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ぼっちを極めた結果、どんな攻撃からもぼっちです。  作者: ウィザード・T
第六章 同級生の恐怖(第一部最終章)
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裏目に出た親心

 Nランクってのは、今の俺のWランクより九つ上。それこそ雲の上のレベルでしかない。


「ミワ、このトロベを知っているだろう?」

「知っているのです、いつもいけ好かない上から目線の!」

「いつもも何も、このサンタンセンには私は数日しかいなかったぞ」

「いいえ、カイコズやリョータイでさんざんもてあそばれたのです!いつもいつも、キアリアと一緒に私の事をバカにして!」

「いつ何時どうやってだよ!」

「ミワの身は(ミワ)一つしかないんだから大事にしろって言っておいて、その後大笑いするんですよ!」

「……まあそれはしょうがねえな」


 もてあそぶって言葉は、それこそトロベから一番遠いそれに聞こえる。


 俺たちはトロベと知り合ってまだ二、三日だが、トロベは実に誠実な騎士であり、クラスで一番人間的に立派だったはずの大川でさえもその振る舞いに感心していた。


 ああ、自分で言い出したダジャレに笑わなきゃだけどな。って言うかまた笑ってるし……。




「おっと、行動不能の相手を討つのはよくないよ」

「これはもうしょうがないんだから、それでへそを曲げてたらやってられないぞ」

「それは納得しても、キアリアは許せないのです!イトウだって」

「俺は元から万年Xランクで十分だったんだよ、お嬢ちゃんはむさぼりすぎるんだよ昔から」

「私は、私は、それが許せなかったんですよ!」


 遠藤もミワも、相変わらず何かに操られているかのように得物を振り回し続ける。俺のチート異能とキアリアさんの剣術の前に容易く受け止められてるってのに、何なんだよ本当……って言うか赤井も市村も大川も(ああ笑っちゃってるトロベはともかく)手を出せない時点で、本当ならとっくのとうに勝ってるはずなんだろうな。

 その点陸上ってのはお気楽かもしれねえ、ちゃんと〇〇キロ走れば終わるんだから、否も応もなく。


「私の夢は伝説のAランク冒険者、この世界の頂点!」

「そんなのは文字通りの神話であり、現時点の最高はCランクだよ。Aランクだなんてそれこそ魔王でも単身で倒さなければ無理だから。ゆっくりと力を付けても」

「そうやっていつまで経っても待て待て待て待て……!これ以上私をバカにするのも大概にしてください!!」


 トロベを狙おうとして止められたミワがいきなり杖から右手を離し、その右手を胸に当てながら突撃し出した。後ろ向きでもわかるほどに指輪が光っている。


「おいバカ!」

「バカとは何だよバカとは!!」


 打撃を受ける事なんかまったく考えていない突撃、それと同じ戦法を一度見た事がある。


 そう、他ならぬ俺の戦法だ。




 そんでそれはあまりにも危険な戦法、あくまでも仲間ありきの戦法じゃないか!


 あまりにも無謀すぎるその行いを止めさせようとするが、その甲斐もなく遠藤は俺の口をそれ以上の音量で塞ぎにかかり、ミワはキアリアさんに特攻をかけてしまった。




「おっと!」

「そうです、私は強いのです、屁理屈ばかりこねて万年Yランク呼ばわりされる筋合いはないのです、アハハハ……!」

「おい待て!」


 捨て身の特攻ほど恐ろしいもんはない。元よりミワと遠藤の戦意を薙ぎ払う事が目的だっただろうキアリアさんは思わず後ずさってしまい、ミワに押され出してしまった。


 市村もあわてて助けに入るが、俺のよりずっと鋭いはずの剣を簡単に受け止めている。



 

 確かに強い。でも、明らかに白魔導士に求められる強さじゃない。


「お前その戦い方ってはっきり言ってさ、ただの野蛮人だぞ」

「野蛮人ですって!?」


 野蛮人って単語が言い過ぎだとは思わない。白魔導士とか僧侶ってのは、本来傷ついた仲間を癒して賞されるものじゃないだろうか。

 実際赤井だってひとりも敵を殺していない、せいぜい殴り倒したぐらいだ。それでVランクなんだから、それこそ本職にふさわしいやり方なんじゃないだろうか。


「本当に大した男だね、まだ出会って数分なのにそこまで言い切れるなんて」

「もしかしてキアリアもずっと私を野蛮人だと思って!だからランクを止めていたと!」

「10回は注意したはずだけどなぁ、そんなんだからキミは良くないって、ランクを上げる訳には行かないって」

「10回も言って聞かないのは正直」

「20回も同じ事ばかり言ってアホなのかとは思いましたけど!」


 10回とか20回とかはともかく、ミワって人間がどういう人間だったのかはもうわかりすぎるぐらいわかった。


「2年以上ランクを留め置かれたとか聞いたけど、その間に何とかしようとか思わなかったのか?」

「一度だけ怒鳴ったよ、はっきりとそんな戦い方じゃ無理だって。でもね、一度山賊狩りの際にミワはその杖で二人の山賊を殴り倒した」

「元から腕力は強かったのかよ!」

「私は早く認めてもらいたかったのです!だってのにそれじゃないそれじゃないって!」


 その山賊の程度ってのがどのレベルなのかわかりゃしないけど、確かに二人の山賊をなぎ倒すとは半端な腕じゃない。


 ————でも、ランクを上げる事はしなかったそうだ。


「って言うかキアリアさんってギルドマスターか?」

「違うよ、ただ長いだけ。その分だけわがままも通るんだけどね。

 でも彼女の件に関しては彼女が白魔導士の本質って奴をつかむまではランク昇進などさせるつもりはなかったんだよ。それがわかれば実力からしてすぐさまXランクとは言わず、WやVに上げてもよかったんだけどね」

「他に組む奴はいなかったのか?」

「無理だよ……誰と組んでもこの有様なもんで、俺のような万年Xランクの、冒険者と言う名の便利屋様ぐらいしかもういねえんだよ。ほれよ」


 イトウが起こす風魔法、って言うかそよ風魔法。ああこれで布を乾かしてたんですとか、暑い時期の冷房になってたんですとか言われても納得しちゃうぐらいの力。


「さっきミワをずらしたのはあの宝石のおかげ様だよ、でももういいかなってね」


 仲間を救おうとするためにその力を使うのは正直カッコいい、絵になる。でもやっぱり個人的には問題らしい。


「その姿勢は素晴らしいと思いますよ。まあミワには、ほんの少しでも飴を与えておくべきだったかもしれないって反省はあるんだけどね……まあいずれにせよもう油断する必要もないかな」

「望む所です!今日こそキアリアを越え、私がいかに素晴らしい冒険者か証明して見せるのです!」

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