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ぼっちを極めた結果、どんな攻撃からもぼっちです。  作者: ウィザード・T
第六章 同級生の恐怖(第一部最終章)
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赤い剣士参上

「エンドウ、無理な事を言うな!」

「無理とは何だ無理とは!」

「セブンスは死ぬだろうな、上田に万一の事あれば。死なないとしても全力でお前を仇として討ちに来る」

「何を言っている、だからおとなしく従えばいいんだよ!」

「俺にだってチート異能はある!わかってるだろ、お前の攻撃は絶対に俺に当たらないって事を!これまでお前ら何回俺に攻撃してきた!?」

「ざけんじゃねえ!そんなの反則だろうが!」

「反則はお互い様だ!」

 

 どうしてお前のが俺より強いのか、そんな文句以外は聞く気はない。


 なぜ俺達にそんなもんが付いてるのか、そしてどうして人によって差異があるのか。そんな事はわからない。わかるのは、そのチート異能って切り札を武器に、この世界でとりあえず立ち回るべきだって事だけだ。



 遠藤は再び剣を振り回す。だがもちろん当たらない。地面がぐちゃぐちゃになっているせいか大きく近づきづらいがそれでも再び距離を詰めてやろうとばかりじっと足元を確認し、そして間を詰めて来る。


 ミワも杖など要らぬとばかりに自分に何らかの補助魔法でもかけたのか、激しく速く殴りかかって来る。


「あのさ、そこまでして勝ってどうするんだよ、魔力が尽きる、いやマイナスになるぞ」

「魔力など使ってないのです!……さっきの加速魔法以外。と言うかいいかげん参ったと言うべきです!」

「だーかーらー、その指輪を外して寄越せば見なかったことにするって言ってるだろうが!」


 緑色の宝石の光がどんどん眩しくなる。一体どういう仕組みなのか知りたくもないが、おそらくは何らかの代償を払わせているのだろう。



「この指輪を付けてからとっても強くなれたのに、何故邪魔をするのです!やっぱり白魔導士を、いやYランク冒険者をバカにするのですか!」

「俺だってちょっと前までYランクだったんだよ!ちゃんとやってればランクも上がるだろうが!」

「二年間もYランクのままだったのです、Zランクからは十日で上がれたのに!いくら頑張っても万年Yランクと蔑まれる気持ちがわかるのですか!」

「だから他にも方法があるだろうが!」

「この前だって、いくらやっても仲間ばかりがランクが上がり、私にはわずかな小銭ばかりが入るだけで、いつまで経ってもこんな生活、もうイヤなんですっ!」




 うだつの上がらない自分を披露するミワの頭に、緑色の光弾が飛んだ。



 いや、正確には緑色の指輪が飛んだ。



「魔力マイナスか……ったく勘弁してもらいたいよなあ」

「イトウ!」

「魔力マイナスこそ、魔導士が一番恐れる奴だ。一晩寝れば回復するからって調子に乗って、全てを失ったやつは山といるぞ。このサンタンセンやシギョナツにも、その手の連中はいるだろう。まあそれ専門の医師もいるらしいが、そんなもんにかかれるのは最低でもGランク以上、基本的には王侯貴族様のもんだ」


 イトウは体を起こしながら、両手を上げる。降伏のサインって奴は、どこの世界でも変わらないらしい。


「エンドウ。確かにあんたのおかげで俺は強い魔法を使う事もできたしランクもWランクにまで上がった。ありがとうよ。でも俺はやっぱり万年Xランクとして地味にやる方が似合ってる。もうこれ以上、あんたにもらった恩を返す必要はねえ」


 イトウはその態勢のまま、背中の遠藤に向けて礼を言う。赤井も市村もおとなしく得物を下ろし、一応は敵であったイトウを迎え入れようとしている。


「でもこの指輪は危険だよ。元から俺はこんなにムダにヒゲ生やしちまった程度にはぐうたらなオッサンだけどよ、これ付けてからますますやる気がなくなってな。こいつは劇薬だ。俺には、いや誰にもふさわしくない。こんなもんを付けられるのはそれこそ伝説の勇者様ぐらいのもんだ」

「伝説の勇者様だなんて、そんなもんがこの世界にいるのか」

「エンドウが言ってたよ、こういう世界にはいっつも伝説の勇者様って奴がいてさ、そいつが全てを解決してくれるって。そんなもんが好きで好きでしょうがねえ奴がいてさ、そいつは表向き真面目くさった顔をしてたけど、ずっとキャッキャとはしゃいでたんだろうって」

「それを聞いたのは何日前だよ」

「三日前だ……」


 三日前————俺らがミーサンカジノで遠藤と戦ったのはまだ七日前だ。そう考えると最高で遠藤は四日前からこの町にいた事になる。

 どうやってここまで来たのかは聞く気もないが、とりあえずこんないい意味でやる気のなさそうなおっさんを使って何をさせる気だったんだろうか!


「もし万一処刑とかライセンスはく奪とか言われるんならそれでもいいさ、この町にこもって布でも染めるかっ!」


 イトウが背中に足跡の付いローブの塵を払おうともせず土下座を決め込もうとすると、今度は背中に右ひじが入った。


「もういいです!私たちが全てやりますから!」

「ミワ!お前イトウの気持ちがわからないのか!」

「わからないです、せっかくこんな物を!」


 ミワの右エルボーをまともに受け腰を抑えながらうずくまるその姿と来たら、まったく情けないオッサンでしかない。まあ情けないオッサンでも別にいいけど、少なくとも賢明なオッサンではある。


「あなたは腰を治すべきであります、私が治癒魔法を使うであります」

「ったく、相手を見極められねえだなんて俺はやっぱり万年Xランクだね。感謝するよ僧侶様……」



 イトウが地面に腰掛ける中、遠藤とミワの目は相変わらず輝きっぱなしだ。全てを呪い、全てを憎み、全てを支配してやろうとするような恐ろしい目。

 しかも息は全く上がっていない。




(「宝石に支配されてるんじゃねえかこいつら……」)




 俺はいよいよ、あきらめるしかなくなったと思った。



「二人とも、傷ついたらごめんな!」


 俺はついに剣を抜き、二人に斬りかかろうとした。




「まったく、何の騒ぎかと思えば!」

「あっ!」


 しかしそこに割り込む一人の声、そしてミワの上ずり切った声。



 やけに遠く感じた声。


 そう、赤井たちの後ろから飛んで来た声。




 その主と言うべき真っ赤な剣士が、姿を現した。

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