくそういういら立ちまで増幅させるだなんて、なんてえ恐ろしい宝石だよ。俺らが止めなきゃそれこそ死ぬまで戦ってたかもしれねえとするとそれこそ呪いのアイテムじゃねえか。


「この宝石の内ひとつは私が預かっておく。残る一つは君たちが好きにするといい。もちろん乱用はするなよ」

「要りませんよ、こんなおっかない物」

「だがイトウさんはそこまで危険ではなかったんだろう?だとしたら持ち主が善良であればそれこそかなり強力な武器になりうる可能性がある。まあ君が言うように基本的には危険極まる代物だけどね、何もかも使いようなんだよ」




 何もかも使いようか……ああ、捨てたいぜこんな宝石!

指輪物語って言うなよ!

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